夜 月魚

(よる げつぎょ)/アマチュア小説書きです。Kindleにて電子書籍を個人出版中。BL…

夜 月魚

(よる げつぎょ)/アマチュア小説書きです。Kindleにて電子書籍を個人出版中。BLメイン。

最近の記事

絢のだいしゅきホールド大作戦(『愛でいいよもう』こばなし)

 だいしゅきホールドなる「否応なくイラっとさせられる言葉ランキング」20位以内に入っていそうな言葉を知った。  そういうどうでもいい情報で俺の決して多くない脳の容量を無駄に埋めてくるのはたいてい社長かバカ後輩だが、今回は後者だ。 「しゅき」をアピールするには実に効果的な手段なのだという。  ……ほぉーん。 「しゅきの気持ちを伝えるにはこれがいちばんです」  ……ふぅーん。へぇ。そう。  まぁボケナス後輩の言うことなんて話半分、いや八分の一くらいにしか聞いてませんけど。   別

    • 『愛でいいよもう』2022年クリスマスSS

      ※本編読了後推奨  近年のクリスマスといえば搾取のイベントでしかなかった。 「イイ子の絢くんにプレゼントをあげようねぇ」と「可愛いサンタさんはどんなプレゼントをくれるのかなぁ」の主に2パターンがあったわけだが、そんな爛れた“性なるクリスマス”を過ごしてきた俺にとって、今年は人生初の彼氏と過ごすクリスマスということになる。  それが問題なのである。  普通のクリスマスってどんな?それは一体、なにをしてどのように過ごすの?  まぁ、ヤるだろ。それはマストだろ。この日にヤんないで

      • 美味しくいただきました。(『ストロベリーとシガレット』こばなし)

        ※本編読了後推奨 ※2022年クリスマスSS  いつのクリスマスだったか忘れたけど、一度だけ、千年がケーキを持って帰ってきたことがある。  手渡された小さな紙の箱を分解するように開けると、スペースを埋めるための丸い厚紙に挟まれたショートケーキがひとつ、真ん中にぽつんと入っていた。  ケーキ以外の色を塗り忘れたぬりえみたいな寂しい箱の中から、落とさないように慎重にケーキを取り出してお皿に置いた。じょうずに切り分ける自信がなくて、礼とふたつのフォークでそのまま食べることにした。

        • ある日の姫村家(『ストロベリーとシガレット』こばなし)

          ※本編読了後推奨 「寝袋」 「それはさすがに」 「あぁ、アウトドア感ゼロだもんね」 「いや、そういう意味じゃなくて」 「それがいちばん場所取らないじゃん」 「いちいちちゃんと畳むと思う?」 「思わない」 「……。それに」  と目の前のソファに転がる塊を見下ろす。 「……千年さんが入ると、死体袋に見える」  礼が無言の肯定ののち、顔を上げてベランダに目を向けたので、蛍は先回りして「そこはなしで」と言った。  目下、姫村家が抱えているのは千年の寝床問題だ。  徐々にではあるが

        絢のだいしゅきホールド大作戦(『愛でいいよもう』こばなし)

          藍より深く(『愛の巣』こばなし)

          ※本編読了後推奨  夜明け前、仕事を終えてベッドに潜り込む時、ほんの一瞬目を覚ます幸の無防備な顔が好きだ。  開花のタイミングを間違えて戸惑う花弁のような瞼を何度か瞬かせて、ふらふらと蛇行した視線がふとこちらを捉える。  その無添加の眼差しを、青灰色の闇の中で息を詰めて受け止める数秒が好きだ。  焦点が定まりきらないうちに安心したように再び閉じていく瞼の速度や、穏やかなままの呼吸や、抱き寄せると必ずシャツを掴む指の頼りなさも。  同時に取り返しのつかない気持ちになる。  こ

          藍より深く(『愛の巣』こばなし)

          【電子書籍(Kindle)】

          BL 非BL

          【電子書籍(Kindle)】