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燃え滓

はてしなくなる夜明け前の抱擁が弱々しくて
あの日に誓ったあなたへの復讐も
本当はとても脆かったんだ
へらへらと笑って
傷ついていないふりをして
裏腹なわたしの復讐は
未遂に終わってしまったのか
街が白み始めて陽が昇りかけ
わたしは蹴りをつけるために
あなたをちゃんと心底憎めばよかったと
空々しい顔で嗤っていただけ

燃え滓みたいなあの月の温度
冷めきったインスタントコーヒー
やるせない男と女
みっともない姿
自戒の空中ブランコで
行ったり来たりしている
よくもまあ平然としているよねって
あなたをもっと心底憎みたかっただけ

感情を押し殺すことが虎馬だって
あなたに知られたくなくて
わたしの本当のしたかった事
それは紛れもなくあなたへの復讐で
なにが復讐なのか
本当は分からなくて
不器用で弱々しくて
脱力した腕の中で
もう憎む気力もなくなってゆく
わたしを分かって欲しかっただけ

なんの変わり映えのない空が嗤う
十四歳の頃の私が言う
憎しみは忘れなくていい
それで生きてゆける
燃え滓がはらはらと夏の夜風に
飛ばされるだけの
なにが復讐なのか分からないまま
その気持ちを燃やし続けてやるのさ
ひとり焦げつくまで
燃え滓になるまで

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