見出し画像

冬至の空は清い

暮れになってくると、空がものすごく澄んで清冽さを感じる。このことに気が付いたのは営業職で終日出歩いていたころだ。時代も10年も前となれば前時代的と言われても仕方のない頃であり、朝9時半にタイムカードを押すと社内に残っていても文句を言われないのはせいぜいがところ10時までであり、そそくさと社を出ると17時頃までは帰社できない。その時間帯に社内にいることは「仕事のできないやつ」とみなされたからだ。つまり、アポイントがすっからかん、商談の数が少なすぎる証だ。

もちろん、365日朝から夕方までアポイントが埋まっているはずもなく、暇なときは買い物したりお茶したりと、すごく自由に過ごしていた。一度などネットカフェで上司と遭遇したこともあったな…。12月も中旬を過ぎると、夜の忘年会は予定がぎっしりであっても、日中のアポイントはほとんどスカスカで、その日も銀座の老舗カフェにこもって企画案を練り、そろそろ帰社するか、と外に出ると雲ひとつない美しい夕空がきらびやかに明りをともし始めた銀座の街のうえにあった。このときは言葉を無くし、乾燥してきりりと冷えた風を頬に感じながらいつまででも見ていたい気持ちになっていた。

そうか、年末の空はこんなにも美しいのか。

それを知ったのはそのときが初めてで、爾来、暮れが近くなると空を見て思い出すようになった。「あ、そろそろ冬至か」などと、それはまるでカレンダーのように。

昨日の夕空もたいそう美しかった。

画像1

本当はビルの周りをぐるっと囲む運河の青が、橙の空に映えてそれは見事だったのだけど角度が悪くて映らなかった。

画像2

いろいろと油断のならない時を世界中で過ごしているが、そんな1年であっても、まもなく終わる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?