No.2 「奇物見聞録」第6巻

お祖父様の隣に立つと、長方形の形をしたドア枠から石造りの倉庫が見えた。その中に入る。お祖父様はドアを閉めた。

「さて、どこに置いたかのう。おう、これじゃ。これじゃ」

と言ってお祖父様は古びた本を俺に渡した。ぱらっとページをめくってみる。ヴァール語で書かれていた。

「!?お祖父様!」

「そうじゃ。これは『奇物見聞録』の原本じゃ」

「これをどこで?」

「さあ。それは知らぬのぉ。これは第第受け継がれてきたものじゃからのぉ。誰が、いつ、どこで、どのようにしてこれを手に入れたかは知らぬが、これがパーシー自身が書き記したものであることは事実じゃ。鑑定の陣を描いてみよ」

「うん」

メイス語で呪文を唱え、魔法陣を描く。赤く陣が発光する。鑑定陣は「著者パール・パーシー、奇物見聞録、第6巻」と無機質な声で言った。

「第6巻・・・。」

「そうじゃ。これじゃよ。これが存在しないはずの『奇物見聞録』の第6巻。これ自体が奇物でもある。秘宝じゃよ」

魔剣の項目を見てみると確かにある。「『魔剣マケーン・ケルトロス・バレンタイン』アルーン地方の王族、キーン家に伝わる魔剣。この剣の名の由来は魔女マケーン・ケルトロス・バレンタインであるとされている。彼女は生前、恋多き女性として有名だったと伝えられているが、彼女は最期まで誰とも夫婦にならず、彼女を看取ったのは弟子のフィール・モル・カーナーであったそうだ。カーナーはバレンタインの遺言に従い、彼女の遺体からこの魔剣を造り、彼女の魂をこれに宿すことに成功する。だが、カーナーが結婚した後、彼女は急逝し魔剣は行方不明となった。これは400年前のことである。そして今、なぜ魔剣がキーン家にあるのか伝えるものは何もない。」

「魂が宿っている・・・?」

「そうじゃ。そういうことになる」

「でも、おかしな点が多すぎる。というか、そもそも、マケーン・ケルトロス・バレンタインってどんな魔女なんだ?」

お祖父様は本棚に手をかけた。

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