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若手が考える監査法人のメリット その2(ポータブルスキル編)

今回のテーマは「若手会計士が考える監査法人のメリット その2(ポータブルスキル編)」です。

自己紹介
私は2021年までBig4の監査法人に勤めていた会計士です。金商法・会社法の現場責任者(主査、インチャージ)を務めていました(監査法人では大体シニアと呼ばれる職階の経験者だと思ってください)。

担当していた会社の前提や、留意事項についてはその1をご覧ください。


関連する記事
・若手会計士が考える監査法人のメリット その1(テクニカルスキル編)
https://note.com/yoneyone_cpacpa/n/ndd81e511ea6a

・若手会計士が考える監査法人のメリット その3(働き方・雰囲気編)
https://note.com/yoneyone_cpacpa/n/n75fb569d4ecb
1.ワークライフバランスを取りやすい
2.組織の言いなりになりにくい、風通しがいい

【ポータブルスキル】

1.プロジェクトマネジメント経験

大層な言葉ではありますが、入社して2−4年という業務年数でPJマネジメントの経験をできるのは大きなメリットです。

プロマネ経験が具体的にどのようなスキルを伸ばすことに繋がるのかという点についてはさまざまな考えがあると思いますが、ここでは(1)俯瞰力、(2)社内外のコミュニケーション力の二つを挙げたいと思います。

(1)俯瞰力のポイントは、目的思考で一部に集中しすぎない、時間軸を長くとる、考慮対象者を増やす、の3点にあると考えています。

スタッフとして働く分には与えられたタスクのみに集中し、時間内に一定の品質の作業をすれば高評価がもらえていましたが、現場責任者ともなれば、細かなタスクに集中した瞬間に破綻が訪れます。破綻を避けるにはそれぞれのタスクの目的を意識し、その目的に立脚した指示や方針を示すことが重要です。その指示や方針は、短期的な視点から中長期的な視点へ拡大すること、考慮対象者をより拡大させることに留意しながら進める必要があると考えています。

一人のスタッフから現場責任者へとポジションが変わることで、上記のような思考の切り替えと視点の拡大を行う必要がありました。現場責任者になる前は、現場責任者の大変さに疑念を抱いていましたが、実際にやってみると難しさを実感しました。

(2)社内外のコミュニケーションのうち、社内という意味では、パートナーや審査担当者への説明及びチームメンバーとの円滑なコミュニケーション環境の構築の役割を果たし、社外という意味では、現場責任者として監査クライアントとのコミュニケーションの矢面に立つ(例えば各種質問対応や計画説明・結果報告会での発言など)必要があります。

個人的には、パートナーとの会議でファシリテーションに難があることを突きつけられたり、クライアントへの会計処理の説明に際し中々ご納得いただけず自身の説明力に課題を感じたりと非常に学びの多い経験となりました。

また、チームメンバーとのコミュニケーションの観点からは、各スタッフの性格・能力・関係性に応じてコミュニケーション頻度及び内容を調整する必要があります。というのも、現場責任者はいかにチームメンバーから情報を吸い上げることができるかの勝負になってきます。その際、各チームメンバーがどの程度の経験及び能力を持ち、どういった性格なのかに留意し、それらに応じてコミュニケーション内容・頻度を柔軟に変化させなければ情報を適切に収集できず、結果として適切なチーム運営を行うことができなくなってしまうためです。

生来からそうしたスキルに長けた方であれば大きな問題にはならないかもしれません。私自身は特段そうしたスキルに長けていたわけではありませんでしたので、色々と失敗を繰り返しつつ学んでいきました。例えば現場責任者は常に上機嫌でいなければならないということや、チームメンバーからは意外と怖がられる存在であるということです。比較的若くしてそうした前提を認識できたことはチーム運営を担う際の今後の大きな財産になりそうです。


2.逆向きのコミュニケーション経験

報酬をもらいながら、顧客の業務内容のチェックを行う(批判的機能の発揮)というのは、法律の要請がある監査業務の大きな特徴です。

当然ながら、批判的機能は必ずしも監査クライアントに喜ばれるものではありません。例えば減損を回避したいクライアントの説得や、形式的な文書化のために会社に新たな資料を準備してもらうことなど、監査証明を出すための業務は膨大に存在します。そうした、必ずしもお客さんだけを見ていればいいわけではないコミュニケーションのことを「逆向きのコミュニケーション」と表現しています。
 
逆向きのコミュニケーション下では、目の前のお客さんに嫌がられる・迷惑をかけることを理解した上で、コミュニケーションを取って信頼関係を構築する必要があります。時に鈍感力を発揮したり、時に知ったかぶりをし、時に素直に教えを請うてみたり…。さまざまなコミュニケーションを駆使し、信頼を勝ち取っていく過程で身につくコミュニケーション能力は貴重な財産になると思います。
 

3.目上の方とのコミュニケーション機会

会社の規模・フェーズによりますが、監査法人では目上の方とのコミュニケーション機会に恵まれています。

私は上場会社のCFOや経理部長と頻繁にコミュニケーションを取る機会がありました。正直、20−30歳年上の役員の方とコミュニケーションをとること自体が恐れ多かったのですが、少しでもそうした方が見られている景色を感じることができたのは大きな財産です。考えの甘さをご指摘いただくことも多かったので、学びの多いコミュニケーションでした。

また、上記経験を経たことで、10歳程度年上の方とコミュニケーションを取る際に、やや堂々とコミュニケーションを取ることができるようになるんですよね(人によって態度を変えたり差別したりしているつもりはないのですが)。

私のような凡人が、優秀な方の視座に少しでも触れられるというのは非常に貴重な機会だったと思います。

4.海外駐在の機会

海外駐在には英語というテクニカルスキルと、異文化対応力というポータブルスキルとがあると思いますが、メリットが大きいのはポータブルスキルの方と考え、ポータブルスキルのメリットとして記載しました。

私がいた監査法人では、早い人だと入社から4年程度で海外駐在(2年)となります。海外駐在在先での役割や駐在年数は監査法人や派遣制度ごとに異なりますので、詳細は所属の監査法人や知人に聞いてみてください。

なお、海外駐在は一般的に職階(日本でのシニア→海外でのスタッフ、とか)を一つ下げての着任となるようです。私自身は海外駐在の経験がありませんので、詳細なメリットは実際に駐在経験のある先輩方にお譲りしようと思います。


おわりに

やや長文になりました。なるべく生きた内容となるよう具体的な経験を交えて記載したつもりです。

列挙した中で最も大事にしたいメリットは、「5.逆向きのコミュニケーション経験」ですね。私は逆向きのコミュニケーション力を極められなかったので。。。

日本語の運用能力や内容に関するご指摘やご質問があればじゃんじゃんご連絡いただければと思います。では。

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