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弱さの言語化サッカー漫画、アオアシ。
アオアシを28巻一気買い&一気読みしたので感想を残しておこうと思う。
この作品は、愛媛でサッカーをしていた主人公アシトが東京エスペリオンFCのユースチーム監督である福田と出会い、天才的な能力を開花させていく話だ。
試しに最初の5巻だけ買ってみたが最後、あまりの面白さに読み終えた直後本屋を駆けまわり結局全巻買ってしまうほどめちゃくちゃおもしろかった・・・揃えるために5軒の本屋を回ることになってしまいかなり大変だったが、そんな苦労も報われる、出会えたこと、読めたことが光栄に思えるような作品だった。
アオアシのおもしろさは『言語化』にあると思っていて、とにかく登場人物たちはサッカーしながら言語化、言語化、言語化を繰り返す。サッカーというスポーツがメインなんだけど、ボールを蹴りながらたえず戦術・技術に思考する描写が光っている。
これを読んでいて思ったんだけど、言語化って相手を理解するため、自分を理解するためには必要不可欠な工程なんだよね。しかも、自分の弱さや恐怖心と向き合い次のステージにいくためにはなぜ、の部分をはっきりさせるのは避けて通れない道だし。
彼らの言語化の対象はサッカー、の中の目を背けたり逃げ出してしまいたくなるような課題で、それから一切逃げずに向き合い強くなっていく姿に読んでいるこちらまで突き動かされる。
狭き門をくぐり抜けたものだけが在籍できる組織、それが東京エスペリオンユースだ。完全実力主義のここには使い物にならない選手の居場所はない。逃げ道はない。逃げは戦力外通告に等しいので……常にそういう断崖絶壁の場所で踏ん張っている彼らの挑戦を見るのはとてもワクワクする。
私がこれまで読んできたスポ根漫画にはチームスポーツ故の仲間を思う熱い描写があることが多かったが、アオアシには「チームのために」みたいな雰囲気はあまりなくて、おもに個の成長やら課題に焦点が当たっているような気がする。目に見えて熱い!というわけではなく、常に体だけではなく頭もフル回転してサッカーをしているが故のしずかで厳かな内面的な熱さがかっこいい作品だなと思う。
まじでめちゃくちゃクールじゃん・・・となる描写がたくさんあった。
キャラ読みする私には珍しく推しキャラ不在の話なんだけど、全く飽きずに読めるのは自分の弱さを無視せず真っ向から勝負し発展していく彼らにとてつもなく魅せられているからかもしれない。
アシトはイーグルアイの天才的な俯瞰ポテンシャルを持っており、徐々にその頭角を表していくが、それまでの道のりはとても険しく、大体の場合最初はチームメイトに信用されていない。それでも、悪意や敵意を向けられた相手にも、自分が上手くなるためなら教えを乞い何度もめげずにアタックできる向上心の高さが魅力的なキャラだ。
私は考えたくないことは考えないし、なにか考えなきゃならないことがあったとしても別のことを考えて現実逃避してしまったりする弱さがあるんだが、アシトを見ていると「本当にそれでいいのかな」と思い自分の弱さと向き合うための勇気を分けてもらえるような気がする。
アシトはたしかに天才なんだけど、人並み以上に努力し体を壊してしまいそうなほどに練習に取り組み、己の課題と向き合っている。弱さや課題の克服には言語化の経由が必要で、「なぜ」「なぜ」「なぜ」を問いかけ続けて自分を極限まで追い込む、そういう作業を絶対に怠らない。
そういう姿に惹かれるということは、私もそういう自分でありたいと思っている証拠なんだろうか。もしそうなのだとすれば、私もアシトがピッチを走っている間は自分の目標に向かって走り続けていたい。読みながらそういうやる気をもらえた。
アシトがこれからどんなサッカー選手になっていくのか、どういう言語化をすすめていくのかが楽しみだ。
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