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詩集

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¦過去の作品をまとめています。
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記事一覧

「鼓膜によせて」

お医者さんが頭をぶんぶんと両手で振るので困った私は詩を書くことにしやはったんやと思う 栄…

無題

深爪は吐息をはべらせ しゃんらしゃんらと蕎麦殻の枕だけが 私の夜の湿度と深さと重みを知って…

「あくまで主観を研ぎ澄ますものに」

ある男から壺を買った 身体がすっぽりと入る巨大な陶器製の壺は鳳凰の眼が滲んで安っぽい孔雀…

アメリカンアンティークのお店で ドタバタ劇を繰り返す猫と鼠 (勿論、古びたブラウン管の中で)…

kagefumi

低い空に傾いた薄い月が落とした光量 影は伸びないのはそもそも脚のないお化け 口だけのお化け…

クリヰムソオダの記憶

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 【クリヰムソオダの記憶 / 001】 確か、あれは母の体…

無題

あなたの皮膚をおさえこむたびに 内側からの反発する力を感じてゐる 指紋が吸いつくやうに 快感に身を委ねたふりをして あたしはそれを愉しむときにだけ いのちと云ふものの触感と あたしの線引きを確固たるものにする 犯されない犯しきれない 絶対領域に絶対空域と云ふものを あたしがあたしでいていい理由を あなたがあなたでいていい意味を 探しあてた気になる だから少し 痛くて嫌い

色夢

重い瞼を閉じてソファーで泥のように眠ろうとする, 軋むスプリングの振動が誘う幼い頃の記憶, …

夏のデザート

飼い慣らした夏に二枚爪 舌に乗せるとほろ苦く 深く沈殿するコーヒーゼリー 地質学者は頷いた…

「蜜蜂の羽音」

まだ硬い蕾は壊れやすい 決してこじ開けてはならぬ 羽根のような柔さでそっと触れ 咲かせる大…

KuRaGe

モルタル漏れる夜 なけなしの金貨で買う海月 余りの分母は棄てちゃいな

KuJiRa

だから水性の音はしない 青空を模した天井で思考の波を掻き分ける 雨降りの前と後では匂いが違…

音楽室

歪んだ電子音、縁った装飾施された天鵞絨生地の椅子。 窓の白いカーテンは飛び乗った拍子に裂…

夏祭り

七尾の狐あ・うんと誘えば 朱色の鳥居はえんえんと ぱられるぱられる あちらこちら線の上 反復横飛び祭囃子 鈴の音りんりん 着物の裾ちらりと翻った あの仔のふくらはぎ あゝ艶めかしくも不純な動機 宝珠も巻物、三種の神器も 夜店の桶の中こなごなと 金魚の尾鰭に連なりり 阿吽の呼吸乱れては 狐は大きく遠吠えを