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「くじらのぷうぷう」 はらまさかず・文  カワダミドリ・絵

 くじらのぷうぷうは、お母さんとはなれ、ひとりで暮らしはじめました。
 とっても寂しくて、いつも友達を探しながら海を泳いでいます。
 でも、みんな、ぷうぷうを見ると、にげていきます。ぷうぷうは子どもといっても、くじらですから、とっても大きいのです。
 ぷうぷうは、だんだん、海の深いところを泳ぐようになりました。
 そんなある日、ぷうぷうはやっと、お友達を見つけました。それは、暗い海で青く光る小さな男の子でした。
 「いっしょに遊ぼう」
 ぷうぷうはいいました。
 でも、男の子は何にも言いません。
 「ねえ」
 男の子はだまって、ぷうぷうを見つめるだけです。
 じつは、男の子はプラスチックのおもちゃなのでした。
 ぷうぷうには、男の子が、とっても悲しそうに見えました。それで、せっかくできた友達だけど、陸に返してやろうと思いました。
 ぷうぷうは、男の子をかかえると、陸に向かって泳いでいきました。

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 ぷうぷうが海から顔をあげると、砂浜に人がたくさんいました。
 ここなら、男の子をはなしても安心だと、ぷうぷうは思いました。
 
 「あっ、くじらだ」
 ぷうぷうをみつけて、人が集まってきました。
 ぷうぷうは、近くにいたおにいさんに男の子をわたしました。
 すると、おにいさんは、
 「プラスチックのおもちゃだ。くじらがプラスチックをもってきてくれたぞ」といいました。
 「なんだ、男の子じゃなかったんだ」
 ぷうぷうはがっかり。
 「だいじょうぶだよ。ぼくたちはね、海に捨てられたプラスチックをあつめて、新しものをつくってるんだ」
 おにいさんがそういって、プラスチックでできたお皿やコースターを見せてくれました。それは、きらきらとかがやいて、とってもきれいです。
 「うわあ」
 「きみの名前はなんていうの?」
 「ぼく、ぷうぷう。友達をさがしてるんだ。でも、どこにもいないの」
 「ここに、たくさんいるじゃないか」 
 ぷうぷうの目の前にはたくさんの人がいました。
 「友達になろう」
 「うん!」
 「ぼくらは月に一度、プラスチックをひろってるんだ」
 「じゃあ、ぼくも、またひろってくる」
 ぷうぷうはみんなと、楽しくおしゃべりしました。
 もう、かえる時間です。
 「じゃあ、またね!」
 「うん、またね!」
 ぷうぷうは、うれしくなりました。友達がたくさんできたからです。
 それだけでは、ありません。プラスチックをひろって持っていけば、あのきれいなものに生まれ変わるのかと思うと、ワクワクしてしかたがないのでした。
 ぷうぷうは青い海をおよぎながら、うふふふとわらいました。

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 くじらのぷうぷうは大かつやくです。
 海のふかいところや海の底をただよっているプラスチックをあつめ、海岸までもっていきます。
 「ぷうぷう、すごいぞ」
 ぷうぷうは、みんなにほめられ、にこにこしています。
 「そうだ、あのね」
 ぷうぷうは、きのう、泳ぎながら思いついたことを、おにいさんにいってみることにしました。
 「プラスチックでつくるコースターの形をね、男の子とか、くじらとかカメとかの形にしてほしいなって」
 「うん。それ、いいぞ!」
 おにいさんがいいました。

 おにいさんは、さっそく、男の子の形をしたコースターをつくってくれました。
 ぷうぷうは、青い男の子のコースターにほおずりしながら、
 「また、ともだちがふえた」
と、いいました。


カワダミドリさんによる「くじらのぷうぷう」の朗読です。 ↑

2018年の夏、鎌倉市由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられました。赤ちゃんの胃の中からは、プラスチックごみが発見されました。
海洋汚染は深刻化しています。海洋プラスチックごみ問題の解決の道をさぐるとともに、捨てられるプラスチックごみゼロを目指していきます!

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