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不定期企画「KOREAN ACTION LOVER」vol.7 「映画は映画だ」

「KOREAN ACTION LOVER」とは

韓国映画といえば、右手に過激、左手にタブーを持って、両の手を合わせて出来上がった劇薬の映画だから危険極まりない。中にはエンターテイメントに振って、ハリウッド映画のようにカラッと揚がったフライドチキンみたいに楽しいのもたくさんあるけど、それら全てに共通した面白さは「そこまでやるか!!!!」というところだと思う。そんな劇薬揃いの韓国映画の中でも今回はそのアクションのワンシーンだけを集めました。韓国映画においては相手を倒すのに容赦がない、と思っていたけどホントのところは、相手を倒すことを「リアルに描くこと」に容赦がない。敵の殺し方が爽快で過激でストレスも大嫌いなアイツもすべて消し飛ばしてくれる最高のアクションシーンをご紹介!

「映画は映画だ」

2008年 キム・ギドク監督(鰐、魚と寝る女、春夏秋冬そして春、弓、嘆きのピエタ 等)

【あらすじ】

 スタ(カン・ジファン)は人気俳優だが、アクションを演じることについ本気になりすぎてしまい、映画撮影の共演相手が次々と離れてしまう。そんな折、偶然会ったヤクザのガンぺ(=ソ・ジソブ)は過去に俳優志望だったが、二人はある約束を条件にその映画で共演することになる。その約束は、映画のエンディングアクションは二人のリアルファイトで終わること。ガンペが属するヤクザの中で問題も起こる中、映画は最後まで撮影できるのか、最後のアクションはどちらが勝つのか。

 キム・ギドク監督ってかなりのロングランナーで、昔からほんとに多彩な作品を世に送り出してるんですが、映画の幅がひろすぎてえぐいんですよね。春夏秋冬そして春、なんて美しい映像と人間の「駄目だよなぁ」って部分描いててめっちゃ好きなんですけど、一方で嘆きのピエタみたいに僕が韓国映画らしいと思ってしまう暴力性と生きるツラさみたいなのを描いた作品もあったり。で、本作みたいに映画を撮ってるところを映画にするってのは蒲田行進曲とかカメラを止めるな!とか嵐電とか思い浮かぶんですけど、描き方が難しいと思ってまして。ちなみに全部大好きで面白い映画なんですけど。映画は映画だ、は韓国映画でアクションが入っててやくざ映画でもあって、というミックスド感が塩梅よくてすごいなぁ。

【個人的採点】

総評    :94点 最後のシーンの演者のすごさに鳥肌

ストーリー :86点 設定・流れともに珍しく面白い

演出    :88点 映画を撮るシーンを映画として見せるこだわり

キャスト  :96点 全体的にいいけど、ソ・ジソブってば神懸ってる

アクション :78点 リアルファイトにこだわるものの、魅せるシーンが少な目

クレイジー度:90点 ファンタジーであり映画であり映画の裏側でもあるのにエンディングの奥にエンディングを作った監督の狂気を感じる

アクションテーマ

「映画の中の映画でのリアルファイトシーン」

敵     :素手 タイマン


こちらの武器:素手


爽快殺人指数:70点(100点)

  この映画はアクションシーンばかりやと思ってたけど、意外にラストのリアルファイト以外はアクション少な目。ラストシーンは干潟でのタイマン。足元は悪くて泥だらけになりながら約束通り台本なしでリアルファイトを行う。泥だらけの足元は二人の心許ない人生の足場を表しているし、その足元の悪い中でお互い自分のやり方で闘うしかないという表現に思わずニヤリ。闘っていく中で二人とも泥だらけになっていくことでガンペとスタはだんだんと見分けがつきにくくなるが、その点も二人が決して違い過ぎない同じ人間であることを意味していて、踏み込んでいえばヤクザも俳優も同じようなものだという監督の意思を強く感じる。もしかすると映画に携わる人間を劇中のヤクザと同じように、やるべきことと闘っていくしかない同種の人間だと伝えたかったのかも。膝を抱え込んでの後ろ投げは確かにここ干潟だけどホントに大丈夫!?って思うぐらい気持ちのいいアクション。

 ここまでがアクションのみに対する気持ちなんですが、この映画はそのアクションで飾るエンディングの奥のエンディングの破壊力が抜群。

 具体的なことは書きたくないんですが、「目で演じること」がここまで可能なのかというのが正直な感想で両役者ともに半端ない演技ではあるんですが、特にソ・ジソブのメンチは今までの目の演技で一番やばいかもしれない。僕の中では最後のシーンで何も語らない二人が目で会話する言葉が聞こえたような気がして鳥肌がたったんですが、ほかの人には聞こえたのだろうか。。気になるから是非映画をみて、その声が聞こえたか教えてくださいね。目で語るこのシーンは衝撃がありすぎて例外的に100点。
では、今回はここまで!

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