ビジネス「護身術」その3〜契約書と弁護士活用

このシリーズ、前回の記事はこちらです。この間ずっと「である」調で書いてきたのに、この記事は何故かそれでは書きにくかったので突然「ですます」調です。ご容赦下さい。

事業者がトラブルに巻き込まれたとき、身を守るために必要なのは自分の言い分を「証明」できる「証拠」が必要であるところ、護身たり得る「証拠」とはテキストであるという話でした。
で、テキストにも様々な種類があるところ、最強のテキストは契約書であるということが本稿のメインテーマです。

最初の入社時や有期雇用契約ならともかく、いったん雇用関係に入ったなら雇用主と従業員の間で何度も契約書を交わすことはあまりないでしょう。事業者同士の取引でも納品書と請求書のやり取りがメインで、いちいち契約書を交わさないという業界は幾らでもあります。契約の相手にいちいち契約書や合意書の作成を要求することが難しい場面が多いことを前提に、替わりに何らかのテキストを残して「証拠」を保全しておくことがビジネス上の護身になる、それが上記前稿と前々稿の趣旨でした。
ただやっぱり、契約書をきちんと交わせるのであればその方が良いです。メールやチャット、ファックスでのテキストは一方的に送りつけるものであるし、それへの返信があったとしても話し言葉に近いので、一般的に解釈の幅が広くなります。双方で内容を精査した上で合意したことが推定される契約書や合意書は、やはりその他のテキストとは証明する力が違います。

となると、ビジネス「護身術」として最強の方法は、こちらでいちから作成した契約書を相手に呑ませることです。自分に有利な内容ばかりを契約書に盛り込んで、それに署名(記名)押印してもらえば良いのです。いざトラブルになったとしても、契約書内容が圧倒的にこちらに有利であれば、相手は徹底的に争うことを諦めるでしょう。
とはいえ取引関係では、必ずしもこちらに有利な契約書を相手に押しつけられるとは限りません。また弁護士にいちから契約書作成を依頼するとそれなりの費用がかかるので、契約書作成にそこまでに費用はかけたくないというのも中小企業ではよくあることです。
その結果、國本のように中小企業・中小事業者を主たる顧客とする弁護士は、自分のクライアントがより体力のある取引相手から渡された契約書に対して意見を言うに止まるリーガルチェックの仕事が大半を占めることになりがちです。

このリーガルチェックという仕事が、弁護士にとってはなかなか悩ましい仕事です。いちから契約書を作る仕事に比べて必ずしも簡単とは言えません。枠組み自体が既に決められているため、この契約書をベースにするのなら取引自体を考え直して欲しい、もし可能なら根本的に書き直したいと思う場合も少なくないのです。
しかしそんなちゃぶ台返しが出来るようなケースはそうそうありません。なので、クライアントから取引相手との力関係やその取引の重要度を聞き取り、それに応じて可能な程度の妥協点と改訂案を提案することになります。若干でも契約書の不利なところを減らしていくことになるので、これも護身と言えば言えるでしょう。

加えて國本がリーガルチェックで重視してるのは、クライアントの経営者本人に、その契約書のどこが何故どのように不利なのかを知っておいて貰うことです。たとえ相手から提供された契約書をそのまま呑まざるを得なかったとしても、弁護士の視点から見て法的にどこが不利なのか、どのような場面で問題になるのかを知っておけば、その取引相手とどういう喧嘩をしてはいけないのか事前に判断がつくので、それもまた護身になるのです。中小企業・中小事業者特有のビジネス「護身術」の神髄が、このリーガルチェックに潜んでいるのです。

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