夜野群青 ( ヨルノ グンジョウ )

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夜野群青 → 理柚 07/12

理柚さんとの往復書簡、7話目です。 先日、理柚さんからいただいた手紙がこちら。 長い長い梅雨が明けたと思ったら、今度は灼熱の夏がやって来ました。季節の移ろいを味わう以前に、その激しさに翻弄され、押し潰されそうな自分がいます。あなたがおっしゃるように、こんな季節の中では、染み入るような雨の名前もいつしか忘れ去られてしまうのかもしれません。 そんな弱気な自分を後目に、蝉はかしましく、蔓草は天を目指して伸び、次々と花を咲かせていきます。夕刻にはぐったりしていた樹木の葉も、わずか

    • 書きたいもの描きたいものが確実に変わってきたことに気づいた。 前の作品が劣ってるというのではなく、次のフェーズに移行なのだろうと思う。

      • 第14話 バカの田坂

        冬だというのに季節外れの生ぬるい風が、地下通路を吹き抜ける。 通路を抜けるとすぐ側に墓地がある。墓地の周りだからといって、心霊現象が起きたなんてことは今のところ、ない。 そもそも、俺や直樹、まぁぶるにいたってはそんなものを感知するような特殊能力はあるはずがないのだ。現に目の前にいる奴の気持ちさえわからねえのに。言葉に出してくれなきゃ、わかんね。 察するなんて芸当できやしねえ。なんてったって、鈍感すぎて好きな女の子の「嫌い」本気にしちまうからなぁ。 (でも話せないイカの言葉はど

        • 「鼓膜によせて」

          お医者さんが頭をぶんぶんと両手で振るので困った私は詩を書くことにしやはったんやと思う 栄螺《サザヱ 》が紡いだ螺旋階段の天辺《てっぺん 》で 連想ゲヱムの連想ゲノム解析 するするすると滑るのみのみのみ あ・栄螺《サザヱ 》味の薬・苦い 飛んでしまったなあとはんなり云うても、偉いもんを看てしまったわあと後悔は羊を連れ立って巡ってく思考的な丘の上にメヱメヱと垣根を越えて行くので、残像しか見えやしないし、鳴き声さえ聴こえはしない いったいぜんたい何匹いてはるの、そこには 逃げは

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        • ダダダダダダダダダダダブン、タブンダブン
          1本
        • 往復書簡
          8本
        • 69、もしくは69
          15本
        • 詩集
          65本
        • 温度
          1本
        • 埒外の青い詩集
          11本

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          無題

          深爪は吐息をはべらせ しゃんらしゃんらと蕎麦殻の枕だけが 私の夜の湿度と深さと重みを知ってゐる

          「あくまで主観を研ぎ澄ますものに」

          ある男から壺を買った 身体がすっぽりと入る巨大な陶器製の壺は鳳凰の眼が滲んで安っぽい孔雀に見えた 大袈裟な冠を見て少しだけ笑った 底の処理は至って量産型で、特別じゃない品物だとは解ってはいた 装飾も金箔も、外側なんてどうでもよくって ただ中に入ると、感傷涙液で充たされた内側は心地好くて、あたしは水を得た魚になれたし温くて暗くて落ち着いたし 曲線と腰椎のカーブがぴたりと沿って、理由なんて要らないほど、私はそれを気に入った 男の言い値で、私が一生かけて払い続けるつもりで買った

          「あくまで主観を研ぎ澄ますものに」

          アメリカンアンティークのお店で ドタバタ劇を繰り返す猫と鼠 (勿論、古びたブラウン管の中で) (永久機関) 無限ループでフラフープ ビンテージとアンティークの空白(_blank)で いつだって首を傾げたくなる はて 錆びたあの鍵穴と鍵は出会えるだろうか

          kagefumi

          低い空に傾いた薄い月が落とした光量 影は伸びないのはそもそも脚のないお化け 口だけのお化けの仕業 嗤ってる場合かよ はは は どこで捨ててきたのかねえ 口先お化けはいつだって忙しく 仮装して仮想して火葬すんだ ループしてループして それは流転ですって か はは は 何処に棄ててきたのかねえ 四角四面の匣の中ぢゃあ 何にだって成れるもんねえ 二枚舌の残像バレないと思った? はは は 影 儚くとも美しき 愛おしき

          クリヰムソオダの記憶

          ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 【クリヰムソオダの記憶 / 001】 確か、あれは母の体調が悪かった夏の夕暮れ。観光バスの運転手をしていた父が、私と弟を自家用車に乗せて連れ出した。ミッションレバーに見慣れない装飾のついたカバー。幼心に、私は違和感を感じていた。思えばその頃すでに私はヲンナだったのかもしれない。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 【クリヰムソオダの記憶 / 002】 ヲンナと云うものは、何故、“今までと違う”ことに敏感なのだろう。そこには根拠や確証

          無題

          あなたの皮膚をおさえこむたびに 内側からの反発する力を感じてゐる 指紋が吸いつくやうに 快感に身を委ねたふりをして あたしはそれを愉しむときにだけ いのちと云ふものの触感と あたしの線引きを確固たるものにする 犯されない犯しきれない 絶対領域に絶対空域と云ふものを あたしがあたしでいていい理由を あなたがあなたでいていい意味を 探しあてた気になる だから少し 痛くて嫌い

          色夢

          重い瞼を閉じてソファーで泥のように眠ろうとする, 軋むスプリングの振動が誘う幼い頃の記憶, 小気味好いリズミカルな音から, 父と母の交わった声, コンクリートと金属の境目, 緩急な高速道路, ≠ ストップ, 橙色が両目の端で鬼火、飛んでは消え、消えては飛んで、それもまた, ≠ フィクション, それは、ゆめうつつ 瞼の裏の絵に少し似ている

          夏のデザート

          飼い慣らした夏に二枚爪 舌に乗せるとほろ苦く 深く沈殿するコーヒーゼリー 地質学者は頷いた 握る匙には、空、海、砂の蒼三層

          「蜜蜂の羽音」

          まだ硬い蕾は壊れやすい 決してこじ開けてはならぬ 羽根のような柔さでそっと触れ 咲かせる大輪を予期させ 役目を終えた私は骸となるだろう 母は二度死ぬ

          KuJiRa

          だから水性の音はしない 青空を模した天井で思考の波を掻き分ける 雨降りの前と後では匂いが違う事を ここにきてから知った (なんて滑稽) ブラインドの隙間から 白亜色した身体に窓から差し込む光線が 斑に投影されて浮かび上がる 仲間と骨膜の存在意義について 熱く語った日はとうの昔 ああ、僕は白くて黒い存在だ (なんて皮肉) 緑豆と海狗が机上で叫んだら 増殖しすぎて 今度は違う個を追いやった 彼方を立てれば此方は立たずに 結局プログラミングされた僕には 意思も目的も必要性は皆無

          KuRaGe

          モルタル漏れる夜 なけなしの金貨で買う海月 余りの分母は棄てちゃいな

          夜野群青 → 理柚 05/12

          理柚さんとの往復書簡、5話目です。 先日、理柚さんからいただいた手紙がこちら。 あなたが住む街の風景が(きっと行ったことも見たこともないはずのその風景が)なんだか懐かしい、と感じてしまうのはなぜでしょうか。とても不思議です。そして、私の住む街でも紫陽花が濡れています。結局、あの雨の名前を思い出せないままの6月が終わろうとしています。 あなたの「読む」ときの感覚、とても興味深く読ませてもらいました。 「世界のへしおれる音」に、正直、どきり、としました。私も「今の自分を壊して