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パンみみ日記「同棲派vsマンションの隣の部屋派」
日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。
11月17日(金)
過去の日記を見返してみる。ちょうど1年前、今いる会社の面接を受けた頃だった。あんとき、踏ん張ってたな。
仕事が忙しくてヒィヒィ言ってた。合間を縫って有休をとり、北海道から東京へ面接に行った。「これで受からなかったらイヤイヤ期発動する」くらい不安と緊張が混ざり合った気分だった。
でも未来の希望も携えていて。この面接に受かれば、何もかもが変わる。住む場所も、日々向き合う仕事も、見据えられる未来も。人生の大きな分岐点に立っている実感があった。
あのときのよさく、ありがとう。君のおかげで、今ぼくはここにいる。「仕事終わりに図書館に寄って、毎日本でも読めたらな」って思ってたでしょ。できてるよ。
当然人間なんて、ないものねだりをし続ける生き物だから、過去の自分が羨ましいこともある。もっと欲しくなってしまうものもある。
でも、1年前のよさくがした決断も、面接で放った言葉も、全部全部間違ってないと思う。ここまで連れてきてくれて、ありがとね。
あとはこっちに任せろ。君を後悔させないから。
11月18日(土)
母と姉が家に来た。地元産のお米を10キロ持ってきてくれた。ありがたく受け取りつつ、先日ふるさと納税で届いた20キロのお米を見えないところによけた。家族から米を隠す日が来るとは。
3人で祖父の家へ。祖父は90歳半ばにもなるのだけど、1人で暮らしている(近くに住む叔父と叔母がサポートしてくれている)。
顔を見せると、クシャッと顔をほころばせて喜んでくれた。最近は足を運べていなかったから、少し安心した。
お茶を入れ、お菓子を並べてみんなの近況報告。ぼくが最高視聴率をとったセリフは「ハーフマラソンに出場してまいりました」。エネルギッシュな孫の姿をお届け。
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母と姉が買い物で席を外したタイミングで、祖父がパンフレットを差し出してきた。
「この間、見学に行ってきたんだ。よさくの家に近いところでね」
高齢者向け施設の案内だった。そっか。そうだよね。覚悟はしていた。いつかはこんな日が来ることを。おじいちゃんに会いに行く場所が、ここではなくなるということを。
少しお腹に力を入れ、落ち着いて言葉を返していく。
「綺麗なところだね。これ、今ぼくが住んでるところから車で10分ぐらいで行けるよ」
その後、おじいちゃんは施設のよかったポイントの説明を続けた。そうして、なんでもないように別の話題に移った。
母と姉が戻り、叔母も加わって親族の近況で盛り上がった。お茶を3杯くらい飲んだところで、そろそろお開きにしましょうという流れに。
おじいちゃんにお別れを告げると、ぽつりと言葉を置いていった。
「あそこに行ったら、よさくも近いしねぇ」
ここにずっといて欲しいな。近くなるのは嬉しいけど、きっとそんなシンプルな話ではない。でも、サポートしてくれている叔父と叔母にとって、肩の荷が降りる選択肢だと思う。
長生きをすること。誰かに支えられること。どこに身を置くかということ。人が人生で選び取るこれらのことに、正解はない。
そんなことをぐるぐると、帰りの車内で考えた。信号待ちが、少し長く感じる。
11月20日(月)
職場。キャリコさん(シゴデキで気配りもできる先輩)がおなかに赤ちゃんを抱えていることを発表。とてつもなくおめでたい。産まれてくる赤ちゃんは幸せだ…。とホクホクした気持ちに浸る。
来年の春から産休と育休で1年ほど職場を離れるとのこと。お子さんとの大切な時間、ゆっくりと過ごしてほしい。何よりも優先すべき期間だもの。
え…待って。キャリコさんいなくなるのか。冷静にやばすぎる。キャリコさんはエース社員としてクソデカクライアントを何社も担当しつつ、社内では年齢の離れたメンバーの橋渡し役をしてくれている。
ウチの課、崩壊するんだが。一瞬血の気が引いたけど、そんなこと考えてる場合ではない。幸せなニュースなのだ!
キャリコさんとランチを食べている間、「おめでとうございますうう」と「いなくならないでえええ」という感情がぶつかり稽古してた。
幸せな家庭を築いてほしい。でもここにいてほしい。
キャリコさんが安心して戻れるように、職場を守らなければ。
11月21日(火)
職場の飲み会。普段会社の人とは一定の距離をキープしてるのだけど、お酒の力でテロテロと自己開示を始めてしまった。
「自分、人と同棲できる気がしなくて。結婚したとしても、マンションで隣の部屋に住んでるくらいがちょうどいいです」
4人で話していたのだけど、ソメコ(おしゃべりな後輩)が「えええええ!一緒にいたくないんですか??」と衝撃を受けまくっていた。
残り2人に聞いてみると、意外な答えが。
「私も1人がよくて。実家ですら落ち着かないんですよね。隣の部屋で全然いいです」
「ぼくは結婚して一緒に住んでますけど、よさくさんの気持ちはわかります。絶対的なパーソナルスペースほしいですよね」
ソメコが一瞬にして少数派になった。驚きを加速させつつ「今の若い子って、そうなの!?」と目を見開いていた。ソメコは4人の中で1番歳下である。
己のテリトリーガチ勢がこんなにいるとは思わなかった。心強い。でも克服はしたい。いつか誰かと暮らせるものなのかな。
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