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「マネジャーの役割や務める意義って結局なんだ?」マネジメントの良書6冊と1年の経験から考えたこと

2022年も残りわずか。今年はどんな年だったか? 僕はいろいろな方向から話せそうですが、仕事で言えば「マネジャー1年目が終わった」という点が最も大きかったです。

実務というか、会社での経験も非常に刺激的なものでした。マネジャーって結局何なんだろう? これを務めて一体どうなるんだろう? やることが本当に多岐にわたっており、こうした素朴な疑問について何度かふと考える1年でした。

書籍でのインプットも例年より力を入れました。昨年までもマネジメントに関する書籍はいくつか読んだことがありましたが、実際にマネジャーという立場になって読むと、書かれた意味をより実感できたり、逆に「本当にそうかな? 何だか机上の空論すぎない?」と思うこともあったりしました(笑)。

そんな実務と書籍での学びを1年積み重ねて、なんだかんだ「マネジャーの役割や務める意義って結局なんだ?」という問いの答えが最近少し見えてきた気がしています。

マネジメントに関する良書6冊でそれぞれ語られていた「マネジャーの役割」

マネジメントに関する書籍をいろいろと読んだ中で、個人的に「マネジャーの役割」を考える参考になったのが下記の6冊です。

  • ピクサー流 創造するちから(Ed Catmull)

  • 急成長を導くマネージャーの型 〜地位・権力が通用しない時代の“イーブン"なマネジメント(長村 禎庸)

  • HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント(アンドリュー・S・グローブ)

  • 増補版 駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する(中原 淳)

  • マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力(テレサ・アマビール, スティーブン・クレイマー)

  • 最軽量のマネジメント(山田理)

これらの書籍それぞれでは、マネジャーの役割について次のように説かれていました。

ピクサー流 創造するちから

私が思うマネジャーとしての自分の仕事は、豊かな環境をつくり、それを健全に維持し、それを妨げるものに目を光らせることだ。
職場で社員が率直に意見を交わさないのには多くの理由がある。その理由を見つけて対処するのはマネジャーの仕事である。
組織の中に不安や恐れが生じている場合、それにも理由がある。マネジャーは、 その原因を突き止め、 理解し、 その根絶に努めなければならない
リスクを回避することはマネジャーの仕事ではない。リスクを冒しても大丈夫なようにすることがマネジャーの仕事である

言わずと知れたアニメーション制作会社・ピクサーの組織マネジメントに関する書籍。「クリエイティブなことを行う組織のマネジメント」に関して特に参考にできる一冊です。この本におけるマネジャーの役割を一言にまとめるなら「安心安全にメンバーが発言・活動できる環境づくり」でしょうか。

急成長を導くマネージャーの型 〜地位・権力が通用しない時代の“イーブン"なマネジメント

マネージャーには4つの役割があります。この役割認識を外したまま努力をしても、残念ながら急成長を導くマネージャーには成れません。まずはこの役割を正しく捉えるところからマネージャーの型は始まります。

・「経営」からオーダーされた成果を残す 
・人的資産を維持・活用する 
・人を育てる 
・会社の中でチームを機能させる
「成果を残すための手段として、ほかの3つがあるんですよね」

というご質問をよく受けますが、それは違います。極端な例を想像するとわかりやすいですね。 

「上半期は成果は残しましたが、メンバーはだれも活用してないですし、後任も育ててないですし、ほかのチームとの連携は面倒なのでやってません」

このようなマネージャーがいたとしたらどうでしょうか? そのマネージャーは、非常に視野の狭いマネージャーと言わざるをえません。 

一応、ベンチャー企業を主に想定して書かれた本ですが、ある程度の企業規模でも十分に参考になり得る1冊だと思いました。

マネジャーの役割についてのこの書籍のおもしろいポイントは、上記の引用箇所に記されてる通り、マネジャーを「成果を出す(目的)ために人やチームについていろいろする(手段)人」ではなく、「成果も出す(目的)し、人やチームについてもいろいろがんばる(目的)人」と明確に定義している点だと思います。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント

情報収集、情報提供、意思決定、ナッジング、役割モデル

マネジメントに関する書籍としてはやや古典的な位置づけの1冊かと思います。この本ではマネジャーの役割を「情報収集」「情報提供」「意思決定」「ナッジング(≒背中押し、助言)」「役割モデル(≒規範を示す)」の5つだと定義していました。

増補版 駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する

これはすべて引用しちゃうととても長くなるので、かなり省略して引用します。おそらく名前だけで何となくわかるかなと……。

マネジャーは、こうした 10 の役割を折りに触れて担い、他者を通じて物事を成し遂げています。

(1)対人関係の役割
①挨拶屋 (中略)
②ベクトル合わせ屋(中略)
③連絡屋(中略)

(2)情報関係の役割  
④分析屋(中略)
⑤伝達屋 (中略)
⑥宣伝屋 (中略)

(3)意思決定にかかわる役割  
⑦変革屋(中略)
⑧障害やりくり屋(中略)
⑨配分屋(中略)
⑩決定屋

個人的に他の5冊と特に異なるように感じたのは、挨拶屋や宣伝屋という「組織の顔になる役割」、変革屋という「リスクをとって組織を変えていく役割」、そして障害やりくり屋という「組織内のトラブルをどうにかする役割」が定義されている点です。

日本企業のマネジャーは実際、このあたりを担っている人が多いのではないでしょうか。

マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力

やりがいのある仕事が前に進むよう支援する
仕事がうまく行くよう支援する
人が気持ちよく働けるよう支援する

この本では「(メンバー自身が実感できる形で)チームに進捗を生み出す」ことがマネジャーの最も大事な役割だと提唱されています。そして、そのために支援をしたり障害を取り除いたり環境を整えたりしろと。

おもしろいと思ったのは、この本も別にメンバーを「進捗を出すための駒」と言いたいわけではなく、むしろ「メンバーが気持ちよく仕事するために進捗を生み出すべき」と言っている点です。人材マネジメントを「業務マネジメントの手段」と位置付けていないという意味では、前述の「急成長を導くマネージャーの型」と近いものを個人的には感じました。

最軽量のマネジメント

もうマネジャーは、無理に自分を大きく見せる必要はないのです。 

やることは、「あなたはどう思う?」「この場合はどうしたほうがいい?」と、メンバーの意見を聞き、情報を引き出すこと。そして、最終的な意思決定をすることだけ
マネジャーが行うべきことは、たったひとつ。あらゆる情報を徹底的に公開する、そのための風土をつくることです。 

そして、最後に必要なのは、成功しようが失敗しようが「わたしが責任を取るから」という一言。メンバーの失敗はあなたの失敗。あなたの失敗は上司の失敗。上司の失敗は、経営者の失敗。 

 上に立つものが持っているのは、「地位」でも「権威」でもなく「責任」です。

最後はしれっと弊社サイボウズの書籍です。いや、実際いい内容だとは思うので……。

この本で定義されているマネジャーの役割は「情報収集」「情報共有・公開」「意思決定」「責任を取る」とまとめられるかなと思います。

6冊から「マネジャーの役割」をまとめると?

和集合的ですが、これらの6冊から「マネジャーの役割」をまとめるならこんな形になるのではないでしょうか。

マネジャーがいる目的

  • 「経営」からオーダーされた成果を残す 

  • 人的資産を維持・活用する

  • 人を育てる

  • 会社の中でチームを機能させる 

そのためにマネジャーがやること(手段)

  • 情報を収集する

  • 情報をメンバーに共有・公開する

  • 意思決定する

  • 安心安全にメンバーが発言・活動できる環境をつくる

  • ナッジ(≒背中押し、助言)する

  • 役割モデルとして"正しく"振る舞う(≒規範を示す)

  • 組織の顔として動く(挨拶や宣伝を行う)

  • リスクをとって組織を変えていく

  • 組織内のトラブルをどうにかする

  • (メンバー自身が実感できる形で)チームに進捗を生み出す

  • 責任を取る

やることが多すぎるように見えるが……実際こんな感じかもしれない

まとめたものをいざ見てみると「役割多すぎでは?」と一瞬感じなくもないですが、この1年の実務を振り返ると「実際これらのすべてを担ったり考えたりしたな……」と感じるんですよね。恐ろしいことに、この雑な和集合で意外と妥当なのかもしれません。

毎日、常にマルチタスクです。この1年は、人材に関する目の前の問題解決についてまずは考えながら(個人的には"人"が1番大事なので、この優先順位です)、業務に関する問題解決についても考え、かたや他に問題が起きていないか情報収集しつつ、中長期の理想を頭をひねって検討・言語化し、傍らでマネジャーとしての事務処理を行う……という感じでした。

マネジャーをやる意義とは?

これだけ多忙だと「マネジャーなんてやるだけ損じゃないのか?」と時々思うこともありました。マネジャーを始めて3ヶ月が終わった頃には、こんなnoteも書いたものです。

1年が終わった今はどう思うか? 実は今はかなり納得できつつあります

理由の1つはぶっちゃけ、上記のnoteを書いた直後あたりから「そんなことで悩んでる暇なんてない」と感じざるを得ないほど忙しくなりまして、そんなモヤモヤは取り急ぎ綺麗さっぱり吹き飛んでしまったというのが正直あります(汗)。

ただ、これは別に自分の感情を抑圧した結果ともあまり感じていません。どちらかというと「覚悟が決まった」という感覚が非常に強いです。「誰かやらないといけないなら自分がやる」と腹を括れるようになったような感じです。

また、書籍や記事などで「マネジャーをやる意義」に関する様々な言語化を読んで、少しずつ腹落ちしていけたのも大きいです。ここでは特にピンときた2つをご紹介しておきます。

「マネージャーなんてやりたくない」

そんなふうに言う人が増えるようになりました。

かつて1社の中に閉じこもって仕事をする時代の「マネージャー」は、その会社の中での自分の地位や権力、その先にある報酬やキャリアアップを示す「出世」の意味合いが強かったため、だれもがそれを求めたのかもしれません。しかし、ネットワーク型組織が広がるこれからの時代においては、そのような意味合いがどんどん薄れ、結果として「地位や権力を得られるわけでもないのに、自分のことではなく人のことばかりお世話して、損な役割だ」と思う人が増えたのでしょう。

しかし、イーブンなマネジメントの技術は、「個の時代」を生き抜くための非常に強い武器になります。私自身もそうですが、個人として「こんなことがしたい」と思う時、1人でやってもできることなどたかが知れています。個の時代において、みなさんは自分自身の意思ややりたいことに向き合い、それを事業やサービス、何らかの活動に変えていくことになります。そして、それを大きく育てるためには、多様な立場の人をまとめ上げる力が必要です。イーブンなマネジメントの技術は、まさにそれを実現する最強の武器として、あなたを助けることでしょう。個の時代だからこそ、個はマネージャーと化し、自分のやりたいことを思いきり表現することができるのです。
急成長を導くマネージャーの型 〜地位・権力が通用しない時代の“イーブン"なマネジメント
ただ、社員に言っているのは、マネジメントは経験しておいたほうがいいということです。テクノロジーが進化していろいろな仕事がなくなるという話がありますが、人類の中で一番なくならない仕事がマネジメントだと思います。例えば、「1億総フリーランス時代」と言われることもありますが、フリーランスだけで仕事ができるとは思えず、必ず間に入るディレクターのような調整役が必要になります。そうすると必ずマネジメントが発生するわけです。だからどこまでデジタル化が進んでも、人と人が仕事をする以上、マネジメント業務は生じるので、一生なくならないし、経験しておくのが良いと思います。
30代以降も成長する人が仕事と私生活でしていること――アナグラム代表・阿部圭司インタビュー | Marketing Native(マーケティング ネイティブ) https://marketingnative.jp/ceo22/

もちろん、「メンバーのためや他人のためのマネジメント」という捉え方も大事だとは思いますが、このように「ひとりのビジネスパーソンとしてマネジャーを務めてみる意義」も見つけられると、さらに前向きにマネジメントの仕事に取り組みやすくなるのではないでしょうか。

終わりに

この1年のマネジャーの実務経験と6冊のインプットを振り返って、マネジャーの役割やそれを務める意義についていまの考えを整理してみました。当初は何となくぼんやりとしかわかっていませんでしたが、1年やってみるとさすがにわかるものも増えたなあと感じます。

とはいえ、まだ1年経験しただけ。来年も引き続き経験を積んで、マネジメントという複雑で難しい仕事について学んでいきたいと思います。

ところで、これを読んでくださったあなたももしかしてマネジャーでしょうか? もしそうであれば、しっくり来る内容だったか、「いや、私にとってのマネジメントの仕事ってこうだなあ」という感想だったか、よければ聞かせてください。人や会社によってマネジャーの仕事も様々だと思うので、いろいろな人のお話を聞いて勉強させていただきたいです。

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