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名言(創作漫才)


A:名言を言いたい。
 
B:あんまり自分で名言っていうものではないと思いますけど。

A:憧れるでしょ、名言。

B:確かに名言はすごいなとは思いますけど。

A:無理かー。相方には無理かー。薄いことしか言わないですもんね。

B:失礼な。

A:とにかく私は名言が言いたいんです。

B:例えばどんな?

A:諦めたらそこで試合終了ですよ。

B:スラムダンクの安西先生のセリフですね。確かにスラムダンクを知らない人でも聞いたことがある名言ですね。

A:生殺与奪の権を他人に握らせるな!

B:鬼滅の刃の冨岡義勇のセリフですね。

A:そんな感じの言いたい。

B:名言って、言葉も大事ですけど、状況とか心情に合ってないと、名言にはならないと思うんですけどね〜。

A:じゃ、今から喋ることの何が名言になるか分からないから、全部メモっておいてくださいよ。

B:面倒臭いこと言いますね。
 
A:哲学者のソクラテスも自分では何も残してなかったけど、弟子が書き残してるから、名言として残ってますよね?

B:誰が弟子ですか。

A:だ・か・ら・

B:だ・か・ら・ってなんですか。
 
A:書き留めておくのがあなたの仕事です。

B:そんな仕事についた覚えはないんですけども。

A:いや、まじで。コ・ウ・ノ・ト・リ。

B:コウノトリ?このとおりってこと?

A:今の!渾身のボケ!書き留めて、書き留めて!

B:自分で渾身のボケって言ってるけど、面白くないですし、名言になるわけないでしょ。
コウノトリって言われても、ポカーンですよ。

A:だめか〜。そもそもネタにしてる時点で自分で書き残しちゃってるんだよな〜。

B:それは言わなくていいです。漫才は初めて喋ってる、聞いてる風にやるんですよ。

A:それも言ってはだめなのでは?

B:確かに。

A:あ、確かに、って思ったならこれが名言じゃない?!

B:確かにとは思ったけど、名言ではないですよね。

A:確かに。あ、また名言?!

B:いやいや、このままでは確かにって言えることが全部名言になってしまいますよ。

A:確かに。

B:この世の中には名言が溢れてるんですね。

A:あ、今の名言っぽい。私が言いたかったのに!

B:名言ってこういうものでしたっけ?





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