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選択の正しさについて 『TRIANGLE STRATEGY』

最近、私は私の生活環境を大きく変える決断をした。
迷いのある決断だったが、その選択をする勇気を与えてくれた作品があるので、ここで紹介したい。

先日『TRIANGLE STRATEGY(トライアングルストラテジー)』というゲームをクリアした。FFやドラクエシリーズでおなじみの、スクエアエニックスから発売されている戦略ゲームだ。
このゲームの重要なポイントは、「主人公たちの選択によってシナリオが変化する」ことだが、これについてなかなか考えさせられるものがあった。

このゲームのプレイヤーは物語が進むたびに、次に取る行動の選択を迫られる。
選択の内容は様々で、どの国に訪れるか、誰と行動を共にするかといった軽いものもあれば、友と領地のどちらを守るか、作戦における犠牲をどこまで許容するかといった、重大な決断を迫られるものもある。
その度にプレイヤーは己の信念、作中の言葉を借りるなら「倫理(moral)」か「恩恵(benefit)」か「自由(freedom)」に則った選択をしなければならない。
ただし、どのシナリオにも正解はなく、同じように、分岐するどのエンディングにも正解がない。すべての選択の結果に得るものがあり、失うものがある。
人命、国、未来、信念。それらを何度も天秤にかけて、葛藤の末に進んでいくのがこのゲームの醍醐味だ。

さて、そうした選択を繰り返すうちに、私をはじめ多くのプレイヤーが同じ疑問を抱くことになる。
つまり、「この選択は正しかったのか」という疑問だ。

「この選択で得た結果はこんなものだったのか」
「もっと別の未来があったのではないか」
「あの時別の道を選ぶべきだったのではないか」

これを考え出すと止まらない。正解なんてないとわかっているはずなのに、何かを間違えたのではないかという不安から逃れられない。やり直したい、何が最善だったのかを知りたいという衝動に駆られる。

そんな時、同じような疑問を口にした仲間たちに対して、主人公が次の言葉をかける。(以下の引用は私の記憶に頼ったもので、一言一句正確なものではない。シナリオの分岐が多すぎて、どの条件で発生する会話なのか確かめられなかった。)

”「正しい選択なんてない。選んだ道が正しいものになるよう、努力するだけだ」”

それは勇気が湧いてくる言葉だった。
注釈すると、このセリフは主人公の強い意志を感じさせるものではなかった。むしろ、仲間やプレイヤーと同じくいまだ迷いの中にある主人公が、自分に言い聞かせるように絞り出した言葉だった。

私たちはつねに何かを選んで生きている。日常の瑣末な問題から、人生を変えるようなものまで。選択こそが自由の本質なのだと、凪良ゆう先生の『汝、星のごとく』から、私は学んだ。

しかし、選んだ道が正しいものかはわからない。何を選んで何を捨てても、望んだ未来に辿り着けるとは限らない。むしろ、うまくいかないことのほうが、きっと多いのではないかと思う。
そんなふうに「この選択は正しかったのか」と疑ってしまったとき、ただ後悔しても仕方ないのだと、この作品は教えてくれた。
道が正しかったかどうかを考えるより、道が正しくなるにはどうすればいいかを考えるべきだと、私も信じたいと思った。

冒頭で述べたとおり、私は私の生活環境を大きく変える決断をした。
積極的な動機も、消極的な動機もある、迷いの多い決断だったが、いくつかの選択肢の中からひとつを選ぶ勇気を与えてくれたのは、この作品だったと思う。
ストーリー、キャラクター、バトルシステムと、非常によく練られたおすすめのゲームなので、興味のある方はぜひプレイしてみてほしい。


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