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自粛をしない彼らがいたから私はご飯を食べられていた
こちらの記事は秋さん主催の #2020年5月の創作 コンテストに応募するために再投稿したエッセイです。執筆日は4/8(水)。緊急事態宣言が発令された翌日に執筆したものになります。
「また1ヶ月後!みんな元気でね!」
同僚と別れの言葉を交わし、私は職場を後にした。
昨日、私が働いているキッチンウェアの店舗が1ヶ月休業することになった。言わずもがな、その理由はコロナによる緊急事態宣言。もうそろそろ休業するんだろうな〜と予想はしていたけれど、やっぱり休業が決まるとももどかしい気持ちになる。
ここ数週間、私は葛藤していた。
「外出を自粛しなさい」と政府や医療関係者が注意喚起する中、めげずに来店するお客を何千人も見てきた。お出かけが大好きなのは私も同じ。家にいなさいと言われてもその通りにできない気持ちは分からなくもない。分からなくもないのだが、わざわざこの時期に来店しなくてもいいじゃん・・・とも思ってしまう。
マスクすらせずに「かわいい〜!!」「え、これ欲し〜♩」と買い物を楽しむ彼らを見て、軽蔑しなかったと言えば嘘になる。
ただ、自粛をしない彼らに心のどこかで共感しつつ怒りを抱えて働いたこの数週間、なんだかんだ幸せだったのかもしれない。
掛け持ちしているライターの仕事や親善大使の仕事がひとつ、またひとつとなくなっていく中で、唯一最後まで残り続けた収入源がキッチンウェアの販売職だった。自粛をしないお客に対する不満、そしてコロナに感染してしまう不安と引き換えに、私は「生活を支えてくれる仕事」という大きな安心を貰っていたのだ。
それに気づいたのが昨日。
政府が緊急事態宣言を出してから、私が働く店舗は即座に1ヶ月の休館を決定した。つまり、この1ヶ月間は無職になる。タイミング悪く、今月から雇用形態を社員からパートに切り替えたため、おそらく私は無収入だろう。ライターの仕事を増やすためにパートにしたというのに、肝心のライターの仕事も(取材ができないため)ほとんどなくなり、全く意味を成さない。むしろ保証の面ではマイナスになる。
命よりも大切なものはない、そんなの分かっている。でも、収入がないのはかなりしんどい。
そして、皮肉にも軽蔑していたお客たちに感謝してしまった。彼らがいなかったら、お店はもっと早くから休業していたかもしれない。政府が何を言おうと、緊急事態宣言が出るまで頑なに営業し続けたのは、利益が出ていたから。その利益を生み出していたのは紛れもなく自粛をしなかったお客たちなのだ。
果たして何が正解なのかは分からない。
お金をとるか、命の安全をとるか。そんなの命の安全に決まっているかもしれないが、貧乏な私はお金がないと生きられない。命を存続させるためにはお金が必要。私にはお金も命の安全も、どちらも大切。だからこそもどかしい。
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