[創作短編] 苦しみから逃れるために
日曜の夜中、私はあるビルの屋上に来ていた。ここ一帯で飛び降りるなら絶好のスポットだと断言してもいい。この地域の人間で、そういうことを考えたことがあればまず間違いなく思いつくだろう。だからドアを開けてそこに今にも飛び降りようとする青年の姿があっても、驚きこそすれ理性は残っていた。
「自殺する気か?止めろ!」と咄嗟に叫ぶと、青年は私の姿を認め「近づくな!」と叫んだ。私は今度は穏やかな声で尋ねる。
「自殺する気なのか」
青年は頷く。
「では、私と君の目的は同じだということだ」と私が