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二枚貝


紫髪した風水師は禍々しいと言った
明るい色の腰掛けを
そうね、オレンジ色かグリーンがいいわね
電気はLEDに替えなさい
薄暗い北向きの風呂場に冷えた足
水を抜いた浴槽の蓋の上に洗面器を置いて潮干狩りで採った浅蜊をざらざらと入れた
新聞紙で覆うと 暗い夜
ひとつとして同じ殻の柄を見たことがない 私
塩化ナトリウムで作られたレプリカの海中で
どれもが 蝶番はかたくなに閉じられている

泡 ひとつ 流星の様子
泡 ふたつ 瞬く流星群

勢力と勢力がぶつかるとき 多様性スパーク
正義と正義の暴力
目に沁みる沈黙のそれ 故に盲目

沈黙を言葉であらわすならば、
沈黙を詩にするならば、
なにが相応しいかを、
なにが腑に落ちるのかを、

伸びた水管 底に残った砂
淀ませて濁った塩水捨て
酒蒸して開いた身を咀嚼してから
虚しさを味わって また口を噤む

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※浅蜊 あさり
※蝶番 ちょうつがい
※泡 あぶく
※噤む つぐむ


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