話題になった広告から考える、広告とSNSの可能性
いきなりなタイトルで失礼しました、シノです。2020年も残すところあと半月。ほんとにあっという間でしたね〜。人生で一番短く感じましたが、忘れられない年になりそうです。今回は「2020年に瞬間的に話題になった広告」を取り上げながら、これからの広告とSNSの関係を考えてみたいと思います。あ、パリピ孔明は無関係です。気になるけど。
だれも見ていない、の先
「広告なんてだれも見ていない」
広告の仕事をしている人間なら必ず耳にするフレーズです。仕事を始めた頃は、なぜモチベーションが下がることを自分たちで言うのか不思議でした。だって自虐ですよね、完全に。でもしばらくすると腑に落ちました。きびしい現実を直視することなしには、クリエイティブは生まれないんだと。興味があって自分から情報を取りに来てくれる人はいい。広告を見ない大多数の人をどう巻き込み、動かしていくのか? それがアイデアになるのです。
みんな見ている、SNS
広告を見ない人にアプローチできるプラットフォームがあります。そう、SNSです。SNSで戦略的に話題化を狙う広告もあれば、偶然見つけられて反響を呼ぶ広告もあります。いい反応が広がれば、企業のイメージアップになりダイレクトに商品の売上につながります。一方、やりすぎて企業のドヤ感が透けて見えてしまうと逆効果。さらに時代を見誤りステレオタイプな価値観を押し付けてしまうと炎上します。コピーライターはもちろん、クリエイティブに携わるなら「この広告(ことば)を出したらSNSではどんな反応が起きるか?」をきちんとイメージすることが必要です。
変化球だな?と思ったら〜、
まず、こちらのキャッチコピーを見てください。
駅構内に貼られているマナー広告の一つです。これは「歩きスマホをやめよう」というポスターのキャッチコピーですが、ちょっと変化球になっていますよね。単純に「歩きスマホをやめよう」と標語的に呼びかけても、だれも耳を貸してくれません。わかりきっていることをアナウンスしても、スルーされてしまうのです。
日本より思いきった広告が展開される海外では、こんなユニークな方法でスルーさせまいと工夫しています。
マナー広告は日本でも海外でも進化を続けていますが、広がりという意味では限定的です。しかし、先ほど例に出したキャッチコピーは、あることをきっかけに爆発的な認知を獲得しました。
直球でした〜。
それがこのツイート。
世紀の名ツッコミ「コウメ太夫構文」のおかげで、「脳内再生が余裕すぎる」「このポスターを見るたびに白塗りのオッサンが出てくるようになった」など瞬く間に好意的な反応が起こりました。SNSでポスターを初めて目にした人も多くいました。わたしも自分の趣味アカウントのほうに流れてきて、思わずスクロールの手を止めたほどです。
念のため補足すると、コウメ太夫(48)は『エンタの神様』でブレイクした芸人です。実際のネタはこちら。
…でもこのクオリティで(?)毎日ツイートしてるんですよ。継続はネタ力なり。すごいです。
「コウメ太夫構文」とツッコまれたマナー広告は、9000近いリツイート、約5万いいね(12月15日現在)です。通常マナー広告はこんなにバズりません。一日何万人といる駅の利用者でマナー広告のポスターに足を止める人はそういないのです。しかしSNSでは5万人弱が意識的に目を止め、言葉をじっくり読んだのでした。
チクショー!! いじりやすい!!
取り上げておいて申し訳ないのですが、担当したコピーライターが「コウメ太夫構文」を狙ってライティングしたのかは正直わかりません。少しは意識したかもしれませんね。打ち合わせの場で営業やクリエイティブディレクター、アートディレクターのだれかが「コウメ太夫っぽい」と口にした可能性もあるでしょう。逆説的ですが、この”微妙な感じ”が素晴らしいと思います。
今後、広告のクリエイティブはSNSでの反応を見越してつくることがますます重要になってきます。 拡散されればされるほど、個々のタイムラインに無料で(!)ポスターを貼り出すことができるのですから。思わずいじりたくなる仕掛けや、見た人がツッコミたくなる参加性のある広告が来年以降もっと増えていくでしょう。
”今”を見極めるには
2020年、あなたのタイムラインではどんな広告が話題になり、どんな反応がありましたか? コロナ禍で人と集まるのが難しい今、多くの人たちがスクランブルに交差するSNSから広告のあるべき姿も見えてきます。社会も価値観も変わり続けています。「いじりやすい」で広告が拡散される時代だから、ことば一つ、デザイン一つ、敏感でいたいもの。わたしもコピーライターとして、学び続けたいと思います。
文:シノ
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