見出し画像

水にもぐりたい

時節柄、遠出ができなくて何がつらいかというと海が見れないことだ。海の近くで育ったので、定期的に海を見れないとものすごく息苦しくなってしまうことにずいぶん経ってから気がついた。しかも、都会に近い穏やかに凪いだ海では物足りなくて、外房の波が逆巻く荒々しい海岸を欲している。あるいは今の時期ならば房州の花畑を見ながら、内房の海でもよいかもしれぬ。

昨年もがまんした。今年も見に行けない。都会の片隅で息も絶え絶えになっている瀕死の鳥のように自分を感じる。それでわたしはある解決法を講じたのだ。

水泳をはじめよう。

水に潜ることができたら、この渇きはなだめられるのかもしれないと思った。実はこの葛藤は何年も繰り返してきたもので、その度現実化することもなく、なんとなく海に出向いては解消してきたのだが、最近のように手軽にこの飢えを解消できないことでいよいよ行動を迫られたというわけだ。

自分は幼少期から毎週末を海で過ごしてきたが、なんと泳げない。厳密にいうと平泳ぎはできるのと、クロールは息継ぎが苦手なので、息が続くところまでは泳ぐことはできるのでカナヅチではないのだが、泳ぐことは苦手だ。だって考えてもみてほしい。海にいってガチで泳ぐなんてある?せいぜいがところ、ちゃぷちゃぷしているものではないか?といってもかなり深いところまで進んで漂っていたけれど、本気で海で泳ぐなんてさほどしなくて十分だったのだ(言い訳)。

要するに何が言いたいかというと、「苦手で気が進まない水泳を習う」ということは、自分にとってものすごくポジティブなものでは気分的にないのだ。けれど、「水に入りたい」という思いがもうこらえきれないのと、今ならこの苦手に向き合ってもいいかもしれない、と、そんなふうに心の風向きが変わったのだ。でもさすが厄介なほど面倒な人間を自負する自分だな、と思うのだが、家から数分にあるジムでも水泳ができるのに、スイミングスクールをかなり限定して選んだので、4月になるまで開始できない。期が変わるのが4月からだそうだ。その申し込みをする前に、逃げられないように水泳用具一式はもう買ってきてある。4月なんて今とまたいろいろ変わっているだろうに、もうこれで逃げることはできない。

ただ水に入りたいのなら、アクアビクス的なものでもよかったのだけど、すいすいと泳げるようになりたいな、と思った。そして泳ぎを体得したら、ホテルのプールなんかでも泳げるわけだから、いつでもどこでも水に入れることになるじゃないか。

バスケットボールを10年やってきて、社会人バスケに数年前参加したのだが、団体競技なので母数の大きい都合が優先されるため、自分の働き方や住まいの距離などが合わず、結局1年ほどしかできなかった。でも、水泳ならいつでも自分の好きなタイミングでできるだろう。

結構ちゃんとした水泳用品店で買ったのだが、なんと今、水泳を始める人が多いのだそうだ。みんなそれぞれ理由があるのだろうが、期せずして流行りにのってしまった。でも今、わくわくしながら4月を楽しみにしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?