エモーション・ストーリーメイク・ゲーム『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』メイキング
エモーション・ストーリーメイク・ゲーム『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』を制作している。2024年秋のゲームマーケットで頒布開始する。
→取り置き予約。
やー、長くかかった。2018年にストーリーメイクなゲームを出そうと考えていたので少なくとも6年はかかっている。
考え始めたのはもっと前だ。
そもそも、「何らかのルールがあって物語を作っていく」ということに興味があった。
『フィアスコ』
『スケルトンズ』
『ダイアレクト』
などが与えてくれる体験にわくわくした。
もちろんTRPGもおもしろいのだが、マスターがいないタイプの自律性に興味があった。
思考キネマさんが紹介している「ジャーナリングRPG」も、ストーリーメイク的なゲームだろうということで興味を持つ。
ジャーナリングRPG初期の傑作といわれる『Quill: A Letter-Writing Roleplaying Game for a Single Player』(2016年のIndie RPG Awardsで「Best Free RPG」を獲得)を(英語を訳しながら)遊んでみた。
『Quill』は、一人用の手紙書きロールプレイングゲームだ。
キャラクターを選んで、状況設定が決められ、その中で手紙を執筆するソロゲーム。たとえば、国王に暗殺の計画が存在することを知らせる手紙を書いたりする。
手紙は5パラグラフで、1パラグラフにつきInk Pod欄のワードを1つ使う必要がある。しかも成功判定をして失敗するとダメワードを使わないといけなくなる。
って感じで書いた手紙にポイントがついて、4段階のマルチな結末が待ち受けるのだ。
「ジャーナリングRPG」は、だいたいソロゲームだ。日記だったり、記録をつけていくタイプなので、みんなが集まってやりとりするよりも、ひとりで静かに遊ぶタイプのゲームが多い。
それがとても面白かった。儀式にも近い感覚があった。
以前作った『荒野へ The Game of Tarot』は、ソロゲームをいかにおもしろくするかという挑戦だった。キャッチコピーは「ゲーム✕占い✕タロット×儀式」だ。
『記憶交換ノ儀式』という儀式を作り、『儀式フェス』というイベントも開催した。
儀式制作の経験とストーリーメイクを融合しておもしろいことができないだろうかとあれこれ考え始めた。
また、いくつかのジャーナリングRPGを遊んでみると、これは『思考ツールとしてのタロット』でやってることと同じ仕組みだな、と気づく。
タロットの奥義は、自分の状況をふりかえりながら、複数枚の象徴的なカードを組み合わせてストーリーテリングすることにあるのだ。
思考キネマさんを招いて、ジャーナリングRPGの講義もしてもらった。
ぼくの悪いクセなのだが、何かを作ろうとするとき、あれこれ調べはじめると、もうどんどん調べて、調べて、調べすぎる。
そんなわけで、いつまでたっても、調べたり、考えたりするばかりで、作り上げられていなかった。
で。
デジタルハリウッド大学で「ゲームメカニクス」という授業をやっている。アナログゲームを遊ぶ授業だ。
そのなかの1コマで「ジャーナリングRPG」をプレイする回をやりたいと思って、あれこれどれをプレイするのがいいだろうと探していた。プレイ時間や説明や翻訳、権利の問題などを考えると、なかなかうまいのが見つからない。
もう、自分で作っちゃうか、ってことで作ったのが『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』だ。
「ジャーナリングRPGをまったく知らない人でも、説明も含めて30分ぐらいで遊べること」「物語を生み出す楽しさを実感してもらうこと」を達成目標に制作した。
一週間ぐらいで作った。
で、授業でやると、これが予想以上に好評だった。
授業が終わった後に「いままでやったゲームで一番おもしろかった!」と興奮ぎみに言いにきた学生がいるぐらいだ。
「先週やったドミニオンよりもおもしろかった?」と聞くと「いや、ぜんぜん違うタイプだから比べられないけど、ぼくはこっちのほうが好きです」と言う。
「続編はないんですか?」とまだまだやりたそうだ。
勝ち負けもなくストーリーを作り出すゲームだということでハードルが高いと思っていたのだが、そんなこともなくほとんどの学生に好評だった(30人中1人だけが「何がおもしろいのか分からなかった」と書いていた)。
これに気をよくして、バージョンアップ版『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』を作成。何度もプレイテストして、ブラッシュアップしていった。
やー、おもしろくなってきた。ゲームマーケットに出そう決めた。
やはり必要に迫られて、締め切りがあると強い。
というわけで、構想6年のエモーション・ストーリーメイクゲーム『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』、おもしろいものになったので、ぜひ遊んでください。
構想6年と書いたが、思い出してみるともっと昔からだ。
2016年4月16日、池袋コミュニティカレッジで「米光一成のゲームづくり道場」をはじめた。
シーズン1、シーズン2あたりまでは、ゲーム制作を軸にやっていたが、どんどん内容がシフトしていって、即興劇的なことをやったり、物語を即興で作ったりするワークショップをやった。
そのころから、ストーリーメイクする面白さにとりつかれていたのだ。
たとえば、どういうことをやっていたか。
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