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そこは、あなたのふるさと。

先日から投稿してきた人形劇について、
新たに第6シリーズを以下、記載したいと思います。


本作は、

オープニング
   ↓
メインキャラ4人のコーナー
   ↓
エンディング

という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。



今回は、メインキャラ4人のコーナーの2つ目、
「もんちゃんの『夢見なハイキック!』」をお送りします。





~もんちゃんの「夢見なハイキック!」~





足が小鹿のようにブルブルと震えるのを感じながら、


係員の「3、2、1、…」のカウントを聞き、


意を決して千葉の大空へと羽ばたいたもんじゃ姫。


足に何の感触も無くなると同時に、目の前の景色が全て消え去った。





「お嬢さん、大丈夫がい」





目を覚ますと、そこは大きな鳥居の見える商店街だった。


「えっ、ここは…?」と、訳も分からず聞くもんじゃ姫に対し、


「どこって、ここは茨城だっぺ」と答える老婆。


状況が呑み込めず、商店街の道の上でキョロキョロとしていると、


突然、お腹がギュルルルル…となり、思わず顔を隠すもんじゃ姫。





「うちげでごはん、おわいなんしょ(「家でご飯、食べて下さい」の意)」


そう言う老婆に促されるままに着いていくと、


年季の入った民家の床の間に通された。


「お邪魔しまーす…」と座るもんじゃ姫の前に、


老婆が「ほらよ」と置いたのは、実に色とりどりのお稲荷さんだった。





もん「うわ、凄ーい。きれいなお稲荷さん達」


老婆「お稲荷さんは、ここの名物だ。たぐさん食べでね」


もん「えーっ、良いんですか?


   それじゃお言葉に甘えて…いただきまーす!」


そばや胡桃、様々な味のお稲荷さんに舌鼓を打つもんじゃ姫。





すると床の間に、若い男の子が上がり込んできた。


男子「お姉さん、どごからきだの」


もん「えっと、あの、…千葉の方から来ました」


男子「遠くがら、よぐ来たねぇ。


   この近くにきれいな自然公園があるがら、一緒に行ぐべ」


もん「自然公園…?」





見知らぬ男子から突然、"公園デート"のお誘いを受け、


老婆にお礼を言い、民家を後にするもんじゃ姫。





男子「公園も良いけど、まずは神社でお参りすっぺ」


もん「あっ、確かにここ、大きな鳥居があるもんね」


立派な鳥居をくぐり、お参りを済ませると、


自然公園に向かう静かな道を2人で歩いた。


途中にある、豆腐ソフトクリームのお店でしばし休憩。





男子「この店の豆腐ソフト、うまかっぺ」


もん「甘さ控えめで、とっても爽やかな味だね」





公園に向かって歩き出すと、木々の方から鶯の鳴き声が聞こえる。


もん「生で聞く”ホーホケキョ"、癒されるなぁ~」


男子「茨城は自然豊かで、良い所だっぺ」





自然公園の雄大な緑を堪能し、民家へと戻ってきた2人。


老婆「坊主、デートは上手くいったげえ」


男子「そ、そんなんじゃねえよっ!」


老婆からのイジリに、思わず顔を赤らめる男子。





もん「とっても楽しかったよ、ありがとね。


   おばあちゃんも、お稲荷さんご馳走様でした!」


老婆「またきておくんなさい」


男子「きーつけでくろ(「気を付けてね」の意)」





2人に手を振ると、突然体が宙に浮いたもんじゃ姫。


もん「あ、あれ、えっ、ちょっと、えぇーっっ!?」


知らぬ間に背中に括られていた長いゴムに引っ張られるように、


遥か上空へと、みるみる飛翔していった。





係員「茨城県は、いかがでしたか?」


気が付くとそこは、先程まで足を小鹿のように震わせていた、


バンジージャンプのジャンプ台だった。





もん「さっきまで私…あれ、何で茨城県に?」


訳も分からず、ジャンプ台の上でキョロキョロするもんじゃ姫。


そんな彼女に穏やかな表情で語り掛ける係員。





係員「さっきご覧になったのは、あなたの"ふるさと"です」


もん「えっ…!?でも私、茨城出身じゃないんですけど」


係員「日本全国、あなたのふるさとなんです」


もん「はい…?」


訳の分からない係員の話に、頭が「?」で一杯のもんじゃ姫。





係員「都道府県を1つ、思い浮かべてみて下さい。


   勇気を出して飛び込めば、あなたはそこに降り立つでしょう」


もん「はぁ…?」


係員「目の前にいる人に話しかけても、お家にお邪魔しても大丈夫。


   そこは、あなたのふるさと。皆が優しくしてくれるはずです」


もん「それ、本当ですか」


係員「では、先程の茨城の方はいかがでしたか」





そう言われると、二の句が継げない。


おばあちゃんも男の子も初対面とは思えない程、優しい人達だった。





もん「分かりました。私、また飛びます」


係員「良いですね、それではカウントを始めます。3、2、1、…」


勢いよくジャンプしたもんじゃ姫。





今度はもう、全く怖くなかった。


一切、震えの無い足で強く飛び立った秋晴れの空。


頭の中に広がっていたのは、以前TVで見たことがある沖縄の青い海だ。





きれいな砂浜を歩いて、美味しいサーターアンダギーを食べた後、


地元住民のお宅で「ゆんたく(おしゃべり)」に参加し、


踊りに合わせて三線(さんしん)を弾くお姉さんに、一度話しかけてみよう。





"「あいや、あいや」と言いながら、三線を小気味良く弾いている時、


 どんな気持ちなんですか?"





そんなことが無性に聞いてみたい、好奇心旺盛なもんじゃ姫であった。





~もんちゃんの「夢見なハイキック!」 終わり~










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