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【いちごる読書note】ディズニーCEOが大切にしている10のこと

ディズニーCEOが大切にしている10のこと

この本との最初の出会いは、僕にとっては定番の先輩会計士AさんのFBでの読書記録の投稿より。何度も読み返したいなと思っていたところ、ちょうど元同期のO氏を通じて知り得た中田敦彦氏のYoutube大学にて、本書が面白そうに紹介されていたことが再読するきっかけになった。

再読を通じて感じたところをここに残しておこう。


1.超一流が大切にしているコト=人として大切なこと

ディズニーの6代目CEOとなったロバート・アイガーは、ディズニーCEOとしての功績だけ挙げても類まれない経営者であることが分かる。20年にも及んだ前CEOからその座を承継してから、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、さらにはフォックスを買収し、不振にあえいでいたディズニーを復活させた。また、本書にも本人の意思として書かれてあった通り、大統領選に出馬していた可能性もあるような人物である。

「そのような偉大な人物の自伝から、何を教訓として得られるのだろうか?」

と思われるかもしれない。

例えば、CEOの承継者選任プロセスに伴う取締役会とのやり取りや果敢な買収劇に伴うスティーブ・ジョブズをはじめとした買収先CEOとのやり取りなど、確かに、この本は僕自身が読んできた他の経営者自伝やドキュメンタリー(ピクサー創業者、Airbnb、ペイパル、スターバックス、NIKEなど)に比べても、「意思決定における現場感」という点では、他のどの本にも増して肉薄した内容であり、雲の上の話のようでもある。

だが、本書のタイトルにある、著者であるロバート・アイガーが「大切にしている10のこと」を知れば、その印象は変わるかもしれない。

その10個とは、①前向きであること②勇気を持つこと、③集中すること④決断すること⑤好奇心を持つこと⑥公平であること⑦思慮深いこと⑧自然体であること⑨常に最高を追求すること⑩誠実であること、である。

これらは何一つ真新しいものはなく、経営の観点というよりは、人生の教訓めいたものばかりである。これらのことを、筆者がどのように学び、実践し、またときにそれが実践できなかったかを伝えた人間味あふれたストーリーである。

どの分野の人でも、超一流であれば、当然に類まれない才能と努力がそのベースにあることは確かであろう。だが、一方でその生き様の根底にある価値観は、誰もが実践しうる些細なものの集まりに過ぎないとも言える。

この点、全く異分野ではあるが、日本が誇る世界のイチローの次のコメントと相通ずるものがある。

小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道だと感じている。

イチロー、2004年 メジャーリーグ年間最多安打記録 記者会見

2.Youtubeなどの情報と書籍~神は細部に宿る~

今回、この本を再読するきっかけとなったのは上述の通り中田敦彦氏のYoutube大学において、本書が取り上げられていたからだ。本書の約3分の1の内容を90分(45分×2本)の動画で紹介したそのコンテンツは、観ていても思わず吹き出してしまうほどで、久々に読んでみようかな、と思いたった。

Youtube大学の内容を思い出しながら本書を読んでみたが、自分では到底再現できないほど、ポイントを突きつつも、面白おかしく紹介したコンテンツは、中田敦彦氏のプレゼン力の高さが前面に出ていると感じた。

一方で、書籍を読むことでしか得られないと感じるのは、次の2点である。

①一つ一つの細かなエピソードに含まれた含蓄
②受け手の情報処理の柔軟性

①の観点は「神は細部に宿る」というか、実際に読んでみてそれぞれの価値観に照らして本文に接してみて得られる情報価値がある様に思われる。当然と言えば当然だが、Youtubeに限らず原書を離れた「まとめ」サイト的なものは、その情報発信者の価値観などに照らしてまとめられたものであり、原書を読んでいれば得られるはずの読み手それぞれにとっての価値は得ずらくなるのではないだろうか。

また、②の観点は似たようなことが他でも言われているかもしれないが、音声や映像を交えた情報は、ある種の受動的な接し方になるため、どうしても伝え手の情報提供スピードと受け手の情報処理スピードがマッチしないことが多いように感じる。

特に僕の場合は、どの音声・映像系コンテンツも情報が提供されるスピードにこちらの情報処理が追い付かず、情報を消化吸収するのではなく、単なる消費をするだけに終わってしまうことが多い。

「ロバート・アイガー氏は、恵まれない環境からスタートし、所属企業が2度も買収される厳しいキャリアの中でものし上り、最後はディズニー帝国を創り上げた」などの、話題のネタになる程度の情報を得ることが目的であれば、本を読まなくてもネットでもYoutubeでも代用が可能だし、その方が楽で効率的ですらあると思う。

だが、一流の声に直に(といっても文字になったものだが)接し、時にその人生を追体験したり、自分とは異なる意見に対して考えを深めたりするには、ゆっくりと自分のペースで読み進めることが大切だと思う。

3.ココロに響いたフレーズ集

・情報が氾濫する社会におけるアイガー氏のスタンス

良質なオリジナルコンテンツを作り出すことに時間とお金のほとんどを費やさなければならない。ますます「コンテンツ」の数も配信経路も増えていく中で、コンテンツの質が一層重要になる。たくさんのコンテンツを作ればいいというものではない。いいコンテンツをたくさん作ればいいというものでさえない。選択肢が爆発的に増える中で、消費者には時間とお金をどう使うかを賢く判断する能力が求められるようになった。消費者の行動を導く上で、これまでにも増して偉大なブランドが強力な武器になる。

『ディズニーCEOが大切にしている10のこと』ロバート・アイガー著、ハヤカワ・ノンフィクション文庫

・企業買収における定性的要素について

理屈では、ピクサー買収は割に合わない。だが、ピクサーほどの才能の集積は私たちの理解をはるかに超えた価値があり、計算しようとしても計算できないものだと私は確信を持っていた。リーダーはただ現場に出向いて自分の勘を信じればいいと言いたいわけではない。それでは思慮深さよりも衝動を優先しているように聞こえるし、注意深く分析するよりただギャンブルに出た方がいいと言っているようにとられてしまう。だが、何事もそうだが、ここで大切なのは認識力と判断力だ。すべての情報を吸収し、それぞれの要素を秤にかけてみることが必要になる。買収の目的、信用できる人たちの意見、綿密な調査と分析が教えてくれること、そして分析が教えてくれないことを認識しなければならない。こうした要素をすべて慎重に取り入れ、同じ状況は二度とないことを心に留めた上で、最終的にはリーダーが直感に従って判断するしかない。確かなことは何もないが、少なくとも大きなリスクを恐れてはいけない。大きなリスクを取らなければ、大きな成功はなし得ない。

『ディズニーCEOが大切にしている10のこと』ロバート・アイガー著、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、p264

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