パンみみ日記「祭りのためならどこへでも」
日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。
3月31日(金)
年度末最終日。そして転職からちょうど3ヶ月間が経ち、試用期間最終日。
あっという間の3ヶ月間だった。4月からは独り立ち。先輩方のように仕事ができるのか不安だけど、というかできないことが確定しているけど、ノリで乗り越えていこうと思う。
クマ兄(育成担当の先輩)をはじめとして、色んな人に助けられてきた。中でも、クマ兄には毎日つきっきりで教えてもらった。
クマ兄は子供が産まれたばかりで、プライベートが忙しいのにも関わらず、ぼくのことをずっと気にかけてくれていた。そんなクマ兄も4月からは別の部署へ行ってしまう。
会社にいるときはバタバタして挨拶できなかった。けれど、夜にクマ兄がLINEをくれた。
試用期間が終わったことの労い、なぜこの会社に入社したのかという気持ちを忘れないで欲しいこと、育成期間に関われて感謝していること、そんなことが綴られていた。
感謝するのはこっちやねん…!
「よさくさんの育成担当ができて、よかったです」
素敵なメッセージをもらえた。ぼくは基本的には素直で従順だけど、納得できないことや理解できないことは素直に頷くことができない。我ながらめんどくさい後輩だったと思う。
真面目なところはめちゃくちゃ真剣にやるのに、急にポンコツになるし。1人の中に複数の特性が混在している。
そんなややこしい存在に付き合い続けてくれたクマ兄。営業に同行しながら、ラーメンを一緒に食べた日々も、もう終わってしまう。
あなたから受けた恩は、ぼくが後輩を育てることになったときに使います。恩を返したいけど、まだまだ未熟でできないから、未来の後輩に受け渡します。
クマ兄が育成担当で、よかった。
4月3日(月)
仕事終わりにドンキへ。ポイントが貯まるアプリ「majica」をインストールしてみる。けれど、majica内でチャージしないと使えないみたい。めんどくさいので、他の電子マネーで払うことにした。
けれど、レジのお姉さんが「majicaはお持ちですか?」と明るく聞いてくれた。おお、持ってはいるんですよ。ちょっと聞いてみよう。
「他の電子マネーで支払っても、提示するメリットってなにかありますかね?」
「そうしましたら、ポイントは貯まりません。ただし、1,000円以上のお会計で、端数が最大4円割引になります!」
昔、レジに1円玉いっぱい置いてあったやつか。あれ電子化したのか。DXの波がここにも。
なんにせよ。聞いてよかった。先ほどインストールしたmajicaを自信満々に提示する。
「ピッ」「majica!」
良いことを聞いてしまった。ありがとう、店員さん。ホクホクとしたお買い得感が体を包む。
「お会計、959円です!あっ…」
(1,000円いってないから、majica提示する意味なかった…)
という空気が2人の間に漂う。先ほどまで満ち足りた表情をしていたのに、おもわず俯いてしまう。恥ずかしい。ドンキで1,000円以上も買いものできない身分なんです。そもそも安すぎるのが悪いんです。
次回からドンキでは1,000円以上買うことにします。
4月7日(金)
仕事終わり。新幹線に乗る。行き先は福島県。おととし福島に住んでいた頃、共によさこいをしていたメンバーと一緒に、土日のお祭りに出るのだ。
まさか福島を離れても、また会える人たちに出会えるなんて、想像してなかったな。
久々に昔の最寄駅に降り立つ。はじめてこの街に来たときのことを思い出す。社会人デビューと同時に、知らない街に住んだあのときの自分。たくさんの不安と期待を抱えながら、新幹線から降り立ったな。
どうして、福島に住んでいた頃の最後の記憶じゃなくて、来た瞬間の記憶が呼び覚まされるんだろう。
街を歩けば、どうしようもなく、思い出が脳の引き出しから飛び出してくる。大好きな先輩が異動になったときに、泣きながら飲んだ居酒屋。遅くまで働いたときに、ふらりと寄ったラーメン屋。初めて後輩ができて、連れていってあげた定食屋。
あぁ、この街の生活が愛おしい。楽しい思い出ばかりだ。しんどいこともたくさんあったはずなんだけどな。美化されてるな。ぼくの脳みそは都合がいい。
懐かしさと、あの頃に戻りたくなる切なさと、「この街がやっぱり好きだ」という愛おしさにくるまりながら寝た。
4月8日(土)
よさこいのメンバーと久々の再会。あの頃と何も変わらない笑顔で喜びあう。
チームのメンバーが増えていたけど、お祭りなので自然に打ち解けられる。これぞ祭りパワー。
他チームのメンバーも、お祭りに来ていた。「あれ?北海道行ってなかったっけ!?」と声をかけてくれた。ややこしいね。今は北海道にもいないんだ。
出番が近づき、ステージの袖に向かう。緊張で不安ながらも、楽しみな感情が漏れ出てしまう雰囲気。ステージ横で前のチームを見ながら、ドキドキを抑える待ち時間。「いよいよだね」ってお互いに励まし合う舞台の直前。
全部全部、自分がここにいるんだと実感させてくれる。これだから、やめられないんだ。大人になっても、このくらいワクワクさせてよ。
夢中で踊りきって、拍手をもらう。またこのメンバーで、舞台に立てるなんてね。
お祭りが終わった後は、公民館へ向かった。明日の舞台の練習だ。2日間のお祭りで、明日は別の曲を踊る。
実際、ぼくはぶっつけ本番状態だったので、メンバーが立ち位置確認のために練習を設けてくれた。
お祭りでみんな疲れているのに、明日も朝からお祭りなのに、練習に付き合ってくれた。
合わせるべき動きを確認して、曲を流す。頭で意識したことが、身体に流れこむ。どうやったらより綺麗に魅せられるか、繰り返す。
みんなでへとへとになって、「明日頑張ろうね!」と解散した。
こんな部活みたいなことをするために、ぼくは福島まで来たんだ。
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