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心の名文図書室「なりふり構わんかったら、わたしはひとりでポテトだって買えるんや」
読んだ本の中で、心に残った名文を置いていきます。プチ感想もご一緒に。同じように心に響く人へ届きますように。
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「幸せな人間っていうのは、たしかにいるんだよ。でもそれは金があるから、仕事があるから、幸せなんじゃないよ。あいつらは、考えないから幸せなんだよ」
危ないお金の稼ぎ方を教えてくれるヴィヴさんが、お金に人生を翻弄される少女の花にうす笑いしながら伝えるセリフ。
「考えないで幸せになる」という選択肢を持てなかった少女が、頭を使ってお金を稼ぐことの無力さ、悔しさ、理不尽さに飲み込まれていく作品。
登場人物たちがお金をめぐってヌルヌルと心のカタチを変えていく姿に、「幸せとは何か?」についてドップリと考えさせられた。
考えてしまうからこそ幸せになれない人は、どうしたら幸せになれるんだろうね。
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「あなたと一緒にいると、いつも笑顔が絶えなくて、すごく好きな自分(=分人)になれる。彼といても、そうはなれなかった。その好きな自分を、これからの人生で出来るだけ、たくさん生きたい。だから、あなたがいてくれないと困ると思った」
新書からの名文。人は家庭や職場などで見せる顔が違う。それを「本当の自分」と「仮面をつけた自分」と分けるのではなく、対人関係全てにおける複数の人格を「本当の自分」と認める「分人主義」を説明した本。
分人主義で恋愛を捉え直すと、「あなたが好き」ではなく、「あなたといるときの私の人格(分人)が好き」という考え方になる。これは「他者を経由した自己肯定の状態」になるらしい。
ぼくがここ最近考えていたテーマがバシッと言語化されており、「そういうことか!」と何度も心で叫んだ。
ぼく自身、コミュニティに応じて複数の分人をバランスよく生きていきたいタイプだということがあらためてわかった。
※分人主義に興味を持った方、こちらで解説見れます。
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ヨッシーは断じて不良ではない。2週間に1回は上履きのまま下校して「いっけね!」とか叫んでガソリンスタンドの辺りからまた学校へ戻ったり、給食の献立表を見て冷凍みかんがデザートの日を心待ちにしたりする、超普通の中学生である。
コント作家のエッセイの中で、登場人物が紹介されている名文。「超普通」な人物であることを至極具体的なエピソードで現していて、思わず中学生独特の空気感と懐かしさが胸を通った。
中学生の頃、本当しょうもないミスや忘れものをして学校を往復したな。学校で起きる些細なイベントに胸を躍らせてたな。
1番生きづらいのに、生き生きと過ごしていたような、矛盾を孕んでいた時間だった。そんなこそばゆい日々を思い出させてくれた作品。
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家出をして、更に馬車馬のように働き貢ぐ20代。半年無人島に連れて行かれたりしながら、殿方と10年近く同棲するも破局を迎える30代。男と別れるのが引き換え切符だったように、別れてすぐ仕事が決まり出した40手前。そして「次の婚期は67」と新宿の母に言われたようにただただ仕事に邁進する毎日の今。
エッセイの中で、著者が人生を振り返っている名文。波乱万丈すぎるよ。
「引き換え切符」という言い回しが好き。何かを失うという出来事でできた穴に、新しいものが入ってくるのが人生なのかもしれない。
一人だったとしても。たくさんの人を笑わせて、女芸人仲間と合宿で友情を深めて、しんどいこともお酒とつまみで酔い飛ばしてしまう人生なら。
「一人はいやだ」って感情は、自分を新たな場所に運ぶ原動力なのかもしれない。そんな勇気を、この本からもらった。
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「あのっ、すみません! ごめんなさい! 車いすなんです! 乗ってるんです! 注文してもいいですか?」
こうして母は、ホクホクのポテトの入った紙袋をゲットした。
病室に帰って冷静になってから、母は恥ずかしさのあまり泣きそうになったが、ポテトの懐かしいおいしさに笑みと涙をこぼしたという。
「なりふり構わんかったら、わたしはひとりでポテトだって買えるんや」
岸田さんのお母さんの入院中のエピソード。自分で何もできず、自信を失ってしまった入院生活で、希望を自分で作り出すために車椅子でマックのドライブスルーに突入したお話より。
笑いながらも泣きそうになる。自信がなくたって、恥ずかしくたって、自分の小さな夢を叶えるためなら、ルールからちょっと外れたことだってしていいのかもしれない。
自分の幸せと不幸せのハンドルは、自分で握りしめるような姿勢に、今日も前を向いて生きる元気をもらった。
【編集後記】
5冊のうち3冊が人からの選書や推薦。読書会で知り合った方、note友だち、ブックホテルの店員さん。人がオススメしてくれた本って、外さないよね。
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