見出し画像

ドローン体験とヤギの群れ

先日から投稿してきた人形劇について、
新たに第2シリーズを以下、記載したいと思います。


本作は、

オープニング
   ↓
メインキャラ4人のコーナー
   ↓
エンディング

という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。


今回は、メインキャラ4人のコーナーの1つ目、
「ハバネロ姉さんの『行ってみろ!やってみろ!』」をお送りします。


<人形劇 登場人物>


・もんじゃ姫

 →本作の主人公。
  頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。


・さばみそ博士

 →頭の上にさばの味噌煮が乗った、
  語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。


・ハバネロ姉さん

 →メインキャラで唯一の突っ込み役。唐辛子の髪飾りを着けていて、
  ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。


・ブルーハワイ兄貴

 →頭の上にブルーハワイのかき氷が乗った、
  きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。





~ハバネロ姉さんの「行ってみろ!やってみろ!」~



朝9時、千葉県のとある駅前。



姉さんの呼びつけで、今日も今日とて集まった3人の仲間達。



兄貴「何だって、こんな朝っぱらから千葉まで来なきゃならんのよ」



眠い目を擦りながら文句を垂れるのは、
頭の上にブルーハワイのかき氷を乗せた、
きれいな女性に目が無い、能天気男のブルーハワイ兄貴。



博士「この何とも言えない潮風がまた、たまりませんなぁ」



駅から見える海の景色を眺めながら、風の匂いを楽しむのは、
頭の上にさばの味噌煮を乗せた、
何かと語りたがりな男の子、さばみそ博士。



もん「ここからディズニーランドは見えるのかなぁ~」



朝方のせいか、相変わらず寝ぼけたことを抜かすのは、
頭の上にもんじゃ焼を乗せた、いつもぼんやりしてばかりの、
空想大好き少女で、本作のヒロイン、もんじゃ姫だ。



3人以外、誰もいない静かな駅。



すると、目の前の広いロータリーに、2台の車が停まった。



姉さん「寝ぼけた顔して、どうした、お前達はー!」



助手席の窓が開き、3人に力強い声をかけているのは、
唐辛子の髪飾りを着けた、メインキャラで唯一の突っ込み役、
ピリッとした性格の姉御肌、ハバネロ姉さんである。



姉さん「とりあえず、女子はこっちで、男子はあっち」

3人「へっ?」



特に行先も告げずに、3人にそれぞれ車に乗るよう促す姉さん。



しょうがないので、言われるがままに姉さんの方の車に乗るもんじゃ姫。



こちらの車は、運転席も、後部座席の2人も、全員女性のようだ。



姉さん「これから、ヤギ牧場に行くから」

もん「ヤギ牧場!?」

姉さん「こちらの運転手が、ヤギ牧場に勤めるマリエさん」

マリエ「初めましてー、今日はよろしくお願いしまーす」

もん「はっ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします」



見た感じ、20代の若い女性のようだ。



姉さん「で、後ろの方達が、今日の参加者のユリさんとナオミさん」

2人「よろしくお願いしまーす」

もん「はい、は、初めまして、お願いします」



ユリさんも20代に見える。ナオミさんは40代位だろうか。



いきなり、初対面の女性3人と車内で顔合わせとなり、
つい面食らってしまい、挨拶で舌が回らなかったもんじゃ姫。



もん「…今日は、ヤギ牧場でヤギと遊ぶの?」

姉さん「ドローン飛ばす」

もん「ドローンっ!?」



突拍子もない予想外の返答に、思わず声が裏返ってしまった。





もう一方の車では、後部座席に乗り込んだ兄貴と博士に、
助手席の男性が「今日、講師を務める古谷です」と挨拶した。



古谷「こちらの運転して下さってる方が、この後行くヤギ牧場の社長です」

社長「ども、よろしゅうお願いしますわ!」

2人「よ、よろしくお願いします…」



一体、ヤギ牧場に行って何を受講するのか、
何をよろしくお願いするのかも分からず、ただ挨拶するばかりの2人。



博士「いやぁ、しかしながらここまで来て、大変お恥ずかしいのですが…、
   我々2人、今日何をするのかという趣旨を、
   全く存じ上げていないものでしてね」

兄貴「あっちの車の姉ちゃんが、独断専行型の専制君主なもんでさ」

古谷「あぁ、そうだったんですかー」

博士「この後は、そのヤギ牧場で、
   ヤギとの触れ合い体験…、といった所ですかな」

古谷「いえ、ドローンを飛ばしに行きます」

2人「ドローンっっ!!??」



予想外の企画内容に、つい驚きがユニゾンしてしまった2人。



古谷「…びっくりしました?」

兄貴「まさか、空撮をやりに行くとは」

博士「ドローンだけに、

   …想像の、斜め上空を飛んで行きましたな」



さほど上手くもない博士のコメントに、社長だけが笑っていた。





一方、女子5人を乗せた車内では…



女性というのは不思議なもので、
初対面にも関わらず、もうすっかり打ち解けている様子。



もん「ナオミさんは、お仕事何されてるんですか?」

ナオミ「あたしね、こう見えて実は、社労士なのよっ」

ユリ「へぇー、凄ーい。社労士の先生なんですね」



どう見えたら、社労士であることが意外なのかが謎だが、
ナオミは、かの浅野温子を彷彿とさせるソバージュが印象的な女性。



こちらが何か良いことをすれば、
きっと左手でソバージュを掻き上げた後、目を細めながら、
消え入るような囁き声で「…アリガトッ」と言うに違いない、
そんな、心底どうでも良いことを思う、もんじゃ姫であった。



ナオミ「どいつもこいつも、本当、労基法守んないからさぁ~。

    もう色々嫌んなっちゃって、
    …気晴らしにドローン飛ばしちゃおっかなって思ったの!」

ユリ「社労士の先生って、大変なんですねぇー」

もん「ユリさんは、何されてるんですか?」

ユリ「私は一応、経理なんですけど。


   中小企業診断士の試験を10月に受けてて…」

ナオミ「あ、そうなの!?」

マリエ「凄いですねー、今日は先生方が2人もいらっしゃるなんて」



一介のOLである自分が、先生などと呼ばれるのが、
どうもこそばゆくて、つい首を横に振るユリ。



ユリ「いえ、自分はまだ、2次試験の結果待ちなんで…、
   そんな"先生"とかではないです」

姉さん「でも、そんな国家試験受けるだけでも、十分凄いよな」

もん「何か、2人ともカッコ良いなぁ~」

ナオミ「ユリちゃんなら、きっと大丈夫よっ」



恥ずかしそうに笑うユリの表情を、つい隣で眺めていたもんじゃ姫。










そうこうしているうちに、車窓の景色は一面の緑に覆われ、
山々と田畑に囲まれた所に、目的地のヤギ牧場が姿を現した。



予め現地に用意されていたブルーシートに、
古谷に促され、各自荷物を置く。



運転手を務めた社長とマリエは、到着して早々にヤギの世話へと向かう。



どうやら彼らは、ドローンを飛ばす"場所を提供"してくれた人達のようだ。



広い草原の上で、小さい輪になって並ぶ一同。



古谷「本日は、皆さん遠方からお越し頂き、

   『一日で自由に飛ばせる!ドローンデビュー講座』への
   ご参加、誠にありがとうございます」



今回の趣旨を、古谷の挨拶で改めて再確認した3人。



古谷「ドローンを飛ばす前に、最低限の基礎知識について
   簡単に説明したいと思います」



ホチキス留めされた数ページの紙資料が、各自に配布された。   



ドローンに関係してくる法律として、
航空法、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、
民法、電波法…などがあり、
航空法によれば、ドローンの「飛行禁止空域」は、

①空港周辺、②150m以上の上空、③人家の集中地域、の3つとされている。



その為、上記①と③に該当する地域を赤く塗った日本地図を見てみると、
何と、東京都は概ね全域が真っ赤っ赤となり、
都内でのドローン飛行はほぼ不可。



そうした理由により、今回彼らは、
この朝早くに千葉の山奥まで連れて来られたのである。



古谷「そしたら、次はいよいよ、ドローンを操作してみましょう」



既に、目の前には2つのドローンが、丸型のボードの上に鎮座しており、
参加者達はそれとなく2グループに分かれると、
それぞれ1名ずつにコントローラーが渡される。



古谷「まず、皆さんに操作して頂くのは、1万円のドローンです。


   早速、今お2人にお渡しした、
   この"プロポ"というコントローラーの操作を説明します」



プロポの一つをナオミ、もう一つをユリが手に持ち、
それぞれ古谷の指示を仰ぐ。



古谷「では、ドローンを起動しましょう。


   プロポの起動ボタンを2回押します」



プロポのランプが点灯し、起動音がしただけで、
なぜか「おぉっ」と声を上げる2人。



古谷「プロポを起動させたら、
   次はドローン本体の起動ボタンを2回押します」



ドローン本体に歩み寄り、起動させると、
プロポ画面に"Connecting..."と表示され、数秒後に、
プロポとドローン本体が自動的にリンクされ、これで準備完了。



古谷「それでは、お待たせしました。ドローンを飛ばしてみましょう」

ナオミ「きゃーっ、楽しみー」

古谷「プロポの真ん中に、制御スティックが2つありますが、
   右側のスティックを、ゆっくり上に倒してみましょう」



恐る恐る右のスティックを倒すと、
ブーンと音を立ててドローンが浮き上がる。



ユリ「おぉー、浮きました」

ナオミ「科学の進歩って、凄いわねぇ~」



面白くなって、スティックを上下に倒して遊びだすナオミ。



その後、基本的な離着陸から、
前後・左右の移動、旋回などの操作を学んだ一同。



思いのままに宙を舞うドローンに、
すっかり夢中となっているユリの背後で、
集中力のない兄貴は「あの女の子、可愛くね?」と、博士に耳打ち。



博士「何と言うか、どことなく知的な雰囲気を感じさせる女性ですね」

兄貴「でも、一人で来てるってことは、多分友達作りに来てるよな」

博士「まぁ、新たな趣味を、開拓されたいのでしょうか」



おそらく、純粋にドローンを楽しみに来ているであろう
ユリに近づいていく兄貴。



兄貴「お姉ちゃん、ドローン初めて?」

ユリ「あ、はい」

兄貴「でも、初めてにしては、なかなか上手いよね」

ユリ「ありがとうございます」

兄貴「今日はどっから来たの?」

ユリ「千葉です」

兄貴「へー、じゃここから近いんだ?」

ユリ「近くはないですね」

兄貴「あ、そう。



   …千葉って、大きいもんねぇ」

ユリ「そうですね」



ほぼほぼ"取れ高ゼロ"の会話を終え、戻ってきた兄貴。



兄貴「あの子ね、何かちょっと、会話がアレな子かもな」

博士「そうでしたか」

兄貴「俺と話してる時、全く俺の方見なかったぜ」

博士「まぁ、ずっとドローンだけ見て、操作されてますからねぇ」




兄貴「俺も、ドローンになればいいのかな」



意味不明なことを言い出す兄貴をよそに、一通りの操作体験を終えた2人。



順番が変わり、今度は、もんじゃ姫と博士がプロポを握った。



初めての体験気味に、やや興奮気味のもんじゃ姫。



もん「ドローン動かすの初めてだけど、…ちゃんと動いてくれるかな」

姉さん「お前に心配されたくねぇよ」



スティックを上に倒すと、
浮き上がったドローンを見て「凄ーいっ」とさらに興奮。



2つのスティックを色々動かして、もんじゃ姫の動かす機体が、
謎の旋回をしながら、縦横無尽に飛び回っている。



2人が動かしている間、
とりあえずその様子をただ眺めている他の参加者達。





すると、牧場の遠くの方から、社長とマリエがヤギを複数連れて来た。



ユリ「あっ、かーわいーいー!!」



さっきまで全く聞かれなかった、黄色い声を上げるユリに続き、
ナオミも甲高い歓声を上げながら、ヤギ達に近付いていく。



ドローン2機の様子を横目で見つつ、
ヤギと戯れる参加者達の様子を写真に撮る古谷。



古谷「ここでドローン体験やると、
   こっちがメインになっちゃうんですよねぇ」

ナオミ「ヤギさん達、めっちゃ可愛い~。あたしも写真撮ろうっと」

もん「私もー!」



ものの数分で、ドローンを着陸させ、ヤギに近づいてきたもんじゃ姫。



ユリ「ドローン飛ばして、ヤギと遊べるとか、本当癒されますね」

古谷「まぁでも、そう言って頂けると嬉しいです」



参加者達の楽しんでいる姿を見て、牧場主の社長も思わず笑顔に。



社長「いやぁ、古谷さんにドローン体験で、ウチを使ってもろてね、

   SNSとかでも宣伝してくれたお蔭で、
   お客さんも増えて、ほんま助かってますわ!」

古谷「いえいえ、本当こんな飛ばしやすい所はなかなか無くて、
   こちらこそ助かってます」

社長「ウチはほんまね、
   自分とマリエちゃんの2人でやってるもんですから。

   人が足りなくてアレなんやけど、皆さんもせっかくの機会やからね。

   何かあれば、連絡待っとります!よろしゅう頼んます!」



そう言って、参加者一人一人に名刺を配って回る社長。



もん「マリエさんは、…やっぱり牧場だから、朝は早いんですか?」


マリエ「いえ、ウチは意外とそうでもなくて。

    普通に8時-5時とかなんですよ」

もん「へぇー。

   何か、OLさんみたいですね」

姉さん「どんな感想だよ」

マリエ「でも、本当は私もOLさん、なりたかったんですけどねぇー。



    ちょっと色々あって、
    結果的に社長に拾ってもらったって感じなんです」



つとめて明るい表情で話すマリエだったが、
ここに至るまで、それなりに苦労があったようだ。





その後、ヤギの餌やり体験がオプションで行われ、
最初は表情が硬かったユリも含め、参加者達も大いに楽しんだ。



ユリ「ん~、美味しいねぇ。良かったねぇ~」



切ったニンジンをモシャモシャ食べるヤギの頭を、
愛おしそうに撫でているユリ。



ナオミ「これは、日頃の分からんちんな経営者どものことを、
    忘れさせてくれる癒しの時間ね」

ユリ「本当ですね。

   もう、嫌なことあったら、またここに来てヤギさん達と戯れます」

ナオミ「その時は、あたしも呼んでねっ」



メェ~メェ~と鳴き声が聞こえる方に向くと、
また別のお腹を空かせたヤギ達が待っており、
次々に、ニンジンをあげては頭を撫でてあげるユリ。



ナオミ「あら、もうニンジン無くなりそうじゃない」

ユリ「あっという間ですね。マリエさんに言って、おかわり貰おうかな」

ナオミ「おかわりって、あんた」



都会の喧騒を忘れて、自然との触れ合いを満喫している2人。



背後に聞こえる「メェ~」という鳴き声に、反応したユリ。



ユリ「はぁ~い、今あげますよ~」



振り向くと、ヤギの角を着けた兄貴がいて、ひっくり返るユリ。



兄貴「僕も、ニンジン欲しいんだメェ~」

ユリ「きゃぁぁーーーっ!!」

姉さん「お前は、干し草でも食ってろぉーっっ!!!!」



思いっきり姉さんに投げ飛ばされ、
近くに積まれた干し草の山に、頭から突っ込んだ兄貴。










荷物を車に取りに行っていた古谷とマリエが、
大きな箱を持って戻ってきた。



古谷「さぁ、先程は1万円のドローンで腕慣らしをしてもらいましたが、

   この後はですね…。



   10万円と20万円のドローンを使って、
   上空100mからの映像を撮ってみましょう!!」

一同「おぉぉーーーっっ」





机に並べた2つの箱を、古谷とマリエがそれぞれ開ける。



上位機種のドローン2機が箱から姿を現すと、
参加者達は感嘆の声を上げた。






~ハバネロ姉さんの「行ってみろ!やってみろ!」 終わり~







その100円玉が、誰かの生きがいになります!