見出し画像

クレープシュゼットの思い出

先日、一ヶ月ほど野菜室に転がっていた不知火(しらぬい)という柑橘を「クレープシュゼット」にしました。画像はありません。

以下、参考文献。表紙はクレープシュゼットのフランベ画像。


転がっていた不知火は、朝に食べようと皮を剥いたらカスカスになっていたのです。そういう、とてもそのままでは食べる気にならないオレンジ系の果物はクレープシュゼットにすると美味しくなりますよ。

食べる気にならない食材を持て余すとき、私は、食卓テーブルから下げた後、それをついキッチンに置きっぱなしにしてしまいます。保留にしてしまう。時々、そのままダメになってしまうまでそこにあったりして。それを密閉容器に入れ冷蔵庫に保管したとしても、忘れて腐ったりしてしまう。どっちにしても後で、とても嫌な気分になるのです。まず食べ物がもったいないです。

それに、計画性がないというより機転が効かないとか、優柔不断とか。腐るまで放置してから捨てるとか、そういうのがダメだとずっと思っているのです。だからといって、今回もそのカスカス不知火を食べたくはない。それで、どうしたらいいのかすぐ決めないと!と自分を追い込んでみました。

無駄になりそうなもの
人が捨てるようなもの
いらないと思ったもの

それらをフードロスを無くすというより、工夫で最高のものに変えたいですね。食物がもつ賞味期限のなだらかな坂道が廃棄物につながるまでのあいだに、いくつも最高のものへ変わる路地へつづく交差点がある。フレッシュすぎてもったいないけどカスカスなら砂糖で煮ちゃってもいいね、ちょうどいいかもみたいな選択です。

それで。
具体的に、カスカスの不知火を、二日間ほどキッチンに裸で置きっぱなしにしながら、ずっと考えていました。もう少しで腐る、汚れる、カビが生える。どうしよう?

ひらめいて「クレープシュゼット」に変身させるっていうのはどうかな?と。すっかり忘れていたけれど、よく食べてさせてもらってました。

クレープシュゼットとは、本来はグランマルニエ(オレンジリキュール)、なければコアントローかブランデーかアルコール度数の高い(40度前後)お菓子むきなものを、クレープの入ったプライパンにシャーっと入れて引火させるフランベをするのが特徴の、オレンジ風味ソースのデザートです。

それを、学生の頃に恋人が家に遊びにきたとき、食後に母が甘いデザートがないわねと言ってぱぱっと作ってくれたことがあります。

そのとき彼は、母のアツアツ自家製クレープシュゼットを食べて、その味に驚いて「君、これいつも食べているの?」って言っていました。いつもじゃないけど、よく食べていました。彼は母からレシピと作り方を聞いて帰り、後に何かの集まりで自ら作ってくれて、友人にも振る舞っていました。練習はしたのかも。美味しかったです。

後に、その彼に有名なホテルのレストランに連れて行かれて「頼んだら?」と言われ、初めて外食でシェフのクレープシュゼットを食べました。「君のお母さんの作ってくれたものの方が美味しいよね?」と言われ、初めてその価値を知ったという出来事があったなと思い出しました。

子供時代は、外食をあまりしませんでした。ホテルでクレープシュゼットなんて、まずありえない! 母に連れられ帰省で新幹線に乗っているような時代はジュース類NG。100%果汁の甘さしかNG。そういう乗車中の買い食いは、有名な駅での寝台車中でうどんくらい。窓から買うやつです。だいたい当時の車内販売サンドイッチは貧相で、それを買う羽目になると、母は目の敵みたいに文句を言ってました。原価計算とか栄養価計算をしていたのだと思います。いま似た感じのハムサンドを食べると懐かしいですけれど。とにかくお家ご飯がおいしかったです。

それで、カスカスの不知火なんですが。
結局、クレープシュゼットならぬパンケーキシュゼットにしました。作り方は簡単です。カスカスの柑橘類を持て余したら、ぜひ作ってみてください。分量は適当です。

1.フライパンにバターをたっぷり入れて溶けたら砂糖を入れる
2.少し煮詰まったら柑橘類をほぐして入れ、ほどほどに煮る
3.最後に、コアントローかブランデーかを入れフランベ

調理時間は5分くらいに感じました。材料さえあれば、あっという間。私は不知火を房ごとごろんと入れ姿煮風にしました。少し形が残ってても、カスカスよりはジューシーになるので、それで充分という感じです。

家にリキュールもコアントローもなくて、少しだけ残っていたブランデーを入れました。あったあった見つけた〜とシンク下から取り出し急いでフライパンにシャーっと入れた後、はっと気づいてゾワワワワワァ。大事に飲みすぎて、はたまた、すっかりノンアルコールな日々で忘れていたけれど、それは(私にとっての)高級ウィスキーでした。このウィスキーは、味がブランデーみたいなんです。

ま、これのおかげで不知火シュゼットも美味しく出来上がりました。

たぶん、シュゼットの肝はアルコールです。正式にグランマルニエ(オレンジリキュール)を使うか、いいコアントローやブランデー、ウィスキーを使うと風味が最高に出来上がります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?