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6人の嘘つきな大学生 浅倉秋成

スリルが足りない。とにかく私の生活にはスリルがない。起きて仕事して寝る。そんな毎日に嫌気がさして手に取った。浅倉秋成作の6人の嘘つきな大学生。

ミステリー小説は好きだ。ハラハラドキドキする。謎がどんどんわかっていくときのあの引き込まれていく感覚。大好きだ。とくに好きなのはイヤミス系だ。私はこの本にもそんなぞわぞわ感を求めていた。

伏線、裏切り、嘘つき、人間の汚いどろどろとした部分を盗み見して、楽しもう、スリルを味わおう、つまらない日常にスパイスを、、、そんな気持ちで手に取った私はこの本にぶん殴られた。そんな裏の顔を面白がってちゃどうしようもない!人間まだまだ捨てたもんじゃねぇぞ、ばこーん!と。痛かったけど、清々しさがある。なんか気持ちの良い読書体験であった。

以下ネタバレを含む。


主な登場人物は6人。何千人の応募者がいる企業「スピラリンクス」の採用試験最終選考に残る。
最終試験の内容は1ヶ月後までに6人でチームを作りディスカッションをするというもの。うまくいけば6人とも採用の可能性がある…そう言われた6人は絆を深め協力して最高のチームを作り上げた。

と、まあこんな感じで話が始まるのだが、大前提として読者は6人は「嘘つき」であると思いながら読む(タイトルが明言してるし。)だから私は6人が仲良くなる様を冷ややかな眼で眺め、こんなに仲良くなって辛いのはあんたたちよ?!その辺でやめときなさい!信頼しちゃダメ!なんてへんな親心を持ちながら読みすすめるのである。

そして事件が起きる。「6人全員の採用はなしだ。6人のなかで話し合って1人を決めろ、そいつを採用する。」そんな通達がスピラリンクスから6人に届く。6人は戸惑うが…この後が騙し合いの本領発揮。面接の会場には誰がおいたかわからない、6人の「裏の顔」が記された封筒が…いままでの絆は?!どうなる?!

という展開に繋がる。この後は衝撃の連続なので伏線回収が好きな方はぜひ読んで欲しい。

さて、人間には「表の顔」「裏の顔」があるなんていわれるけどそれは自分の意識で使い分けがされているのだろうか。自分では使い分けができてるって思いがちだけど、相手がどう評価するかによって表、裏てきまるのかも。
私のこの6人への評価がページを捲るたび変わっていったように。

伏線も回収も鮮やかだし、冷たい水をごくごく飲むように読める。今一番人に勧めたい本である。


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