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眼鏡探訪記:前編

はじめに


 イヤリングの片方をまた無くした。それなのでジュエリーボックスの中に片割れのみが、再び使われることのないままに眠っていて可哀想。
 そうかと思えば家のなかで眼鏡が消えた。実はこれで3つめと白状したら一気に皆さん引くであろう。イヤリングの場合は、終日つけていると耳が痛くなってきて帰宅途中に外してしまうことが多いのだが、その後どこにやったか忘れてしまうことが多く、そのうえすっごく最悪だけど「どこにやったか忘れたけど別にいいや」と、捜索する意欲を持つことがないのだ。これは本当に最悪。だって、愛着がないのではないのだ。結構どれも気に入っている。

 眼鏡においては言い訳がある。仕事柄(文章書いたりとか、フリーランスで固定の机だったりロッカーなどの置き場所が契約先にない)、家中に資料がある。あんまり気乗りしない資料の読み込みなんかは寝室にもってきたりする。それで時折、着手していた仕事が終わると一斉にそれらを始末するのだが、おそらく眼鏡は資料を読み込んでいて寝落ちするときに合間に挟まれたまま、始末されていっているんではないかと思う。
 
 それにしたって眼鏡がないと困る。外出時はコンタクト派だけど、休日や夜にまで使用したくないじゃないか。そんなわけで眼鏡をつくろうと思った。実はこれまで、自分でつくった眼鏡は基本的に格安チェーン店のもののみ。自宅でしか使わないレベルなので充分事足りた。概ね5千円~1万円くらい。今回もそれでもよかったのだが、イヤリングと眼鏡の紛失でちょっと気づいたことがあった。それはいずれもたいして高くないという点が、無くしやすさにつながっているのではないか。(ヒドイ。嫌な奴)
 ならば、もういい年でもあるし、「良い眼鏡」つくってみちゃう?って気になった。

運命的出逢い、「999.9」への扉が開く

  どこでつくるかは決めていなかったが、先日商店街にある眼鏡店に入るとなかなかよかったし、どこでもいいだろうと踏んでいた。昨日、髙島屋に行って「あ、眼鏡つくらなきゃ…」と思った瞬間に「999.9(フォーナインズ)」の店舗が目に飛び込んできた。運命だと思い込み則、吸い込まれるように店内へ。これがもう、私のなかの眼鏡についての考えを刷新するほどの体験となった。今書いていてもそのときの興奮を思い出すほどだ。何かって?
 
 私のもっとも愛する、「その道のプロ」に遭遇できたのだ。

 かつて雑誌社にいたとき、こちらのブランドはお客様だったが自分の担当ではなく、定期的に出稿してくれてるな~くらいの認識だった。しかし、ウチの雑誌に出稿してくださるということは、ある程度高価なんだろうな、ということも知っていた。昨日私の担当をしてくださった方は男性で、私と年齢がさほど変わらないか、少し下かくらいにお見受けした。広い店内で男性用・女性用はどうなっているのか聞こうとしたとき、この男性がそばにいたため、自然とそのまま担当してくださった。ラッキーだった。彼がそばにいてくれた偶然のおかげで、その後私はめくるめくプロの仕事を堪能するのだから。

 品物について質問をし、試着するとき心は決まった。「よし、値段が相当張るであろうが今回はフォーナインズでつくろう」と。10万くらいはするだろうなと内心大いに冷や汗をかいていたがこれはもう投資だ、と言い聞かせる。私が冷やかしでなく覚悟を決めたのがわかったのかどうか、店員さんも心なしか先ほどより伴走感が感じられた。私は広い店内で狙いを定めると2点を試着に選んだ。この間、5分ほどだ。そうして鏡の前で2点とも試すといずれも馴染んだ。そのうち1点は、私がこれまで5点ほどつくってきた眼鏡とほとんどスタイルが同じなので、要するに似合うフレームの典型だった。それなので、今回実はもう片方選んだタイプに挑戦すべきかという二択ではあった。
 すべて終わって店を出るとき、店員さんが「ご自分にお似合いになるものをとてもよくわかっていらっしゃるので驚きました。迷われず2点をお選びになり、私はその背中を押すだけでしたから」と。そう、どちらが良いかご意見をうかがってみると、実は私がいつも買うタイプの方を彼は薦めてくれた。たぶん、それがやっぱり似合ってるんでしょうね。 
 
 すごく本題に入るまでかけてしまったので、いったん編を分けることにしします。(つづく)眼鏡探訪記後編
 

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