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タンゴ歌謡の魅力④~シルバンド
カトゥロ・カスティージョ、セバスティアン・ピアナ作曲、ホセ・ゴンサレス・カスティージョ作詞による1925年の作品。
タンゴは3分程度の短い時間の中で、濃厚で演劇的な世界が描かれる歌詞が多いですが、この「シルバンド」はその最たるもの。
「口笛を吹きながら」という意味の楽しげなタイトルとは裏腹に、巧みな情景描写とともに血なまぐさい悲劇が描き出されます。
バラカス・アル・スールのとある通り
夏のとある夜
空はますます青さを深め
イタリア船からはますます甘く歌声が流れてくる
暗がりの街灯の光で影がちらつく中
ハンサムな男が恋人に語りかける
ドックの向こうからバンドネオンの
悲しい歌がこだまのように聞こえる
空を横切る野良犬の吠える声
物思いにふけるやくざ者が
口笛を吹きながら歩いていく
このようなけだるさを感じさせるような夏の夜のひと時、しかし愛憎のもつれから惨劇が起こります。
一つの影が忍び寄り、ナイフがきらめき、悲鳴が上がり…!
……すべてが終わった後、ふたたびバンドネオンのもの悲しい音色が流れ、ミロンガの魂が自分の心を歌い上げている……といった内容の歌詞が続きます。
タンゴの歌は恋愛がらみのものが多いですが、ステレオタイプなラテンの甘ったるいイメージとは異なり、多分に毒を含んでいます。
過剰なまでに劇的で、どこか幻想的であったり皮肉に満ちていたりと一筋縄ではいかない所にタンゴ歌謡の魅力があります。
歌詞の内容を知った上で聴いてみると、作品の印象も大きく違ってくるでしょう。
大歌手カルロス・ガルデルがギター伴奏で歌っています。
ギターの音色と時おり挟まれる口笛が舞台となる下町の情景を思い起こさせます。
エドムンド・リベーロによる味わい深い歌声。
短いイントロからまるで物語の世界に引き込まれるようで、穏やかな夏の夜が惨劇に引き裂かれる様が歌われます。
もとのメロディが良いのでインストゥルメンタルとしてもよく演奏されます。
名手シロ・ペレスとビダル・ロハスによるギター・デュオで、モダンな雰囲気の心地よい演奏です。
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