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圧巻のコロン劇場ピアソラ・フェスティバル


ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座に並ぶ世界三大劇場の一つとされる、ブエノスアイレスのコロン劇場(Teatro Colón)で、3月5日から3月20日までアストル・ピアソラ生誕100年のフェスティバルが開催されています。

期間中は10数回に及ぶコンサートが開催されますが、なんとYouTubeで無料でライブ配信&アーカイブ視聴ができるようになっています。(しかも高音質・高画質!)アーカイブ視聴の期間などは不明ですが、ピアソラ生誕100年にふさわしい圧巻のラインナップ。
ピアソラが好きな方なら見逃す手はありません。

コロン劇場のアストル・ピアソラ

コロン劇場とピアソラは一種の因縁があります。
若き日のピアソラは斬新なアイデアを取り入れた実験的なタンゴをすでに発表し始めていましたが、当時の聴衆や同業者の一部はそんな彼に「そんな音楽をやりたいならコロン劇場でやれ!」と罵声を浴びせました。また逆にピアソラのクラシック作品がオーケストラで演奏されたときは「あなたはタンゴをやってるピアソラとは別人ですよね?」と言われてしまう始末。40年代や50年代はいまだ「知的で文化的なクラシック音楽」と「大衆音楽のタンゴ」との間に明確な序列や線引きがあり、そんなクラシック音楽の象徴がコロン劇場だったのです。

ピアソラの50年にわたる活動はタンゴの真価を世に知らしめる活動だったといえるでしょう。それが結実した証のひとつが1983年のコロン劇場でのリサイタル。その時でさえ、ピアソラのエージェントはコロン劇場側を説得するのに苦労したそうですが、結果は「劇場の天井が崩れるかと思うほどの」拍手喝采でした。それから40年あまりの月日が流れ、タンゴはアルゼンチンを代表する文化として世界中で再評価されていきました。

今回のコロン劇場のピアソラ・フェスティバルは単に「クラシック音楽の殿堂で演奏されるピアソラ」というものではなく、多くのタンゴの演奏家が加わり、初期の作品やタンゴの編曲、めったに演奏されない作品やピアソラの演奏スタイルの再現など多角的にピアソラを取り上げています。
そこからは巨匠ピアソラの神髄を世界に発信しようという意気込みと、83年のリサイタルを現代に再現しようとする出演者や制作者の熱気と興奮が感じ取れます。

これまでのアーカイブ

3月5日 PIAZZOLLA SINFÓNICO
最初に登場したのはテアトロ・コロン専属オーケストラ。バンドネオンのホセ・モサリーニ、ギターのセサル・アンヘレリをソリストに迎え、「AA印の悲しみ」「バンドネオンとギターのための協奏曲“リエージュに捧ぐ”」などを演奏しています。その他、ピアノのディエゴ・スキッシの五重奏団によるピアソラのオマージュ作品など。

3月6日 PROYECTO ELÉCTRICO PIAZZOLLA
バンドネオンのオラシオ・ロモがピアソラのエレクトリック8重奏団を再現。「リベルタンゴ」「孤独の歳月」、後半は特別ゲストのアメリータ・バルタールのボーカルで「ロコへのバラード」などを演奏。その他のゲストは歌手のパウラ・マフィア、サックスのYamile Burich。

3月7日 PIAZZOLLA ANTES DE PIAZZOLLA
ビクトル・ラバジェンが指揮するエスクエラ・デ・タンゴ・オルケスタ(タンゴ学校のオルケスタ)の演奏でピアソラによるタンゴの編曲や初期の作品を取り上げます。「バンドネオンの嘆き」「トド・コラソン」「現実との3分間」など。ゲスト歌手はカルロス・ロッシ。85歳になる大歌手スサーナ・リナルディが「わが死へのバラード」などを歌うのも聴きどころ。

3月9日 TRIUNFAL
アストル・ピアソラ財団が立ち上げたキンテート・アストル・ピアソラによる演奏で、「ミケランジェロ70」「天使の死」「エスクアロ」など王道の五重奏団の作品を取り上げます。

3月10日  LAS CUATRO ESTACIONES PORTEÑAS DE PIAZZOLLA
オラシオ・バランデラ(ピアノ)、ネストル・マルコーニ(バンドネオン)をソリストに迎え、バリローチェ室内楽団が「ブエノスアイレスの四季」などを演奏します。

3月11日 PIAZZOLLA PLAYS PIAZZOLLA CENTENARIO
ピアソラの孫でドラマーのダニエル”ピピ”ピアソラ率いるジャズ集団エスカランドラムの演奏。彼らの演奏をピアソラの100回目の誕生日に持ってくるというエモーショナルなセンス!
ゲストはチャンゴ・スパシウク(アコーディオン)と歌手のラウル・ラビエ、エレナ・ロジャー、ハイロ。

今後のコンサート

今後も以下のように注目の演目が続きます。マルコーニ、メデーロスなどピアソラの没後もタンゴを牽引してきた巨匠たちが多数参加しているのも見逃せません。
詳細はコロン劇場のWebsiteをぜひチェックしてみてください!

https://teatrocolon.org.ar/es/


3月12日 ASTOR PIAZZOLLA EN EL COLÓN 1983
・ブエノスアイレス交響楽団
・ダニエル・ビネリ(バンドネオン)
・コンフント9

3月13日 DANIEL BINELLI & CESAR ANGELERI
・ダニエル・ビネリ(バンドネオン)
・セサル・アンヘレリ(ギター)

3月14日 CONCIERTO DIDÁCTICO EL ESTILO DE PIAZZOLLA DEL '46
・オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ・エミリオ・バルカルセ
・ビクトル・ラバジェン(指揮)

3月16日 CONCIERTO
・フリオ・パネ(バンドネオン)
・レアンドロ・パネ(バンドネオン)
・ワルテル・リオス(バンドネオン)
・ヘスス・イダルゴ(ギターと歌)
・ファクンド・ラミレス四重奏団
・テレサ・パロディ(歌)

3月17日 CONCIERTO
・ロドルフォ・メデーロス(バンドネオン)
・ラ・グレラ五重奏団

3月18日 CONCIERTO
・パブロ・アグリ(バイオリン)
・オラシオ・ロモ(バンドネオン)
・フアン・カルロス・シリグリアーノ五重奏団
・オラシオ・マルビチーノ五重奏団

3月19日 CONCIERTO
・ネストル・マルコーニ(バンドネオン)
・TRÍO VAINIKOFF – TALLARITA - GALLARDO
・ニコラス・レデスマ四重奏団

3月20日 CONCIERTO
・カルロス・ブオノ(バンドネオン)
・アルド・サラレギ(ピアノ)
・ホセ・コランジェロ四重奏団
・スサーナ・リナルディ(歌)
・フアン・カルロス・クアッチ五重奏団





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