パンみみ日記「週末は僕のヒーローに会いに行く」
日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。
11月7日(火)
仕事中。キャリコさん(シゴデキで気配りも完璧な先輩)から「よさくさん、お腹空いてますか?よかったらどうぞ」とクリームパンをもらった。
キャリコさんはビルの売店のおばちゃんと仲が良く、度々パンをもらってくるのだ。おばちゃんはキャリコさんを新入社員の頃から知っているので、孫のように可愛がっている。
おばちゃんのやさしさのおすそ分けをしてもらった。それと同時に、ぼくには野望が生まれた。
(いつかぼくも、パンをもらえるくらいにおばちゃんと仲良くなってやる)
よさくの心は燃えた。
11月8日(水)
同僚のメンズたちとランチ。結婚式を控えている人が2人いる。年内に挙げる先輩と、式場選びをしている後輩。
「結婚式のムービーを必死で作ったのに、奥さんにダメ出しされて1からやり直しです…」
「こっちは式をいつ挙げるのかで揉めてます。僕は冬でいいと思ってるんですけど、意見が合わなくて」
2人とも結婚式を前に疲弊していた。式の段取りはよく意見がぶつかるというけど、こんなに大変なのか。
「結婚式なんて、もういいですぅ…」と後輩が言葉を漏らしていた。なんてこった。あんなに綺麗な空間は、こんなに重い決断を乗り越えて生まれてくるのか。
「まぁまぁ、幸せな悩みじゃありませんか」と言おうとしたものの、(子持ちのベテランが言うべきセリフだな。その後に「私の頃なんてね…」とエピソードが続くべきだ)と心によぎったので、コメントを差し控えた。
「いろいろありますね」と微笑み、目の前のカツ丼を食べる。2人には乗り越えて素敵な式を迎えてほしい。
11月9日(木)
出先でランチ。ナン食べ放題のカレー屋。先月、ナンは1枚で済ませることがデキるビジネスマンの過ごし方だと学んだ。もう、2枚食べて午後眠くなるなんて失態は犯さない。
すると、隣席に座っている男性の会話が聞こえてきた。
「いや〜お腹ぱんぱんになるってわかってるのに、ナンおかわりしちゃうんですよね」
ふふふ。パフォーマンスを放棄したビジネスマンのようだ。ぼくにもそんな時代があった。青いね。すると、衝撃のセリフが続いて聞こえてきた。
「でもこのお店、ナンのおかわり半分もできるんですよ」
なん…だと…!「おかわりできるのにしないなんて、もったいない」感情を回避しつつ、血糖値爆上がりおばけになるのも避けられる…!
気がつけば、ぼくは挙手していた。店員さんに力強く伝える。
「ナンのおかわりお願いします。半分で」
1.5枚食べた。結局、午後は眠かった。ビジネスマン失格である。
11月11日(土)
はじめての文学フリマへ。詳細は別記事にて。
会いたい人にも会えて、文章を誰かに届けるということの勇気をもらった。いつかきっと、自分もそこまでたどり着けますように。
夕方にSHISHAMOの10周年記念ラストLIVEへ。会場はみなとみらいのぴあアリーナ。都市部でのライブ参加ははじめてで、でっかい会場に開いた口が塞がらなかった。これが都会か…!
会場近くのSHISHAMOグッズを身につけている人に片っ端から「SHISHAMO好きなんですか?」と質問しても全員から「YES」と返ってくるであろう状況に興奮した。(文フリでも同じようなこと思った)
ライブではそれはもう大大大好きな曲ばかり演奏され、体の細胞たちが踊り狂っていた。内側からブルブルと震えている。
曲の「HEY!」に合わせて声を出したり、マフラータオルをぶんぶんと振り回したり、全身でSHISHAMOの生み出すエネルギーを浴びる一瞬一瞬が、生きた心地を思い出させてくれた。
最後に、ボーカルの朝子ちゃんが「ここまでバンドを続けるなんて思ってなかった。何度も辞めてやるって思った。でもこの景色を見ちゃうと、やっぱり辞められなくて」と話している姿に釘付けになり、
「もしかしたら『なんとなくライブに来た』って思ってる人もいるかもしれないけど、私は今『10周年をお祝いしに来てくれた』って思っていて。そんな一つ一つの行動が私たちをここまで運んでくれてる」
という発言で「推し通します…!」と忠誠心を固くした。演奏、歌詞、歌声、セリフ全てで感情を動かしてくれる。
SHISHAMOの曲でこんな歌詞がある。
ぼくにとってのヒーローはSHISHAMOなのだ。感情に寄り添い、一緒に悲しんだり嬉しがったりできる存在。
何度も何度も聞いた曲だけど、あらためて素敵な歌詞だ。
ベースの松岡ちゃんは、初期のライブでは緊張と不安で感情がぐちゃぐちゃになってボロボロ泣いていた。そんな姿が秘蔵映像として流れた。
ドラムの吉川ちゃんは、高校時代に上手くいかないことがあって、「どうしても教室に行けないことがあった」と言っていた。
誰だってどんなときだって、嫌なことはあるし、痛くて泣きたいときがある。そんなとき誰かに勇気づけられて、前に進んでいる。そんなことを、強く強く感じさせてくれた。
ライブ終了後、「はぁぁ〜〜〜〜」と温泉に浸かった瞬間の声しか出なかった。この先1週間分の感情を全て消費してしまった。
またあの景色と、感情に出会うためにライブに行こう。
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