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「離世召人形」というカードに一目惚れをした

この記事を開いてくれたそこのあなたは、「離世召人形」というカードをご存じだろうか?

遊戯王OCGのカードで、2023年7月に発売された「AGE OF OVERLORD」というレギュラーパックに収録されたノーマルカードである。

今回は、このどこにでもある1枚のノーマルカードについて語っていくわけですが、まずはどんなカードかを見ていただきたい。

「離世召人形」のカードテキストは以下のとおり。

レベル3 /ATK 0 / DEF 2100
魔法使い族 / チューナー / 効果
①:このカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。
  このカードを特殊召喚する。
②:自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。
  自分のデッキの枚数が相手よりも多い場合、このカードの攻撃力は
  ターン終了時まで、その差の数×300アップする。
③:このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動する。
  このカードをデッキの一番上に戻す。

離世召人形のカードテキストより

このカードのテキストだけ見ると面白カードの範疇かとは思います。

このまま詳しくカード効果について見ていきましょう。

ゲームにおける「離世召人形」

ここからは遊戯王のゲームとしてのこのカードの効果を見ていきましょう。

カードゲームに興味のない人には必要ない……かと思われますが、後ほど言及することに必要な部分もあるので、ここも読んでいただけると記事全体をより楽しんでいただけるかと思います。

①の効果について

①の効果は、ドローした「時」に発動「できる」という、任意発動の特殊召喚効果。

効果を発動したうえでの特殊召喚なので、チェーンブロックが組まれてしまうのがやや弱い点。

とはいえ、ドローに伴って展開にプラスワンできるのはそれなりに強いと思います。

また、カード自体のステータスは比較的優秀なのも、追加で1枚場に並べることができるのは嬉しい点です。

レベル3 チューナーというステータスを持つモンスターを、ドロー条件だけで並べられる強みは、このゲームをプレイしたことがある人にはわかっていただけるのかなぁと思います。

また、最初に敢えて強調しましたが、「時」「できる」の任意効果になるため、ドローの際のチェーンブロックの組み方次第では、タイミングを逃して発動できないという弱点があります。

②の効果について

自分・相手のバトルフェイズに発動できる、自分を強化する効果。

自分と相手のデッキ枚数を参照する効果で、自分のデッキの方が相手よりも多ければ、その枚数だけ強くなる。

効果量も1枚差につき300という、なかなかな数字になっています。

このゲームのルール上、40枚以上60枚以下でデッキを組むことになっているので、開始時点で最大20枚差の6000打点の上昇が見込める。

ただ、デッキの枚数が増えれば増えるほど引きたいカードが手元にやってくる確率は当然減っていくため、特殊な構築でない限りは40枚に近づけるのが良いとされています。

初期デッキ枚数に依存するわけではないので、相手がデッキをごっそりと墓地に落とすタイプのデッキであれば上昇数も大きくなっていきますが、相手に依存するので安定した火力を発揮できるかというと難しいですね。

そこが、このカードが面白カードどまりになってしまっている点だと思います。

③の効果について

最後の効果は、このカードが墓地へ送られたターンの終わりに発動する強制効果

墓地からデッキの一番上に戻るので、良い方向で考えれば1枚のカードを使いまわすことができる効果になっている。

重要なのはトリガー自体は破壊などではなく、あくまでも「墓地に送られた」場合。

戦闘などでの破壊だけではなく、自分が行う展開中にこのカードが墓地へ送られた場合もこの効果の発動条件を満たすわけですね。

この効果、悪い見方をするとデッキトップが固定化され続ける可能性があるので、このカードを使用する際は注意したい。

①の効果でドロー時に手数を増やせるのは間違いないが、そうすると自然とデッキトップが固定化されてしまうという事態に陥るので、扱いがなかなか難しいカードかとは思います。

とはいえ、現代だとサーチなどで簡単にシャッフルを挟めるので、固定化され続ける状況も稀だと思いますが。

かなり面白いカードではあるものの、こうした面倒な制約があるなど、環境において使えるカードかというと難しいでしょう。

レベル3チューナーかつ魔法使い族でもあるので、使い道を考えようと思えばなんとかなりそうな気はしますが……どうなんでしょう。

立ち位置としては、「ちょっと強い令和のコカローチ・ナイト」という感じになってしまうので扱いも難しそうです。

カード効果に見る「離世召人形」の魅力

ここまではゲームとしてのこのカードのステータスや効果を見てきましたが、ここからはわたしがこのカードに惹かれた理由について語っていきましょう。

正直、このカードに一目惚れした原因はゲーム的な要素ではないのです。

このカードの元ネタを考える

「離世召人形」には、明確な元ネタが存在しています。

怖い話やホラーが好きな人であれば想像できるかもしれませんが、昔から日本に伝わる、とある怪談が元ネタになっています。

それは、「捨てても手元に帰って来る人形」という怪談。

以前、わたしはこの記事で「メリーさん電話」について語ったのですが、この怪談の元ネタも同じ怪談を含んでいると考えられます。

この怪談が元ネタであるのは容易に想像できるのですが、実は見た目だけではなく、そのカード効果にも元ネタになる怪談要素が含まれています。

名前と①の効果に秘められたネタ

このカードの名前は「離世召人形(はなよめにんぎょう)」

日本人形の中では、比較的メジャーだといえる「花嫁人形」のルビが振られているわけです。

そして、「ハナヨメ」に当てられた漢字は「離世=幽世」から夫になるべき人間を「召す=招く」となります。

この世のものではない何かが宿った人形が、持ち主を幽世に招く様子が読み取れますね。

さて、このカードは、①の効果で手札にやってきた時にフィールドに特殊召喚できるわけですが……。

これは夫となる人間=プレイヤーの隣にいつまでも寄り添うと見ることもできます。

古い考えで、今の時代においては男女差別とも捉えられかねないのですが、昔の日本の女性は「夫に付き従うものである」という男性主軸の考えが当たり前でした。

そうした「献身的な女性像」というものを現したものだと見えます。

このカードの場合、「付き従う」ではなくて「憑き従う」になりそうですけどね。

②の効果が示す怪異の特性

続けて②の効果について見ていきましょう。

②の効果は、デッキの差の数だけ「離世召人形」の攻撃力を上げる効果。

先ほどは、初期デッキの差で攻撃力を上げる方法を提示しましたし、おそらくこれが一番簡単な回答かと思います。

しかし、この効果の本質はそこではないと考えます。

「捨てても戻って来る人形」の怪異には、その前提に「持ち主に捨てられる」というものがあります。

ゲーム的にサーチやドローなど、デッキの枚数に差ができる行程はいくつかありますが、カードが最後に行きつくのは基本的に「墓地」になります。

40枚構築のデッキどうしで対戦をする際、「デッキの枚数に差ができる=その分墓地に送られる」と言い換えることもできるかと思います。

この視点で見てみると、このカードの②の効果は、呪いの日本人形が持つ「捨てられたモノの恨みの重さ」を体現しているのではないかとわたしは考えています。

捨てられた枚数に比例して、その恨みの重さ=相手に対する攻撃力が上がっていくというわけですね。

「捨てられた」という点で考えると、墓地の枚数差を参照するべきじゃないの?

とツッコミが入りそうですが、正直わたし自身も墓地の枚数差を参照するわけでないことに疑問があります。

とはいえ、この「ハナヨメ人形」の持ち主はなんだかんだ彼女を大事にしているのかもしれないと無理やり納得することにしました。

その方が彼女が幸せだしいいんじゃない? ということで。

他にも、日本人形の怪異として「髪が伸びる人形」というものがあります。

デッキの枚数差の分だけ髪が伸びたことを表している……と捉えることもできるかもしれませんが、個人的には前述したものがこの効果の元ネタになっていたらいいなぁと思っています。

根拠も何もないんですけどね?

③の効果でいつまでもわたしのもとへ戻ってくる

③の効果は、このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズにデッキトップに戻ってくる強制効果。

つまり、彼女は令和のコカローチ・ナイトなのです。

推しカードをどこぞのGと一緒にするなといわれそうですが、誰がどう見てもこの効果はコカローチ・ナイトですから。

とはいえ、この効果も元ネタの怪談に則したものになっていて、何度も触れている「捨てても戻って来る」怪異の再現になっています。

似た効果を持つコカローチ・ナイトの方は、墓地に送られた時にそのままデッキトップに戻っていきますが、離世召人形の場合はエンドフェイズまでその効果が発動されることがないのです。

つまり、たとえ墓地に落とされたとしても、なんらかの手段で墓地から拾い上げることができればこの効果が発動することはないのです。

エンドフェイズまで墓地に置かれて、彼女が「捨てられた」と認識して初めてデッキトップ=次のドローに戻っていき、いつまでもプレイヤーの手元へとやってくるというわけです。

さきほどから何度も「令和のコカローチ・ナイト」というネタを擦っていますが、実際のところはこの細かな効果の差こそが、わたしが「離世召人形」というカードに惚れ込んだ理由なのです。

わたしが好きな人形の怪異のすべてが詰め込まれた素敵なカードというわけなのです。

彼女になら幽世に連れていかれたいですね。

本当に最高のカードです。

遊戯王はテキストに設定を盛り込むのがうますぎる

今現在、遊戯王を楽しく遊んでいるわたしですが、もともとはカードの綺麗さに惚れ込んでコレクション目的だったのです。

タイミングとしては、ストラクチャーデッキ「アルバストライク」が発売された頃になるのですが、プリシクひゃ20thの光りかたが好きでしたね。

しかし、その後遊戯王マスターデュエルがリリースされ、初期からずっと遊び続けていくと、単純にゲームとしての面白さとカードテキストに盛り込まれた設定など、魅力的な部分が多いゲームだと感じています。

特にカードテキストについては目を見張るものがあります。

今回紹介した「離世召人形」もそうですが、元ネタがあるものはその元ネタを意識した効果を持っていたり、ストーリーが展開されているカードの効果は、そのストーリーにおける人間関係を意識したものになっているなど、気付いてみればニヤリとできるものが多く感じます。

ネーミングセンスも独特なものが多いのですが、意外なところに隠された設定なんかが見えてくるので、もし興味がありましたら調べてみてほしいなと思います。

そして、みなさんそれぞれの推しカードを探してみてほしいと思います!

それでは、また次回の記事にて。


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