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機械ではなく機会

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大切なことは、機械を使うことではなく、それを機会として様々なことが広がっていくこと。コミュニケーション機器の導入に際して考えるようになったこのテーマを一緒に考えるきっかけとなるマ…
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2020年2月の記事一覧

百歳まで頑張ろうって、言ってしまったこと

百歳まで頑張ろうって、言ってしまったこと

 96歳の祖父に「おじいちゃん、100歳まで頑張ろうね!」と何気なく言ってしまったことがあります。何気なくというより、元気を出してもらうために意識して言ったと思います。

 すると祖父は私の方を向いてじーっと顔を近寄らせてこう言いました。

 百までしかだめか?
 その後はどうしたらいいんじゃ?

 あぁ。確かに。やってしまった。優しくことばをかけたつもりだったのに。言われた人にとってどういう意味

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壁にぶつかった時、どうしますか?

壁にぶつかった時、どうしますか?



 ドリルを使って「ガガガガ...」と壁に穴をあけるまこちゃん。

ごりくん「なにをしているの?」

まこちゃん「壁に穴をあけたいの。固いんだなぁ、これが」

ごりくん「どうして、どうして穴をあけるの?」

まこちゃん「だーかーらー、向こう側に行くんだってば。(やっぱりダイナマイトで一気に...)」

ごりくん「じゃぁ、あっちのドアを使えば?」

まこちゃん「...」

目的を見失ってしまう 最

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どっちがパ〜ンダ?

どっちがパ〜ンダ?

 高齢者向けの講演会でお話しする機会があり、その時に登壇されていた特別支援学校の校長先生と意気投合しました。そこから始まったご縁で、特別支援学校のICT外部専門家として学校に通い、先生方や保護者・生徒との相談会をする役割を、いまでも続けています。

 それでも私はやってしまった間違い。

 これは、学校とは別に自宅訪問した小学2年生の女の子。座ったりお話しができないけど、手の動きでスイッチを使って

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使いこなさなくていい!

使いこなさなくていい!

 講演会で、最近のICTを使った便利な生活の様子をご紹介すると、「私もこういうのを使いこなさないと!」「うちの子はYouTubeだけではなく使いこなせるようにさせないといけませんね」とおっしゃる方が少なくありません。
 でも、「使いこなす」っていう高いハードルを自分に課すから大変になるんです。ICTは使いこなさなくていいんです。ただ「使うだけ」でいいです。iPhoneやスマホを持っている方はたくさ

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サンプルカードをみた時の反応

サンプルカードをみた時の反応

 「右側半分、ど〜れだ?」という指伝話メモリで作ったサンプルカードセットがあります。野菜を半分に切った左側を見せて、右側を選んでもらいます。
 これを展示会で見てもらった時、大人の多くは迷わず、そして急いで正解をタップします。

 でも、このカードは、正解ではないものを選んだ時が楽しいんです。:-)

 「これじゃぁ、トマネギ!」

 左がトマト、右がタマネギ、それならトマネギ。そう、これは正解な

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自由とは?

自由とは?

 言える自由・言わない自由について書いたnoteの続きです。「自由」とは何か?それは 選択肢があることだと思っています。そう思うきっかけとなった出来事がありました。

 私の技術のお師匠さんは、Jean-Pierre Reibreau (JPR)というフランス人です。ある日彼が私のオフィスに来て、青く光るマウスを気に入って、一緒にビックカメラに買いに行きました。単に青く光るだけで、特別な機能がある

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言える自由・言わない自由

言える自由・言わない自由

 筋ジストロフィーの城本さんは、いつも私の話しを聞いてストレートに意見をくださいます。ある時、コミュニケーション機器について話しをしていた時に次のような話しになりました。

 「自由に文字を選べる」ということと「自由に意思を伝える」ということは、同じではないんです。つまり、伝えたい意思があったとしても、それを実際に伝えるかどうかは別な話しです。

 だから、コミュニケーション機器を渡して、「ほら、

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I'm Close To you...

I'm Close To you...

 ICTは夢を実現するためのもの。
 I'm Close To my dream. の頭文字をとって ICT。これまで実現できなかったことも、技術の力によって夢が叶えられるようになる。そんなことを話していました。でも、どんな技術を使うかが大切なのではなく、何をするかが大切だと話していました。

 自動運転の車が話題になった時、「それに乗ることが目的ではないですよね。それでどこに行くか、何をするか、

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コミュニケーション機器を使うにあたって…

コミュニケーション機器を使うにあたって…

 意思伝達装置やコミュニケーション機器を使うにあたって、どんなことから考えていけばいいでしょうか?

 「進行性の難病で将来身体が動かなくなるので視線入力装置がいいでしょうか?」「もう年寄りで新しい機械は難しいと思います。」「この子はわかっていると思うんですが、スイッチを押せるかどうかがわかりません。」といった相談を受けることがあります。
 このように「どの機器を使うか?」にばかり考えが行ってしま

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伝えたいことと伝わること…

伝えたいことと伝わること…

 何をして欲しいかだけでも言ってもらえたらお互い楽なのに、とおっしゃっている方がいました。

 「やって欲しいことがあると思うんです。何をして欲しいかだけでもわかれば、やってあげられるからお互いのストレスもなくなると思います。」という相談がありました。
 その方のストレスは大変なことと思いますが、伝えられない側はもっと大きなストレスを感じていることでしょう。

 「寒い」と伝えられた時、どうすれば

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はい・いいえだけでも…

はい・いいえだけでも…

 相談会や勉強会で、ことばで伝えるのが難しい大人の方やお子さんの家族や支援者から「せめて、はい・いいえだけでもわかるようにしたいのですが、何かいい方法はありますか?」と聞かれることがあります。

 「はい・いいえだけでも」と言いますが、一番難しいのが「はい・いいえ」で答える会話です。

 自分だったら「ジュース飲む?」と聞かれて、どんな返事をしますか?
 「何のジュース?」と聞き返す人が多いと思い

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