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「先生…!」

 以前も書いたことがあるが、元バスケッターは日々に行き詰ったりストレスが溜まると「先生バスケがしたいです」状態になる。それはもう、プレイしなくなって何年が経とうと、だ。仕事相手などでふとしたときに相手も元バスケッターだと知る機会が多々あり、結構まわりにバスケを欲している人が多いのだ。そのたびに「ふだんの仕事を進めるなかであんまり共感し合えない組み合わせであろうけれど、バスケの話題になると何もかも飛び越えるな」と感じることもよくあって、そのときはいろんなものを不問にする爽快さがある。

 先日などは面白かった。仲の良い仕事相手が以前引っ越した際に「家の目の前にバスケットゴールがある公園があるのですごく楽しみなんです!」と、事あるごとに言っていたが、実際使っているのかと聞くと、「公園のバスケゴールって、子どもたちが使ってるんですよね…。そしてそれは、永遠に空くことはなく…。逆に大人が出張っていくのも憚られるので結局やってないんです」と悲し気であった。そうなのだ、公共施設のバスケゴールはやっぱり子どもたちに譲ってあげたい。

◇◇◇
 
 新しく通う美容院で、シャンプーをしてくれる年のころ20代になりたての男性スタッフ、肌などつるつるで自分から見ると20代なりたてってこんなにまだ子どもの部類だったろうか?と驚く。自分が当事者だった頃、20代になった男女は皆大人っぽかったと思っていたが、全体感で見るとそんなことはないのだな、と痛感する。老舗の有名サロンなので教育もしっかりしており、既におもてなしの態度を身に着けている様子は微笑ましくも頼もしい。
その彼とこれまたふとしたきっかけでバスケの話になった。彼も元バスケ部であったという。

 それまで、年配のお客様へ丁寧に接していた彼のトークが「人対人」に変わるのがわかった。かなり細かく詳しい話をシャンプー中にし合って、非常に楽しかった。それに、「すごいな…バスケが世代を超えさせたじゃん」と思うと感慨深い。もちろんスラムダンクの映画の話にも(盛り上がる鉄則)及び、プレイヤー視点でのこだわりの描写などを熱く話し合った。それはたとえば、
 「シュートはボード(あの後ろの板)に当たらないで “シュッ!” と入れたいんですよ」
 「そうそう!当たって入ってもラッキーゴールみたいに思えちゃう」
 「シュートって片手打ちでした?(女性はほぼ両手打ち)」
 「…いや、私カッコから入る人間だったからすごい練習して男子みたいに片手打ちしてたの」(カッケー!の賞賛を得た)
 「センターだったけどなぜか3ポイントが打つだけ入る人間だったからシューターでもあった」と言うと、
 「三井じゃないすか!それセンターじゃないです」などなど。笑

◇◇◇
 おそらくこんなのは、バスケに限定した話ではないことと思う。たまたま自分はいろいろの嗜好があまりマスでなかったりするので、バスケだけが日の目を見れる交友のポイントなのだと思われる。妹などはドラマやアイドルにまだ夢中になれる人なので、そういった王道の嗜好であれば、わりとたやすく他者とつながれるのかもしれない。そう考えると改めて、自分にとってバスケは貴重だ。

 あと、仕事上で苦手だな、とお互いに感じた相手がバスケッターだったことがわかると、ちょっと見る目が変わる。おそらく相手からもそれを感じる。それはいうなれば、「え、バスケやってたの…?なら少し、もしかしたら自分のまだ知らないイイトコロがこの人にもあるに違いない」と下駄を履かせてくれる感じか。昔「愛犬家に悪い人間はいない」と言われていた話に近い。

 こんなことを長々と書くくらいなので、「先生バスケがしたいです」病がまたしても極まっている。

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