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「エコ・サステナブル・環境に優しい」 それってグリーンウォッシュかも...見分け方は?

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「どう環境に良いの?」「どのくらいの環境負荷がかかっているの?」良いところも悪いところも、クリアにして私たちに見せてほしい。

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みなさん、最近環境問題についてのニュースや記事を目にしたことはありませんか?エシカルやサステナブルといった言葉と一緒に情報が入ってくることも多いでしょう。

しかし、そんな言葉を使っている製品やサービスのすべてが本当に環境に良いものかどうか、一歩引いて考えたことはあるでしょうか。

なかには、イメージの向上のために謳っているだけのものもあるかもしれません。

そんなふうに、実態を偽って環境に優しくみせているものを、グリーンウォッシュ(またはグリーンウォッシング)といいます。

この記事では、グリーンウォッシュについて一緒に考えていきましょう。

グリーンウォッシュとは?

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グリーンウォッシュとは、企業が自社のブランドイメージをより良く見せるために、製品やサービスなどを「環境に配慮している」と誤解を与えるように見せかけること、を指します。

「上辺、ごまかし」を意味する「whitewash」と「環境に配慮した」という意味「green」を合わせた造語です。

例えば「環境に配慮していることは主張するが、環境負荷のことには言及しない」「環境に良い・サステナブルの充分な根拠を示さない」「何がどのくらい良くなったのかを具体的に示さない」などが挙げられます。

グリーンウォッシュの問題点は、企業と消費者の間の信用が崩れ、本当に「環境に配慮している」製品やサービスまで影響が及ぶ可能性があること。そして、見えない環境破壊が加速してしまうことです。

リサイクル素材の衣服を買ったブランドがグリーンウォッシュをしていたとなれば、他のブランドの衣服を買うときに「このブランドは大丈夫かな?」と買うのをやめてしまうかもしれません。

また、グリーンウォッシュが明らかになるまでに、製品やサービスの背景で環境破壊が進んでしまうことも考えられます。

参照
(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
IDEAS FOR GOOD「グリーンウォッシュとは・意味」
・Deeper「ブランドにとってグリーンウォッシュ以上の危機とは」
Futerra「Understanding and Preventing Greenwash:A Business Guide」(2009)
SustainableJapan「グリーンウォッシング」

過去の事例

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ここでは、実際に「グリーンウォッシュ」と指摘された事例について紹介していきます。

① マクドナルド

マクドナルドは、カリフォルニア州に住むマクドナルド兄弟が創始したファーストフードチェーン。世界100カ国以上に36,000店以上を展開しています。

2018年に、イギリスとアイルランドの店舗での使い捨てプラスチック製ストローを廃止し、紙製ストローで代替すると発表しました。しかし翌年、紙製ストローのリサイクルが不可能であることが分かったため、非難されました。

② HIS

HISは、1980年に創業された日本の旅行会社。テーマパークやホテル事業を手がけていることでも知られています。

宮城県角田市にあるバイオマス発電所「HIS角田バイオマスパーク」は、東南アジアから輸送したパーム油を燃料に発電しています。使用するパーム油は「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の認証を得たマレーシアやインドネシア産のアブラヤシ由来のもの。
しかし、RSPO認証自体に抜け穴があり、パーム油供給のために森林伐採が続く可能性があることなどから、NGO団体らが署名を提出しています。

③ H&M

H&Mは、1947年にスウェーデンで創業されたアパレルファッションブランド。実店舗だけで世界に4000店舗以上を展開しています。
2019年、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルを使用した「コンシャスコレクション」を発表しました。しかし、「“〇〇には〇〇%のリサイクル素材を使用しています”といった明示がされていない」「リサイクルポリエステルを使用したTシャツの製造に、約2万リットルの水を使用している」などの点が問題視され、ノルウェー消費者庁が「情報開示が不十分。グリーンウォッシュである」と指摘しました。

グリーンウォッシュに対する世の中の動き

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2021年、欧州委員会と各国の消費者関連当局が「グリーンウォッシュ」に焦点を当てたWEBサイトのスクリーニングを実施。なんと全体の42%の主張が、誇張や虚偽、欺瞞的であると判断しました。

さらにイギリスでは、競争市場庁が2021年9月、環境主張する企業向けに「Green Claims Code」を発表。あらゆる企業の製品やサービスに適用され、広告、製品ラベル、包装などを対象に、以下の6つの原則を定めました。

  1. 主張は、自社の製品・サービスに沿って誠実かつ正確でなければならない

  2. 消費者が製品から受け取る意味と、製品の信頼性は一致してなければならない

  3. 重要な情報を省略したり隠したりしてはならない

  4. 製品の比較は、公正かつ意味のあるものでなければならない

  5. 主張は、製品・サービスのライフサイクル全体への影響を考慮しなければならない

  6. 主張は、裏付けできる証拠で実証されなければならない

また、日本でも動きが見られます。2021年8月、金融庁は「ESG※1」の名を冠したファンドに対して、「気候変動の視点が反映されているか」「社会問題の解決へ資するものか」などを根拠を示した上で投資家に情報開示するよう促したとのことです。

※1…環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)要素を考慮した投資のこと

参照
・Deeper「ブランドにとってグリーンウォッシュ以上の危機とは」
Quick ESG研究所「​​【RI特約記事】フランスがグリーンウォッシュ規制を導入」
PR TIMES「金融庁が本腰、環境を騙る『グリーンウォッシング』排除へ」
European Commission「Screening of websites for ‘greenwashing': half of green claims lack evidence」
LEXOLOGY「UK CMA publishes Green Claims Code to combat ‘greenwashing’」

グリーンウォッシュを見極めよう!

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環境問題に対する主張が増える昨今、企業の環境活動へも注目が集まっています。

そんななかで、私たちがグリーンウォッシュを助長させないためには、使われやすい言葉や表現に惑わされないことが大切です。
「エシカル」や「サステナブル」といった使われやすい言葉に安易に飛びつかず、主張に一貫性はあるか、第三者機関による認証があるか、環境負荷にも言及しているかなど、さまざまな視点から見極め、目を肥やしていくことが大切なのではないでしょうか。


執筆者:宮川周平/Shuhei Miyagawa
編集者:原野百々恵/Momoe Harano、三井滉大/Kodai Mitsui


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