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6月の短歌

電線が街からすべて消えたとき空が途端につまらなくなった


金平糖かじるたびに一等星手に入れた気になった真夜中


野良猫を追いかけ迷う路地裏で君と出会った真夏の昼間


人混みは好きじゃないからこの夏も花火をベランダでひとりじめ


履歴書に書き連ねてるもうひとりの自分が生まれる不気味さ


地下鉄が地上にでてく瞬間がなぜだかすごく安心できた


離れてるほうが愛せる星空も君の寝顔も知らなくていい


真っ白なアイスがソーダに溶けるまで君を待つ夏の喫茶店


レイコーのグラス汗かく君はまだ新宿地下で迷ってますか


気の抜けた三ツ矢サイダーみたいな夏だったよ君がいないと


きみのこと三割増しでかわいく見えているから風邪ひいたかも


きみじゃなく尾崎豊がうたうから泣けてくるんだうたわないでよ


その涙で湖つくりふたりきりのんびりボート漕ごうじゃないか


駅で人を待ってる足元の逃げない鳩に名をつけてやる


死ぬときは祖母の家で飼っていた柴犬だけをおもいだしたい

遅れてやってきた五月病と別分野の作家活動が忙しく短歌を詠む時間が確保できなかった悔しい、ぼーっとする時間がなかった、すきなことで忙しいことは良いことだけれど、短歌のすきがすこしだけ薄まってしまったようで悲しくなっている、おもえば6月は本屋にいっていない、紙のにおいとページをめくる音がぼんやりとしている、夏、クーラーのきいた本屋から流れでてくる冷気がすきです、印刷物のにおいが混じった冷たい風を浴びにいきたい

作品をまとめて本にしたいです。よろしくお願いします。