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パンみみ日記「"東京向いてね〜"と思う瞬間」

日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。



7月12日(水)
同じ部署に「バネオさん」という先輩がいる。バネオさんは、ぼくが転職してから3ヶ月後に転職してきた人であり、親近感の持てる存在なのだ。

バネオさんは、誰もが知る超大企業からやってきて、とても仕事ができる。しかもイケメンでめちゃくちゃ優しい。

バネオさんが入ってきて「ぼくの完全なる上位互換がやってきた」とハンカチを噛み締める日々だった。キィー!(昔の少女漫画風)。

パンみみ日記には職場の人が割と登場するのに、嫉妬心からバネオさんはこれまで登場しませんでした。ぼくは心の狭い人間です。

しかし時がたち、ぼくも大人になった。ハンカチを噛み締めることはなくなった。それどころか、バネオさんとグッドフレンドになった。

バネオさんとは食の好みが合うので、度々好きなお店を紹介しあっている。バネオさんが「ゴーゴーカレーに行ったことがない」という話になったとき「ぼくとバネオさんの舌は大体同じなので、絶対ハマります」と予言していた。

そのときの話を覚えていて、今日のお昼にバネオさんが「よさくさん、お昼に行きたいところがあります。ゴーゴーカレー!」と満面の笑みで駆け寄ってきた。

2人で並んでカレーを食べた。トッピングのシャウエッセンを1本ずつシェアした。キャベツをおかわりした。バネオさんは初ゴーゴーカレーに興奮していた。

なんてことないけど、こんな日が好き。バネオさんも好き。


7月13日(木)
会社。夏休みから帰ってきた先輩がぼくの顔を見るなり「よさくさん、なんか焼けてません??」と話しかけてきた。

ぼくはこの時を待っていた。日焼けが会話の糸口になる瞬間を。

満面の笑みで「よさこいで焼けるんですよ〜!」と返した。(よさこいって日焼けすんだっけ)みたいな反応になったけど、いいでしょう。

やっぱり、日焼けはコミュニケーションツールなのだ。


7月14日(金)
仕事終わり。お風呂に入り、ごはんも食べてひとやすみ。すると、ソメコ(会社の後輩)からLINEがきた。

「よさくさん今どこですか?合流して飲みませんか?」

さすがにおうちモード120%なので、お断りした。ただ、このとき思った。薄々感じていたけど、前の職場のノミコ(飲み好きの後輩)と言動がとても似ている…!

ノミコの後継者が現れた。


7月15日(土)
今日は1日予定がない。こんな日はいつもなら、お馴染みの図書館にこもる。しかし、そろそろ味変したくなってきた。他にも1日入れる場所を探してみよう。

そして、駅からちょっと離れたコワーキングスペースを見つけた。ここに行ってみよう。

土曜というのもあり、ほとんど人がおらず落ち着いていた。受付のお姉さんが「はじめてのご利用ですか?」とフランクに聞いてくれ、各スペースを案内してくれた。チュートリアルが丁寧。

席について、本を読みふけった。色んなドリンクが飲み放題で、グビグビ飲んでしまう。

他のお客さんは常連が多いようで、スタッフの人と気さくに話していた。IT系の話かわからないけど、何一つ内容が理解できなかった。

レベルの高そうな話を小耳に挟みつつ、この記事もコワーキングスペースで書いている。

なんとなく「デキる奴になった」という錯覚を浴びるために、定期的にココに来たい。


7月17日(月)
行きつけの喫茶店へ。緊張している青年バイトの成長を見守るために、毎週欠かさず通っている。しかし今日は青年バイトが不在。

カウンターでスマホで文章を書いていると、マスターがにこやかに話しかけてきた。

「なにやってるの?」

初めて話しかけられた!という驚きと、やってることを伝える恥ずかしさにダブル戸惑いしてしまう。おそるおそる答える。

「あの…、恥ずかしいんですけど文章書いてるんです…」

「そうなの。将棋かと思った。奥さんがハマっててさぁ〜」

なんてことなく受け入れてくれた。ただ、今後は「文章書いてるやつ」と認識されるの恥ずかしいな。

よさくの常連スキルが1上がった。


7月18日(火)
会社でオンライン会議。議題がひと通り終わったあと、ソメコがつぶやいた。

「よさくさんは何があったんですか?」

日焼けしていることに驚かれた。画面越しでも伝わってしまったか。

会議後のメールのやりとりでも、ソメコは宛名の部分に「まっくろ よさくさん」とつけて送ってきた。

こやつ、先輩をイジる技を覚えた…!ただ、久々の距離感に嬉しさを隠しきれない。転職後の職場にも馴染んできた証拠である。

日焼けは職場への浸透の手助けになります。


7月19日(水)
営業の合間。駅の近くで歩いていると、若い女の子がスタスタと近づいてきた。

「あの!ちょっといいですか?実は営業の新人研修の一環で、色んな人と名刺交換をしなきゃいけないんです〜!よかったら交換してくれませんか?」

でた!聞いたことあるぞコレ!交換したら不動産の営業電話とかめちゃ来るやつだ!名簿リストにされて売られるぅ…。

とてもにこやかに話しかけてくれたので申し訳ないけど、お断りしなきゃな…。

「すみません、会社が厳しくて名刺交換はちょっと…」

「じゃあ、LINEやってますか?」

"駅前で女の子にLINEを聞かれる"という文字に起こすとテンションが上がるシチュエーションに一瞬翻弄されるも、鉄の意志で断った。

「あ、そうですか」

断った瞬間、明るかった女の子の表情が一瞬で無になり、踵を返した。「もう用済み」という余韻を残して。なんだかその表情が頭にこびりついてしまって、しばらく落ち込んだ。

今まで地方でしか働いていなかったので、こんな声かけはなかった。東京ってこういうの多いのかな。

別に名刺交換をしてあの子を救いたかったわけではない。なぜ自分が傷ついているのか分からない。ただ必要以上のものを、あの行動と表情から感じ取ってしまう。センシティブだなあ、自分。

東京、向いてね〜!

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