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慣れないことは、たまにのたまにのたまにがいいね。

先日高校時代の知人の女の子から食事に誘ってもらった。

といっても、男少数での食事ではなく、男子1対女子2の完全なアウェーだ。

変な誤解を招くとまずいので先に伝えておきますが、僕は高校、そして今とモテモテではない。むしろその言葉とはご縁がない存在だし、学園漫画に出てくる、前を通っただけで黄色い歓声をあげられる美青年を見てると「この人は軽はずみな行動や問題を起こせないのかも。」と私生活を少し心配しているぐらいだ。

誘いを受けた時は断ろうとも思ったが、久しぶりに会う二人を考えると、そんなに苦しい時間が流れそうにないと予想した。

そして当日。

僕は居場所を失っていた。目の前では仲良く会話を進める二人。反対にちびちびとグラスに注がれた水を飲む僕。

まぁそうだよな。男子と女子じゃ気持ちの捉え方も見え方も違うもんな。

それと同時に、僕は今まであった「高校時代は..」という限定された頭文字を脳内で消した。もし今後、今回のような展開でいつぞやの知人と会う機会だってあるかもしれない。その際は当時の記憶からその人の情報を分析するのはやめようと思った。やっぱり人は変わるし、想像だけじゃなくリアルを経験しないと。

そんなことを心の中で誓ってる僕とは裏腹に、彼女たちは楽しそうに会話を進める。時折こちらにふられることもあったが、基本は「うんうん。」と頭を揺らしながら彼女たちの会話を聞いている。

「あぁ..こんなことなら部屋で阪神戦見ておけばよかった..」と後悔したが、それを脳内からすぐに消去。


何時間が経過しただろうか。そろそろお開きになる雰囲気が漂ってきた時のことだ。

さっきの楽しそうな感じとは一変して、少し重い空気が流れ始めた。

それは将来のことや今の自分の現在地について。

人脈が少ない僕は、周りの人間がどういった道を歩んでいるかなんて知らないし、そういった情報はあえてシャットアウトしていた。だけど彼女たちの口から出てくる言葉を聞いて、またひとつ僕の考えが変わりそうだった。

俳優を目指している人、大学を辞めた人、会社辞めてアルバイトで生活してる人。さらには、ネットで知り合った年上の人と付き合って九州まで出かけた人もいた。

そんな話を聞いていると、自然と自分自身と対比させていた。

「僕はこの先どうなるんだろう?どうなりたいんだろう?」

この先も生きてることに喜びを感じられず、やりたいこともなく、淡々と過ごすくらいなら25くらいで死ぬことも本気で考えている。「いいな」「羨ましいな」「楽しそうやな」と目に映るキラキラな人達や世界をこれからも干渉しては、自分の惨めさを痛感するぐらいなら、死ぬことはある意味救済の手でもあると考えている。

まぁ、感じ方は人それぞれですけどね。

長かった食事が終わり会計を済ませ、二人に手をふってから帰路につく。

「慣れないことをする前は慎重に考えよう」

夜空を見上げながら僕はため息をつくと同時に、忘れないように脳内の小さなフォルダに書き入れた。

そしてもうひとつ忘れちゃいけないことがあった。

それは僕を食事に誘ってくれた女の子が話していたことだ。

その子は大学を辞めて今は地元で働きながら、保険関係の仕事につくため保険の勉強をしている。だけどその子は不安な気持ちを抱えながらも楽しそうに話す姿が印象的だった。

「大学を辞めたことで私の中で何かが吹っ切れて『大丈夫!』って思えるようになって、めっちゃメンタル強くなった気がする。根拠はないけど『大丈夫!』って思えるようになったんだ。」

「よし..」

フォルダに入力を終えた僕は少し早足で帰る。

今すぐにでも眠りたい。

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