パンみみ日記「私たちのチームの20年後ってこと?」
日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。
6月7日(金)
数年遅れのMBTI診断ブームが自分に来た結果、周りの人がどんなタイプなのか気になってしょうがない。
職場のタイヨウさん(この世の主人公みたいな先輩)の性格タイプが知りたい。いや、「ENFJ(主人公)」に違いない。誰しもに明るい笑顔を向け、人の幸福を願う正義感の塊的な存在だもの。
タイヨウさんにMBTIを訊ねると、こう返ってきた。
「なんですかそれ! 知らなかったです! 今やってみますね♪」
存在すら知らなかったようだ。ワクワクしながら結果を待つ。
「出ました! えーっと、ISFJだから擁護者ですね!」
全然違うやんけー! この性格診断はまず最初に外向型(E)か内向型(I)に分かれるのだけど、タイヨウさんは内向型なのだ。
絶対外向型やん。意外とわからないものである。でもたしかに、タイヨウさんは意外と1人の時間を重んじている。
「愛あるお人好し」と言われれば納得できないこともない。人はこうして、占いや性格診断にハマっていくのか…と思い知った。
6月9日(日)
行きつけの喫茶店へ。窓際のいつもの席へ案内してもらう。
この席の近くには、本が並べられている。ぼくもたまに手に取り、読ませてもらっている。ラインナップはぼくが通い始めたときから変わっていなかった。けれど、最近1冊増えていた。気になって少し読んでみた。これが前回行ったときのできごと。
そして今日。珈琲を持ってきたマスターに話しかけられた。
「この本さ、あなたのでしょ?」
新しく増えた本を指差す。
「え? ぼくのじゃないです」
「違うの? こないだ来たとき読んでたじゃん」
「いや、増えてるな〜と思って。マスターも知らないんですか?」
「君のだと思ってたのに。誰のだろうな」
謎に増えた窓際の本に2人で首を傾げる。迷宮入りして終わった。
*
珈琲を飲みながら、スマホにキーボードを接続してパタパタとnoteを書く。まさにこの日記を書いているとき、突然マスターがぼくの隣に座った。
「何書いてるのか見させてよ」
うぎゃー! あなたのこと書いてましたー!
「恥ずかしいのでえぇ」と慌てながらスマホを持ち上げる。危ない。見られてしまうところだった。
そこからは、誰かが置いていった「東京の喫茶店」という本をマスターと一緒に眺めた。
「ここ行ったことあるけど、大したことなかったな」
マスターがぶつぶつと呟く。あなた温厚と見せかけて、意外とこだわり強めなところあるよねぇ、とくすくすしてしまう。
さて、ぼくはマスターにどんな文章を書いていると思われてるんだろう。
6月12日(水)
営業。午前中にアポを終え、孤独のグルメが如くグッとくる飲食店をブラブラと探す。目についた昔ながらのカレー屋に、ぼくのうまい店センサーが反応した。
店内にはサラリーマンがひしめいており、ハフハフとカレーを食べている。席につき、先ほど他のお客さんが頼んでいた「カツカレー」を注文。
カツが離散した状態で盛られているのは謎だったけど、とてもおいしかった。営業の醍醐味はランチにある。
6月13日(木)
仕事終わりにテニスサークルへ。毎週のように活動に参加しているので、チームにも馴染んできた。
練習が終わり、コートの外へ出る。とある先輩からテニスバックを後ろからおさえるちょっかいを出されたり、同い年のメンバーから「よさく着替えてく? 一緒に帰ろうぜ! ベンチで待ってるから!」と話しかけられたり。
高校時代の部活の風景が蘇る。こうして一緒に汗を流して、なんでもないやりとりをして、帰路につく。ずっとこうしてたいな、と思いながら電車に揺られた。
6月14日(金)
ランチに行ったことのないうどん屋へ。席につき、メニューを眺める。「本日の定食で選べるうどん」が書いてある。
定食ってなんだ。メニューには書いていない。おそらく、入り口の看板に書いてあるパターンだ。
店員さんが来たタイミングで「定食って何がついてくるんですか?」と尋ねてみた。
おばちゃん店員が「今日はね、豚丼と天ぷらです〜」とニコニコ答える。
大人になったものだ。昔のぼくは店員にメニューの詳細を訊くことができなかった。(基本的なこと質問するんじゃねぇ)と思われないか心配で。今考えると、とんでもない小心者だな。
6月15日(土)
テニスの試合。今日は他チームとの対抗戦だ。ぼくが所属するチームのメンバーも数多く集まっていた。家庭をお持ちの方が多いのに。
家族揃ってコートまで来て、旦那さんに子どもを預けて試合に出場するママ。2人ともプレイヤーとして試合を楽しむ夫婦。お腹に赤ちゃんを抱えた奥さんが、アイスのお土産を持って応援に来てくれる旦那さん。
テニスと家庭を両立させている。お互いのしっかりとした理解が必要だろうに。すごいなぁ。いいなぁ。
6月とは思えぬ日照りの中、緊張感と共に球を打ち込んだ。試合の合間に、相手チームの方々とのおしゃべりも楽しむ。
お相手は40代中心のサークル。「どれくらい続いているチームなんですか?」と訊いたら、こう返ってきた。
「もう25年くらいかなぁ。ぼくたち、出会った頃は20代だったんですけどねぇ」
積み重なった年月が違う。というかすごすぎない? 社会人サークルってそんなに長く続くものなの?
すると、ウチのメンバーがつぶやいた。
「じゃあ、私たちのチームの20年後ってこと?」
周りがくすくすと笑い声を漏らす。「いけるかな〜」「本当に続きそうじゃない?」「今、未来見てるんだ」
おじちゃんおばちゃんになっても、こうしてみんなで体を動かして、おしゃべりして、おんなじ感情を味わっていたいな。
*
試合を繰り返すうちに、気がつけば夕方に。対抗戦は無事に勝ち越しで終了した。
勝利の高揚を掲げて、居酒屋でみんなでジョッキをぶつけ合う。ひさしぶりに、全身に行き渡るような気持ちのいいビールを飲んだ。
こんな居心地のいい場所が、20年先も続けばいいのに。
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