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ベストセラーのビジネス書『FACTFULLNESS(ファクトフルネス)』なんて絶対に読むまいと思ってた

こんにちは、よりみちコピーライターのシノです。タイトルからお察しのとおり、読んでしまったんです。累計92万部を突破した世界的なベストセラー、『ファクトフルネス』を。読んだからには…というわけで、感想を書きました。個人的なことも。ちょっとエッセイ風です。

”現実”がつらい

シリア内戦に関するドキュメンタリー番組を見ているあいだずっと、わたしは泣いていた。戦争や紛争、貧困のせいで、とくに弱い立場にある女性や子どもたちが迫害を受け、真っ先に命を落とす。映像は、その現実を克明に伝えていた。

番組を見終わってしばらく呆然としていた。我に返ったとき、何かできることはないかと考えて「プラン・インターナショナル」という国際NGOのサイトを見た。そこでもまた世界が抱える大きな問題を目の当たりにし、心を決めた。寄付をしよう。

登録を終え、サイト内の記事を読んでいるうちに、言いようのない不安と恐怖に襲われた。不平等と理不尽さは巨大な壁となって、わたしを圧倒する。少額寄付なんて砂に水を撒くようなものでは? 何の役にも立たないのでは? まっすぐこちらを見つめる着のみ着のままの子どもたちのイメージが、ウィンドウを閉じた後もまぶたを閉じた後も消えなかった。

父が教えてくれたこと

どうしても陰鬱な気分が晴れず、わたしは実家の父にメールを送った。以前、父のもとにユニセフの封筒が届いていたのを思い出したからだ。返信は翌日すぐにきた。

たしかに現代の世界の圧倒的な巨大な非人道性を前にして、我々は無力に近いだろう。

やっぱり。ため息がでた。
だが、次の行でそれが引っ込んだ。

しかし数千年の人間の文明の歴史は、今日の我々から見ればとんでもない絶望的な状況を我々の祖先の人間たちが克服してきて現在に至ってきたことを教えていないだろうか。

そうだ…そうだった。社会は進化し、医療もめざましく進歩してきたんだ。わたしは少し、前向きな気持ちを取り戻した。父のことばは続く。

その意味で言っても今現在我々はそういった人間の歴史の一つの舞台に立ち合っているんだ。
その舞台の成り行きにとって1000円寄付する1000万人が無意味であるはずはない。
日々の生活の豊かさが一番大事なことだ。そして余禄があって、その気があれば、人のために役立ててもらうことは理に適っている。

父のメールはいつもこんな調子なのだが、今回は背中を押してくれる優しさに胸が熱くなった。『ファクトフルネス』を読んだのは、まさにそんな時だった。

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自分の思い込みを知る

人がまばらな本屋で、ようやくこの本を手に取った。ビジネス書それもベストセラー。一番苦手で読まない類いの本だったが、発売当初のブームがいったん落ち着き、以前のこれ見よがしな雰囲気は薄らいだように思えたのだ(実際はコロナ禍で再ブームが来てました笑。参考:2020年9月1日(火)掲載「ファクトフルネス」 コロナ禍で人気のワケは)。つまらなかったらフリマアプリに出品すればいい。そう考えてレジに向かった。

杞憂だった。

面白いのだ。すばらしい翻訳のおかげで、内容はわかりやすく、読みやすい。中学生、高校生も読める。人間に備わる本能がどうしてもやってしまう「10の思い込み」について、データにもとづくファクトを示し、シンプルかつ事例豊富に説明してくれる。良書に出会った高揚感につつまれながら第2章にさしかかったとき、ハッと息をのんだ。

「なにひとつとして世界は良くなっていない」と考える人は、次第に「何をやっても無駄だ」と考えるようになり、世界を良くする施策に対しても否定的になってしまう。・・・<中略>・・・いま行われている施策が、確実に世界を良くしているにもかかわらずだ。

P88 ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっているという思い込み」

父のことばと重なった。わたしはドキュメンタリーやホームページが伝える恐ろしい現実だけを拾い上げ、世界は変わらない、よくならないと決めつけていた。これは「世界はどんどん悪くなっているという思い込み」だったのだ。

世界に希望はある

下の2つの文章を比べてほしい。

A 世界の5歳未満児の死亡数は2019年には過去最少となり、520万人に減少した。

B 世界では今も約6秒に1人、幼い子どもが5歳の誕生日を迎える前に亡くなっている
。

ユニセフホームページより抜粋

AもBも、実は、同じデータにもとづいた文章だ。Aは世界が確実によくなっている。一方、Bは世界にまだ課題があることをショッキングに伝えている。どちらを目にすることが多いだろう? 圧倒的にBだ。ユニセフを検索したことがある人ならわかると思うが、アルゴリズムのおかげでいったんページを離れても頻繁にBに出会う。

だが、忘れてはならないのはAのほうなのだ。2019年は5歳以下の子どもたちの死亡数がこれまでで一番少なかったということだ。これはユニセフのホームページで公表されていて、誰でもアクセスできる「ファクト」である。にも関わらず、多くの人が見過ごしてしまう。わたしのように。Bをくり返し見聞きして「世界はどんどん悪くなっている」と思い込んでいるからだ。

ユニセフをはじめとする数多くの人道支援や国連、各国の協力で、世界は毎年少しずつよくなっている。小学生や中学生の頃、ユニセフ募金を呼びかけたり、コンビニの募金箱にお釣りを入れたりしたことはないだろうか? よくやった、と自分で自分を褒めてあげてほしい。小さな積み重ねが、わたしたち一人ひとりの寄付の成果がはっきり出ているのだから。こうした進歩を正しく理解するべきだと『ファクトフルネス』は強調する。

もちろん、6秒に1人幼い子どもたちが亡くなる現実はどうかしてる。世界は依然として最悪だ。だが、一年ごとに亡くなる子どもたちの数を確実に減らしているのだから、0にできる未来は絶対にくる。これは夢じゃない。実現可能な希望なのだ。

そして、あなたも

もし、この感想文を読んでいて「だまされないぞ」「楽観的すぎる」と感じるのなら(ここが大事。感じるのはすでに思い込みが始まっている証拠だから)、この本はうってつけだ。世界の見方をアップデートし、自分がどんな思い込みをしているかを知るチャンスだ。それも2000円足らずで。大人になってからそんな機会はほとんどないことを考えると、かなりおトクだ。いや本を読む時間はないかな〜という人はTEDトークだけでも見よう(日本語字幕あり)。

秋が好きだ。

空気が澄んで世界が美しく見えるから。わたしはこの世界が美しい以上に、希望に満ちていると言いたい。だからできる範囲で未来のためになることを続けようと思う。この本を読んだらきっと、あなたも世界のために何かしたくなるはず。そう、たとえばTポイントでもできちゃうユニセフへの寄付とかね。

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