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当たり前に愛を込めて。すずめの戸締まり。

今話題の映画、『すずめの戸締まり』を観てきた。

周りから聞く前評判が「ヤバい」「泣いた」だったので私はこれからどんな気持ちにさせられるんだろう…とドキドキ半分怯え半分で行った結果、めちゃくちゃ良かったので感想メモをば。

閉じ師について

なんか、閉じ師ってめちゃくちゃおくりびとみたいな仕事じゃなかった………??

観ながら、すずめやそうたが言う「お返しします」が自分の家や大事なひとの元へ帰れなかった/言えなかった分をいくべき場所へ送ってあげているのかなと感じたんだよね。

「いってきます」と「ただいま」は基本二つで1セットじゃないですか…

でも、すずめの戸締まりには、片っぽだけのカケラがそこらじゅうに散らばっている。

閉じ師は廃墟から出る災いを封じ込める仕事なんだろうが、廃墟に残った色んな人の気持ちや思い出ごと土地を成仏させることも兼ねているのかもしれないなと思った。

ミミズについて

ミミズが現れるところって、前は人がいた場所なんだよね。

思えば、人間が死んだ時はちゃんとお葬式をして時間と手間をかけてお別れをするけど、どんなに慣れ親しんだ場所だろうが、土地とのお別れってあまり意識はしないような気がする。

たとえば、最近わたしが通っていた高校が廃校になり合併になると聞いたんだが、学校が大好きだった私も、別にその学校に今改めてお別れを告げに行こうとは思わない。

たぶん、好かれていてもお別れをちゃんと告げられないままひとに置いていかれる土地ってたくさんあるんだろうな。

そう考えると、ミミズって、人間で言う「ゆうれい」みたいな存在なんじゃないか。土地バージョンの。

ひとの終わりだけでなく土地の終わりも大事に、という意識を持てる。

あと、ミミズってたしかに災いではあるんだろうが、外に災いをもたらすために来ているというよりは、浄化してほしくて出てきている側面があるのではないか。

終盤に見たミミズのいる世界は燃えていて、暗くて苦しそうなんですよ。助けてほしい意味合いもあったのかな〜と。いや知らんけど。

要石について

また、要石はなぜ「人の手で」がキーなのかというのを考えると、結局、神様がいるそこは人間が住んでいる/取り仕切っている場所でもあるので、神だけが頑張るのではダメで、人間も頑張らなきゃいけないのかな〜と思った。

神さまがどんなに特別な力を持っていたとしても、発動条件やコントローラーは人間側が握っているのかもしれない。

土地を守るというのは人と神さまの共同作業なのかもな。

だからこそ、共同作業が行われず、人と神どちらをも失った廃墟は災いが行き来しやすく、ミミズがこっちの世界に簡単に出てきてしまう入り口になってしまったりするのかな?

実際、作中であれらが出てくる場所はひとの少ない場所であった。人が暮らし神が守る生活環境は災いが表面化しづらいのかもしれん。

人がいる、神がいるというのは、もうそれだけで一種の結界というか、守りの力があるのかもしれないね。

個人的に好きだったシーン

わたし的すずめの戸締まりベストシーンはたまきさん乗っ取りシーンだ。その後の自転車のシーンの「けどそれだけじゃない」までがセットで好き。

何か取り返しのつかないことを言ってしまったとき、私たちは「本当はこんな事思ってない」と言いがちだし、思ってしまいがちだ。

口から出た言葉の鋭さに自分がびっくりしてしまい、そんなことはないはずだ、と考えてしまう。

でも多分勢いで言ってしまったことって、別に嘘なわけでも思っていないわけでもないんじゃないか。あの映画を見ながらそう思った。

発言自体の撤回ではなく発言の補完をする形にした新海誠さんに、たまきさんやすずめちゃんへの心遣いを感じて好きだ〜〜〜〜となった。あのシーンは彼女らの感情をキャラ、というか生きている人間の気持ちとして誠実に描いている感じがしてすごく好きだった。

あとサダイジンにダイジンが飛びかかるところもよかったね……

「うちの子になる?」ってすずめの言葉、言った瞬間はたぶん本心だったんだよ。本心からその言葉を言ってくれたことがわかったから、ダイジンはその言葉と気持ちが嬉しかったんじゃないかな〜

私が思うに、誰かにとって誰かが「大事なひと」になるまでには何かしてくれた、何かもたらしてくれたというきっかけがあるのかもしれないけど、多分、大事な人になったあとはもう相手が「いる」、それだけでもう十分なんですよね。

ダイジンにとってすずめちゃんはもう大事な人なので、すずめちゃんの家の子になれようがなれまいが、そこは重要ポイントじゃない。

すずめちゃんの家の子になれなくたって、すずめちゃんがいればもうダイジンは幸せなんだから。

そういうことにも気づける話だった。

すずめの戸締まりは、展開的に良い話!ハッピーエンド!と手放しで喜べる描写だけなわけではないし、作品の良し悪しとは別の基準でモヤッとするところも多い映画だったんだが、それはそれとしてめちゃくちゃ面白かったのでできることなら近いうちにまた見に行きたいと思う。

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