携帯電話が流行るまでの話。
学生の頃、様々なアルバイトをしてきました。
一番、学びが多かったものが、携帯電話を販売する仕事です。
時期的には、公衆電話からの二桁の番号の組み合わせにより、端末に文字情報が送れるポケベルというものが、女子高生の間で流行り始めた頃でした。
同じタイミングくらいに、
NTTパーソナルや、DDIポケットから、『PHS』というものが登場しました。
当時、福岡~大阪で遠距離恋愛をしていたこともあり、プライベートで使える電話が欲しくて、このPHSを購入したわけですが、その際に、携帯電話の仕事を紹介していただきました。
仕事を始めてから、模範となるために、すぐにPHSから携帯電話に乗り換えました。
「皆、自分専用の携帯電話を持ったほうが良い」
「絶対に、便利だ」
と確信を持っていたものの、周囲の反応は、イマイチでした。
「携帯電話?固定電話で十分でしょ。」
「公衆電話で間に合ってる。テレホンカードあるし。」
「え?値段高いよね?」
部活動の合間でも、携帯電話を広げようと頑張りました。
先輩:「何かアナウンス事項がある方?」
他の先輩:「はい、連盟委員からですが、今週、〇〇で・・・。」
ボク:「はい、携帯電話の仕事をしてるので、欲しい方は連絡ください。」
明らかに浮いてましたが、仕事なので頑張っていました。
部活が終わった後、
可愛らしい後輩の女の子が、ボクのところにやってきました。
期待するボク。
後輩の女の子:
「先輩、あのね、携帯電話なんて、重いし、高いし、ダサいし、バッテリーすぐに切れるし、誰も持ってないし、誰も使わないから、そんな仕事なんて辞めたほうが良いよ。」
なかなか上手く伝わりませんでした。
そもそもアルバイト先の事務所も、マンションの一室なので、
携帯電話が売れない理由付けや、言い訳をしようと思えば、いくらでもできます。
「だって、怪しい会社だしなー。」と。
そんなある日、
定期面談の際に担当の方と話をしました。
ボク:
「皆、携帯電話なんて必要がないと言ってるし、なかなか売れないんですよ。」
突然、横から割り込んでくる「東幹久」似のサーファー社長。
社長:
「君、向山くん、、、だっけ?」
「仕事っていうのは、目の前に壁があったら、壊しながら進むものなんだよ。」
「え、そんなこと言われても。」
と思わず心の中で言い訳しそうになりましたが、まずは再チャレンジすることにしました。
アプローチする人の数を増やしまくり、キャッシュバックする等、工夫をしながら売上げを増やしていき、結果、その会社で一番になりました。
機種にもよりますが、当時は、携帯電話を1台販売すると、会社から、最大1万円を頂いていました。
「この会社、1台につき1万円もバイト代を払ってたら、赤字なのでは?」
と、少し気にはなっていましたが、深く考えず、ひたすら販売し続けました。
そのうち、ポケベルからPHSへの乗り換えが加速して、さらには、PHSから携帯電話にメールを送れるようになってからは、携帯電話へと乗り換えする人が増えてきました。
一番、売り上げが多かった時期です。
ただし、終わりは、ある日、突然やってきました。
NECから、史上初の折りたたみ携帯電話が登場したからです。
「天使の羽携帯」というキャッチコピーで、一気に人気が爆発して、各代理店で新規登録の獲得合戦が始まりました。
人気の端末ほど、頂けるバイト代金も少なく、その結果、キャッシュバックする金額も少なくなりました。
部活や友人に声をかけても、
「ごめん、もう他の店で買っちゃった。」
という感じでした。
長年、頑張っていた携帯電話のアルバイトでしたが、こういう背景のもと、ボクの役割、存在価値はなくなっていきました。
携帯電話の仕事から得た教訓。
■流行り始めてからマーケットに参入すると、利益は少ない。
■先行して、マーケットに参入する際は、誤解されることもある。
■「仕事」とは、目の前の障害を乗り越えていくもの。
とくに、世の中に認知されていない事業を扱う場合には、注力するべき仕事は、やはり、ブランディングだと思います。
「天使の羽携帯」というキャッチコピーによって、すべての流れが一気に変わりました!
ブランディングありきで、マーケティング、プロモーションへとシフトしていくことの大切さを体感しました。
そして、10年経ってから、
フロー型とストック型の収入の区別を知りました。
「あの社長、めちゃくちゃ利益でてるだろうなー。」
「めちゃくちゃ、売ったしなー、ボク。」
当時は、自分のほうが正しいと思ってた時期なので、物事の本質を理解しようとすらしていなかったです。
ご縁を育み、学ばせていただきながら、本質を理解して仕事をすることは、とても大事なことですね。
向山雄治
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