「カワウソ坊やは病気です!」 木村研

 遠足の日、カワウソ坊やは、かぜをひいて学校をお休みをしてしまいました。
 お母さんが、
「おつかいに行ってくるね」
というと、
「いやだよ。ぼくも行く」
と、布団からはいだしてきました。
「だめよ。熱はさがったみたいだけど」
 お母さんは、紙コップをもってきて、
「寂しくなったら、紙コップに口をあてて、<おかあさん>って呼んでごらん」
といっておつかいに行ってしまいました。
 一人で寝ていると静かです。
 カワウソ坊やは寂しくなって、紙コップに向かって、「おかあさん」と呼んでみました。
すると、紙コップの中から、「どうしたの」と、お母さんの声が聞こえてきました。
「ほんとだ。よかった……」
 カワウソ坊やは、安心して目をとじました。

「ただいま。聞こえる?」
 カワウソ坊やは、お母さんの声で目をさましました。あわてて紙コップに耳をあてると、子どもの声がきこえてきました。
「元気になった?」「今、遠足の帰りだよ」
「おみやげ、みんなで作った花の首かざりだよ」「お母さんに渡しておくね」
 学校のお友だちです。
カワウソ坊やは、嬉しくなって、
「ありがとう。元気だよ」
と、いいました。
 子どもたちは、
「じゃあ、明日、学校でね」
「ばいばい」
と、帰って行きました。

(作者のことば)
一人でいると寂しいですね。そんな時に、糸電話を作って友だちとお話してみよう。糸電話の糸に、紙コップの糸を巻きつけるとか、糸をしばると、たくさんの友達とお話しできるよ。今、距離を取らなくてはいけないですから、こんな時に、糸電話を作ってみるのもいいですね。

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