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放送委員会

僕が中学2年生の時、1年生のその子は放送員会に入ってきた。
ポニーテールの黒髪が綺麗な、どこか品のある子だった。

僕は毎日放送室で給食を食べ、放課後も教室の掃除が面倒なので放送室の掃除を嘘をついては、常に放送室に入り浸っていた。
そして、その子も暇なのかわからないけど、頻繁に放送室にきていた。

気さくな子で僕はその子とすぐに打ち解けた。
時には先輩が放送室でアナウンスしている最中、僕とその子は後ろから先輩の頭めがけて空の牛乳パックを投げつけるいたずらをしては二人で笑っていた。

その子の家にも遊びに行った。すごく立派な家だった。少し緊張した。

恋バナもした。
どうやら僕と同じクラスの阿部くんが好きらしい。
サッカー部のエースでユーモアもある、クラスの人気者だった。
僕は阿部くんのクラスの様子などをその子に教えてあげた。

先輩は優しいね、と言われた。
僕は一生懸命、その子に気のないふりをした。
その子との何気ない放送室での日々が何より大切だったから。

そして僕は卒業式を迎えた。
体育館の奥で放送設備を操作し終えたその子がいた。

楽しかった放送委員会でのあの子との時間も今日で最後なのだ。僕は気持ちを伝えるかどうか迷っていた。
卒業式が終わった後、その子に歩み寄り、そして言った


放送委員会のこと、よろしく頼むな

その子は笑顔でうなずいた


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