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若手が考える監査法人のメリット その1(テクニカルスキル編)

今回初めてnoteを書きます。テーマは「若手会計士が考える監査法人のメリット その1(テクニカルスキル編)」です。

自己紹介と留意点
私は2021年までBig4の監査法人に勤めていた会計士です。金商法・会社法の現場責任者(主査、インチャージ)を務めていました(監査法人では大体シニアと呼ばれる職階の経験者だと思ってください)。

また、個人的な経験をもとに考えをまとめたものですので、パートナー、マネージャークラスになるとまた違ったお考えが出てくるものと思います。最新の現場感を基礎とした考えである一方、シニアクラスの視座の高さになるという優劣を前提に読み進めていただければ幸いです。

【担当した会社の規模】
担当していた上場会社の時価総額は数百億円で、期末監査時には最大で現場責任者以下3−7人のチーム規模になっていました(最大瞬間風速ではありますが、さまざまな要因が絡み合いチーム規模が拡大しました。なお時価総額とチーム規模は比例しませんので、あくまで参考程度として捉えてください)。非上場会社の現場責任者も担当していましたが、ここでは割愛します。

【関連する記事】
・若手会計士が考える監査法人のメリット その2(ポータブルスキル編)
https://note.com/yoneyone_cpacpa/n/nbf85d748e175
   1.プロジェクトマネジメント経験
   2.逆向きのコミュニケーション経験
   3.目上の方とのコミュニケーション機会
   4.海外駐在の機会

・若手会計士が考える監査法人のメリット その3(働き方・雰囲気など)
https://note.com/yoneyone_cpacpa/n/n75fb569d4ecb
1.ワークライフバランスを取りやすい
2.組織の言いなりになりにくい、風通しがいい


【テクニカルスキル】

1.バックオフィス周りの知見を得られる

 経理部を中心に経営企画部や財務部、人事部の方々と定期的にコミュニケーションを取る機会がありました。当然ですが、それぞれの部門がそれぞれ違う理論で業務にあたっていますので、自分自身の課題(知識面、コミュニケーション面)を感じることや、勉強になる部分が多くありました。

PJベースでクライアントに関与するコンサルティング会社と比較してみても、ベストプラクティスが知見として積み上がるペース・質は優位性を持つと思われます。それは下記二点の特徴があるためです。
(1)監査法人は業務が会社に関係なく決まっており、他社比較が容易なこと(2)監査契約は基本的に継続することから、特定の会社に継続関与することで万遍なく知見が積みあがりやすいこと

実利として、(上場会社などの)理想とされる会社の内部統制・各種資料のベストプラクティスが積み上がることが挙げられると思います。これは監査業務に携わる中でも重要な知見ですし、事業会社やその他プロフェッショナルファームに在籍するうえでも期待される点かと思います。


2.現場レベルの会計知識を得られる

「1.バックオフィス周りの知見を得られる」に含まれる内容ですが、「特に」メリットとなることから、別項目として列挙しました。

仕訳がどう切られているか、日常・非日常的に発生する会計事象をどのように仕訳に落とし込んでいるのか、どの程度の粒度で仕訳計上を行うかなどの現場感覚を養えるのは、監査法人特有の点に思います。特に会計・税務リスクや運用の手間などを含めて、経理の方がどういった部分に神経を張り巡らせて仕訳を起票しているかの肌感覚を知ることができる点で優位性があると考えています。

具体的なメリットとしては、会計事務所を開業しやすいという点が挙げられるでしょうか。監査法人出身の会計士が会計事務所を立ち上げる場合、税務顧問や会計顧問を収益基盤にするケースが多く見られますので、現場レベルの会計・税務に関する知見が積み上がっていくのは一つのメリットかと思います。


3.監査というニッチな業務を経験できる

監査業務の経験自体をメリットと捉える考え方です。そもそも監査業務を実施する人間が、何を考え何を実施しているのかは一般には馴染みがないと理解すべきようです。

公認会計士は合格者を含めると全国に約4万人存在しています。監査法人では周りが会計士ばかりで感覚が麻痺しますが、日本の労働人口(約6,868万人。2020年)と比べると、監査実務を知っているのは非常に少ない割合ですので、監査実務の経験はそのまま価値につながりやすいと考えられます(ここでは経理部の方々など、監査を受ける側の経験者の方々のことは考慮しておりません。)。

具体的なメリットとしては、監査経験者という点で組織内外のポジショニングがしやすくなる点が挙げられます。例えばIPOを目指すベンチャー企業において、ファイナンスの知識に長けた金融機関出身のCFOがいたとしても、監査対応や管理体制の構築については、監査経験者が責任者としてポジショニングしやすいと考えられます。社外関係者である監査法人に対しても、コミュニケーションコストが低く済むという意味でポジショニングがしやすいと考えられます。


おわりに

なるべく生きた内容となるよう具体的な経験を交えて記載したつもりですが、いかがでしょうか。

列挙した中で最も意外だったのは、「3.監査業務というニッチな業務を経験できる」ですね。監査法人のメリットをまとめるにあたり、周りの方々に聞いて回った中では比較的挙げられるポイントでした。監査法人の中にいるとどうしても見えづらくなってしまいますが、自分自身のことを客観的にみて見るのも大事だな〜と思いました。

日本語の運用能力や内容に関するご指摘やご質問があればじゃんじゃんご連絡いただければと思います。では。

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