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パンみみ日記「未解決事件に挑む3人の探偵たち」

日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。


9月15日(金)
初対面の人に、「若く見えるけど、落ち着いているから年齢がわからない」と言われた。友人に言われることはないけど、初めましての人に「落ち着いている」と言われることが多い。

「落ち着いている」ってなんだろう。褒め言葉なのかな。「落ち着いてないですね」と言われるよりは全然いいけど、手放しで喜べない感じがある。

ちょっとだけ話して「落ち着いている」と思われる場面って具体的にどこなんだろう。「朝のニュース何派?ZIP?」という話題に対し「“無”です。何も見ていないです」と答えたことかな。だとしたら「話題の広がらないヤツ」なんだけど。

「ハジけてますね」と言われるキャラじゃないけど、「落ち着いてますね」と言われるのもしっくりこない。第一印象って難しい。適度な無邪気さがほしい。


9月19日(火)
仕事終わりにスーパーへ。よく行く店だとレジの人に(あ、またこの人だ)という感情を抱くケースは多い。逆に新しい人が現れると、(新キャラきた)となる。

だがしかし、このスーパーは(新キャラきた)となることが多すぎるのだ。何人バイトいるんだ。どんだけシフトぶん回してんだ。

それか離職率半端ないんかな。入れ替わり過ぎてんのかな。心配だな。そんなに待遇悪いのかな。それとも人間関係かな。でもいじわるそうな店員は今のところ見てないよ。

頭をぐるぐるとかき混ぜていると、お会計が終わった。

よい職場であることを願います。


9月20日(水)
仕事終わりに、図書館へ。ここの図書館に来るのは久々なのだ。見ないうちに、新着図書コーナーのラインナップがガラリと変わっていた。

思わずそこから本を借りる。すると、ぼくがその本を借りたはじめての人であることがわかった(いまだに図書の裏に返却日が記されるシステムなのでわかる)。

「君はこの先何人もの人に借りられるだろうけど、ぼくが初めてだ。忘れないでおくれ」と本に語りかけたい気持ちになる。

ちょっと変態だね。


9月22日(金)
大学の友人と休みを合わせ、わが家へ集合。メンバーはミネくん(マイペース。ボケ担当)とホンヤくん(本屋勤務。ツッコミ担当)。

ミネくんは「宅配便を受け取ってから参加したい」という鬼のマイペースをかまし遅刻した。詫びケーキを持参したので許します。

ぼくたちは未解決殺人事件を調査するべく、集まったのだ。

直木賞作家とリアル脱出ゲーム作家がタッグを組んで生んだ犯罪捜査ゲーム。現場写真や、容疑者の証言、現場イベントの予定表などの情報から、事件の解決を目指していく。

写真や新聞など様々な資料が。言えないけどもっとたくさんヒントとなるものが現れていく…!

今までやった謎解きは「この謎を解くには、このページを見ればいいんだな」という順番がある程度わかりやすかった。けど今回は数多くの資料をひと通り見た上で、それらを照合させる必要がある。

序盤は「わけわかんね」状態だった。けどバラバラに見えた情報が「待て、この2つ掛け合わせたらこの時刻に現場にいない人が特定できるぞ…」と合わさっていく瞬間は鳥肌ものだった。

それでいてサスペンスドラマのようなストーリーが組み込まれているので、容疑者たちへの感情移入が止まらない。事件を他人事にはできない没入感が、そこにはあった。

3人いれば文殊の知恵とはこのこと、メンバーでアイデアを出し合った。行き詰まったときでも、1人のひらめきが謎を解き明かす光になる。

この3人でできてよかった。謎解きは全員同じレベル感で挑める姿勢がないと、楽しめない人がでちゃうんだよね。

事件解決まで4時間、休憩なしでぶっ続けていた。そのくらい夢中だった。殺人事件なので人を選ぶけど、謎解き興味ある人はめちゃめちゃオススメです。

帰り際、ホンヤくんがぼくの本棚を見てつぶやいた。

「読書に対しての捉え方ってさぁ、本当に人それぞれなんだよね。よさくは、本を『投資』として読んでるね」

あら、なんだか素敵じゃない。ただ、自己啓発本が置いてある棚を見て、そう言われた気がした。

「でも最近、小説も結構読むんだよね」
「いや、小説も投資だよ」

ホンヤくんに胸を張って言われた。そうなのか。そうなんだ。

心を揺さぶる表現を指でなぞったり、感情を突き動かされて全身に電気が走ったりする瞬間は、いつかのぼくの養分になっているのかもしれない。

ぼくは「未来の自分」のために、今の自分が何かをしている瞬間が好きだ。それは「投資」という価値観が表れているのかもしれない。

これから本を読むとき、もうちょっとウキウキできる気がした。


友人2人とお別れを告げ、一人暮らしの部屋に戻る。あぁ、こんなにガラんとした空間だったっけ。

「誰か遊びに来たあと急に寂しくなる現象」は久々のこと。それだけ密度の濃い時間を過ごせていたって、ことだよね。

また3人で会おうね。ぼくらなら難解な未解決事件だって、解き明かせちゃうんだから。


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