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学区

僕は決意した
明日、小学校の学区の外に遊びに行くことを

親と一緒でなければ学区の外へ出ることは校則で禁止されている
もし学区外に行ったことがバレたら先生に怒られるだろう

バレないためにはルート選択が重要だ
道路を普通に歩いていたら誰かに見られるかもしれない

なので国道沿いにある鉄工場の裏道から学区を抜け、その先の街中を流れる川のところへ行く
そして川を下流に向けて歩みを進め海にでる
完璧な計画だ

翌日、予定通り計画を実行に移す
僕は鉄工場の裏道を進み、いよいよ学区の境にきた
僕は立ち止まり、周りを見回した。誰もいない

「ばれない、ぜったい だいじょうぶ」

そう自分に言い聞かせ、学区を超えた

ついにやってしまった
超えてしまった以上は行くしかない
誰かに見られないよう 全力で気配を消して歩みを進める

そして ついに川に到着した
裏道の距離は100mもなかったが、緊張で僕はすでにクタクタだった

そしてここからは川沿いを歩く計画だ
ここから先は親とも行ったことがない未知の領域
もしかしたら、迷子になっちゃうかもしれない、そんな不安が頭をよぎった

でも行くと決めた
意を決して川沿いをドキドキしながら歩き始めた

街中を流れる川は決して綺麗とは言えなかったが、流れを見ていると少しだけ安心した
それからどのくらい歩いただろうか、まだ海へは辿り着かない

少しづつ日が暮れてきたことで、これまでの不安が一斉に押し寄せて来た
先生にばれる心配、迷子への恐怖、そして門限に間に合わないとお母さんにも怒られる

僕は怖くなりこれまで来た道を脇目も振らずに駆け戻った
そしてなんとか陽が沈まないうちに学区に戻ってきた
学区にもどった時、言い表せないほどの安堵感に包まれていた

こうして僕の命がけの冒険は幕を閉じた

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「遊びに行ってくる」

学校から帰ってきた息子に声をかける

「あまり遠くへ行くなよ」

自分の事を棚に上げ私は言った


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