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理論物理学者を応援しよう!

今、東京で国際物理オリンピックという各国の高校生が物理の能力を競い合う大会が開催されているそうですね。数学オリンピックは有名だけれど、物理学にも大会があったのですね。日本での開催は初めてとのこと。

私は、時間とは何なのか、私たちが生きているこの世界は何なのか――そういった謎に今一番迫っているのが理論物理学者たちだと知ってから、量子論が理解できるようにと物理をちまちまと勉強していますが、なにせ亀の歩み、なかなか道遠しです。(進み具合をここに書いたら笑われそうなので書きません!)
やる気の維持のためにポピュラーサイエンスの本を読んだり、YouTubeの解説動画を見たりしています。ほんとに今はたくさんの独学応援サイトや動画があって、有難いです。

以前に『The Island of Knowledge - The Limits of Science and the Search for Meaning』というポピュラーサイエンス本を紹介したのですが、このオーディオブックを今でも繰り返し聴いていて、昨日、4周目を終えました。
著者はマルセロ・グライサーというアメリカのダートマス大学の教授をされているブラジル出身の物理学者です。

「とにかく計算して、導き出された結果を観測で証明する。なぜそうなのかは(当面は)考えるな」というのは、理論物理学者には珍しくない、というか奨励されている態度のようなのですが、彼はそこのところこそを追求したいと若い頃から思っていたんだそうです。
プランク定数がその値である理由は何なのか、相対性理論が成り立つそもそもの理由は何なのか ――人間が発見する宇宙の法則は人間の意識の構造と密接に関わっているのではないか。そういった、宇宙の在り方と人の意識の正体をつなげるような研究をしたいと。

本のタイトルにある「the island of knowledge」とは「知識の島」。
人類の知識を大海の小島に見立てると、知識が増えれば増えるほど島は大きくなります。しかし、同時に未知という海と接する浜辺は長くなります。また、はるか彼方に水平線は見えるけれど、そこが海の果てではないことも私たちは知っています。
それはつまり、知れば知るほど謎は増えるのだから、人類がすべてを知る日は永遠にやって来ないということ。でも、グライサーは、これは敗北宣言ではないと何度も繰り返します。
自分たちが自己を認識し、宇宙の謎解きに取り組める存在である奇跡を自覚したらいいじゃないか、と言うのです。あくまで前向きに、贈り物を受け取る謙虚さで。

宇宙や自然に対する畏怖のような気持ちを持ち続ける。…ちょっと自然信仰のような宗教っぽさを感じるかもしれません。グライサーが不可知論者(無神論者)でありながら宗教界のノーベル賞といわれるテンプルトン賞を2019年に受賞しているのも、何となく頷けます。

このテンプルトン賞を私は今まで聞いたこともなかったのですが、皆さん、ご存知ですか?
ジョン・テンプルトン卿という投資家・篤志家が「ノーベル賞はスピリチュアリティ―をないがしろにしている」と不満を感じて創設したもので、賞金額は変動するものの、とにかくノーベル賞の賞金額を上回るように決められるんだそうです。すごいライバル意識ですね!

1973年の第一回目の受賞者はマザー・テレサで、それから宗教家や聖職者が続くのですが、90年代ぐらいから物理学者がちらほら現れてきます。今の選考基準は「宇宙とは何か、そこに生きる人間とは何か、生きる意味とは何か、といった根源的な問いに科学的に取り組み、目覚ましい貢献をした人物」だそうで、物理学者と言っても、昔の自然哲学者のようなタイプの方が受賞しているようです。
歴代受賞者リストの中に、以前に読んだ本の著者を見つけてちょっとニンマリしました。ポール・デイヴィースという理論物理学者。読んだのは『The Origin of Life(生命の起源)』。この方もグライサーと一緒で不可知論者です。この本は、確か地球の最初の生命は火星から飛んできた隕石に付着していた微生物ではないかという話だったと記憶しています。知り合いに貸したまま行方不明になりました。

さて、冒頭の話に戻りますが、物理オリンピックの大事な目的の一つに未来を担う若者の物理学に対する興味関心と能力を高めるというのがあります。
じゃあ、私のような未来のない大人が勉強する意味ってあるんだろうか…とふと考えました。「自分が楽しいから」という理由だけでも別にかまわないのですが、何か社会に対するメリットもあれば尚良いなぁと思ったのです。
そこで思いつきました。

「宇宙論や物理学に親しむ一般人が増える」
     ↓
「基礎研究への助成に対する理解が広がる」&「子供世代へのポジティブな影響が見込める」


基礎研究への支援の減少は深刻と聞きます。
日本帰国時に買った『なぜ宇宙は存在するのか』(野村泰紀著/2022年 ブルーバックス)という本を読み始めたのですが、あとがきに政府等の公的機関からの基礎研究への支援が減少しつつあるので、良かったら寄付をお願いします、と募金ページ(カリフォルニア大学バークレー理論物理学センター)のアドレスが書かれていてちょっとびっくりしました。支援を募る本を初めて見たので。
日本の大学も募金窓口とかあるのでしょうか?

やっぱり紙の本はいいなぁ

そういうわけなので、時間や空間の謎、私たちの存在の正体を知りたい方は理論物理学者を応援しましょう!


ありがたくいただきます。