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パンみみ日記「家事は愛というエネルギーで溢れている」

日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。


10月15日(日)
図書館でゆっくり。友人に勧められた「愛のエネルギー家事」(加茂谷真紀)を読んだ。家事の1つ1つに愛情を注ぎ、自分らしく生活に向き直す方法を教えてくれる1冊。

印象に残ったのが、とにかくモノたちに声をかけること。すぐに掃除できないところに「待っててねー」。料理で手に取ったピーマンに「いい色だねー」。買い物で出会った服に「ウチの子になる?」

なんと微笑ましい世界。こんな愛のエネルギーのやりとり、できていなかった。最近は家事をとにかく「時短重視」で考えてしまう。自炊も「時間がかかるから」という理由で離れてしまっていた。

図書館の帰り道、久々に八百屋に寄った。野菜たちから出るエネルギーを手のひらで感じながら、家にお迎えする。じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、ようこそ我が家へ。

1つ1つ大事に手にとって色を感じる。ありがとうの気持ちを乗せながら、刻んでいく。煮込んでいく。

完成した肉じゃがは、ホクホクと体に染み渡った。家事は愛というエネルギーを秘めている。


10月16日(月)
仲の良い3人のグループLINE。パピコ(おしゃべりな後輩)が「最近気になっている男性から『今日飲みに行かない?』と誘われたけど、当日にOKするのは軽い女と思われるからあえて断った」という旨の発言をした。

パピコから気になる男性の話は前から聞いていた。本当はすごく行きたかったのだろう。しかも、その男性は遠くに住んでいるので、会えるチャンスは少ない。なのに今後の関係性と自分自身を守るために断った。えらいよ、パピコ。

どんな言葉をかけていいかわからなかった。しばらく悩んだあげく、

「鉄の意志だね。片平里菜だったら、これで一曲仕上げてるよ」

とコメントした。「発想がシンガーソングライターすぎます」とつっこまれた。


10月17日(火)
推し短歌の投稿も終わったので、「サラダ記念日」を図書館に返却。お気に入りの短歌を振り返る。

砂浜のランチついに手つかずの
卵サンドが気になっている

いつもより一分早く駅に着く
一分君のこと考える

思い出す君の手君の背君の息
脱いだまんまの白い靴下

金曜の六時に君と会うために
始まっている月曜の朝

オムライスをまこと器用に食べおれば
〈ケチャップ味が好き〉とメモする

「サラダ記念日」

卵サンドは彼のために作ったのかな。「自分の料理が手にとられるかどうか」だけで好きという気持ちを表現できてしまうのがすごい。

早く着いたぶん、君のことを考える。こんなに愛しい瞬間をギュッと閉じ込められるなんて。「駅」という二文字だけで情景が想像できるのがいい。

「君の手君の背君の息」という君の連続が想いの強さを引き立てつつ、リズムを生んでいるのが心地いい。それでいて最後の靴下が切なさを運んでくる。

金曜日と好きな人がかけ合わさってしまえば、怖いものなんて何もない。月曜さえも彩る気持ちを詰め込んでいる、素敵な表現。

「メモする」って、好きと同義だと思わされる。好きな人の情報をとことん集めたくなる気持ちが溢れている。


10月18日(水)
昨日に引き続き、俵万智さんの「チョコレート革命」からもお気に入り短歌を振り返る。

トーストを二枚焼こうとして気づく
今日から一人ぶんの朝食

思いきり見つめることの言い訳の
小道具となる日もあるカメラ

シャンプーを選ぶ横顔見ておれば
さしこむように「好き」と思えり

「チョコレート革命」

日常の描写から切なさを切り取るのが巧みすぎる。トーストを2人でかじりついていた日々が離れてしまったことが、ぽとりと心に落ちてくる。

カメラを盾に、君をめいいっぱい見つめる情景が思い浮かぶ。好きと恥じらいが混じり合う感情を、絶妙な温度感で表現しているのが好き。

さしこむように「好き」て。人生で言ってみたい。「さしこむように好きって思った」って。日常で流れてしまう感情を、短歌でくり抜くことができるんだなあ。


トースト、カメラ、シャンプーなど、モノでイメージを引き立たせながら、感情を上乗せする技術がすごすぎる。短歌って「悲しい」とか「嬉しい」とか感情表現を出してしまうと、かえって読者の感想を限定させてしまうことがあると聞いた。

感情の絶妙な火加減を調整するのが、短歌の魅力なんだと改めて気がついた。


10月19日(木)
仕事終わり。ちょうどバネオさん(イケメンの先輩)と帰りが一緒になった。ぼくたちが好きなラーメン屋に行くことに。

2人で胸を躍らせながら店内へ。券売機でチケットを買おうとすると、ラーメンのボタンが押せなくなっていた。近くにいたギャル店員に聞いてみる。

「あぁ。豚なくなったんで。豚なしのラーメンなら買えますけど」

とすごく冷静に返された。「すみません、豚切れちゃったんで、ないのなら頼めるんですけど、いかがですか〜?」的な謙虚さがなく、事務的に返された。「当たり前のこと聞いて、こっちがなんかすんません」という気分になった。

なんでい!あの豚ありラーメンの気分だったのに!とむしゃくしゃしながら店の外へ出た。

ぼくはバネオさんの味覚を熟知しているので、絶対に好きであろう牛すじ丼が食べられるお店へ連れて行った。

バネオさんは美味しそうにハフハフと食べていた。この笑顔が見られたならいいでしょう。

短歌を味わったり、牛すじ丼を味わったり、濃ゆい1週間だった。

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